■「TPPとISDS条項で多国籍企業は強大なパワーを手に入れる」より部分抜粋
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その国の法律よりも「自由貿易」の方が優先される

TPPは巨大資本の多国籍企業が望んでいたものである。これらの企業は今まで各国の関税や法律に阻まれて進出ができなかった部分に怒濤の如く入り込むことが可能になる。

そして、その分野を制することができると、堂々と強者総取りが可能になって、利益を本国に持ち帰ることができる。

TPP加盟国がこれを阻止するために自由貿易を規制する法律を作れば、多国籍企業はISDS条項(投資家対国家間の紛争解決条項)で国を訴えることが可能になる

その場合はその国の法律よりも「自由貿易」の方が優先されるので、国が負ける可能性が高い

TPPとISDS条項によって、多国籍企業は国家をもしのぐ強大なパワーを持つようになるのである。

すでに国家はグローバル化していく社会の中で、多国籍企業にとっては邪魔な存在と化している。国家は関税を課し、規制を作り、多国籍企業を排除して自国内の企業を競争から保護し、多国籍企業から税金を搾り取ろうとする。

なぜ国家がそのようなことをしているのかというと、自国産業を活性化させ、国民の生活を保護し、外国企業の経済的植民地にされないためである。

小さな国であればあるほど国内企業が脆弱なので、多国籍企業と競争しても勝てないのは最初から分かっている。だから、関税や規制で国内の企業や人を守っていたのである

しかし、TPPとISDS条項によって、こうした国家が持っている多国籍企業排除の手段は使えなくなる。多国籍企業がその国の市場を荒らし回って独占しても、「自由競争の結果」として国は呆然と見ているしかない。

つまり、多国籍企業の方が国家よりも強い状況になる。多国籍企業は、いよいよ国家を超える存在として機能していくことになるのである。

(中略)

超巨大資本を持った多国籍企業が、ローカルな弱小企業を根こそぎ叩きのめしていき、市場を独占し、利益を吸い取り、強者総取りの世界になる

そうなったとしても、国は多国籍企業を追い出したり、活動を制限するような法律を作ることができない。そんなことをしたら、多国籍企業からISDS条項で訴えられる。

そのため、弱肉強食の資本主義が国を荒らし回るのを見ているしかなくなる。

巨大な多国籍企業がさらに巨大になっていき、すべての利益を極限まで吸い上げていく。多国籍企業が独占体制を築いて、その市場や国を経済植民地にしてしまう。

TPPとISDS条項は、そうした世界を生み出す第一歩なのだ。それが、2015年10月6日に合意された。


◆何しろ、日本には1400兆円の個人資産が眠っている

ただ、TPPは自由競争であり、日本にも巨大な多国籍企業が存在するわけでありすべての分野で日本が壊滅するわけではないのも確かだ。

そのため、アメリカの自動車産業はTPPに大反対している。燃費がよく、質がよく、ブランドも確立されている日本のメーカーが無関税で入ってきたらアメリカの自動車産業が駆逐されてしまうかもしれないからだ。

他にも意外な分野で日本の多国籍企業が競争に打ち勝つ場面も出てこないとは限らない。繊維や環境ビジネスでは日本の技術は非常に強い

そのため、アメリカの企業にもTPPとISDS条項は両刃の剣と化す。自分たちが競争に敗れていっても、アメリカ政府はそれを黙って見ているしかなくなる。

日本が経済的植民地にされるばかりとは言えず、場合によっては、むしろ日本企業がTPP圏内を席捲してしまう可能性もゼロではない

ただ、アメリカは競争に負ける分野もあるのは承知で、それでも得るものの方が多いからTPPを進めている。何しろ、日本には1400兆円の個人資産が眠っているのだ。

折しも「日本郵政」「ゆうちょ銀行」「かんぽ保険」の3社が2015年11月にそれぞれが株式上場することが決まっている。

日本人の富はここに貯金という形で眠っているわけで、ここが民営化されることによって個人資産1400兆円が民間の自由競争の中に放り出されることになる。

金融はアメリカの独壇場であり、この1400兆円をアメリカの金融企業が黙って見ているのはあり得ないTPPの大筋合意と郵政3社の民営化のタイミングは、まるで推し測ったかのようでもある

集団的自衛権、マイナンバー、TPPによって、日本の労働環境も、社会保障も、福祉も、すべてが根本的に変わっていくことになる。弱肉強食の資本主義がひたひたと日本を取り囲んでいる