次に日本が見直されることに大いに貢献したと思われる東日本大震災後の日本人の対応です。
 日本国内では、一向に進まない被災地の復興や、解決のめどすら立たない福島第一原発や、除染作業や汚染された土の処理など、政府の対応の不適切さや遅さを指摘する声が多く聞かれます。しかしアメリカでは、被災地の復興を賛美するニュースが盛んに流れているというのです。私達日本人からすれば、「ええーっ、ウッソー!」という感じではないでしょうか。


 ・・・<『なぜ日本経済は世界最強と言われるのか』、p29~p31から抜粋開始>・・・

 アメリカでは日本の東日本大震災に関するニュースが、あふれんばかりに報道されました。そのどれもが日本のすごさ、復興の力などを賛美するもので、日本人であることが誇らしく思えたくらいです。
 被災地の方々、特に若い人々にはぜひアメリカに来てもらいたいと思います。大変不幸な事件でしたが、その後の1年は「日本をあげた」1年だったと思います。どの新聞もだいたい「津波直後」「1年後」と、どのくらい劇的に復興が成し遂げられたか、写真を並べながら特集するといった仕様になっていました。
 私自身もそうなのですが、まだガレキの山が、高台移転が、そして原発事故の解決がなにも進展していないではないかと不満をぶちまけるわけです。しかし、そこはアメリカ人で、そうはいうけどわずか1年でここまで復興させられるなんてすごいじゃないかと、むしろポジティブに指摘してくる。もしかすると、国そのものが吹っ飛んでしまう、それこそ昔でいうとポルトガルみたいに地震で国の経済基盤が吹っ飛んでしまい、国そのものが滅びかけた例も、ハイチのように本当になくなりかけてしまっている(不幸なことですが)国だってある。それほどの被害だったのに日本はこうして復興を始め、なにせその国の力の象徴である通貨がこれだけ強い。「こんな例は世界中にない」というのがだいたいの論調でしょうか(ただし、原発事故の対応に対してだけは手厳しい。特にSPEEDIのデータを最初パニックが起きるといって隠してしまい、かえって汚染のひどい地域に避難させてしまったケースについては「国家的犯罪」とまで書かれている。この問題は今後かなり尾を引くはず)。
 特にアメリカの場合、例の米軍のトモダチ作戦のおかげで実際に日本で活動した軍人がたくさんいて、彼らが草の根的に日本がどれだけすごいか(略奪はない、米軍に対してものすごく感謝された等々)という話をあちこちでしています。どちらかというと世界中どこに行っても嫌われるのが米軍の常ですから、歓迎を受けること自体が珍しいということはあるにしても、彼らのポジティブなフィードバックが日本に対するアメリカ人全体の見方を極めて「ポジティブ」にしていることは間違いありません。
 世界最高の投資家であるウォーレン・バフェットもそのひとりで、「自分は日本に対する投資が間違っていないと確信した」と2011年11月の帰国後に語りました。当時のABCでのインタビューのメモを紹介します。
 「日本の経済はこの震災後も驚くべき生産性をもって非常に繁栄している。人口の減少は抑えがたいし、確かに円高でダメージを受ける輸出企業もあるにはあるだろうが、それを乗り越える企業のほうがはるかに多いだろう。そして日本にはそれを支える素晴らしい製造力とオペレーションを構築する力がある。これは如何なる困難をも乗り越える競争力と呼ぶべきで、日本の団結力のある社会構造そのものが世界に類を見ない誇るべきものだ。この点で今後も日本経済の発展は間違いないだろう」
 ということでした。まあ、これこそがアメリカ経済界の一般的な見方といっていいと思います。

 ・・・<抜粋終了>・・・


 文章にポルトガルの例が挙げてありますが、これは大航海時代に世界の海を征したポルトガルが1755年に東日本大震災クラスの地震に遭い、その後ジリジリと産業の空洞化が進んで国力を失い、現在までの「失われた250年」と言われていることをさします。世界の目から見れば、東日本大震災はそうした歴史と重なっているのかもしれません。

 では、本題に入ります。
 2012年1月14日に、ニューヨークタイムズに掲載された記事を引用させていただきたいと思います。著者はEamonn Fingleton(イーモン・フィングルトンと呼ぶのでしょうか)という人で、1990年に日本経済のバブル崩壊を予言した記事を掲載した人だそうです。


 ・・・<『なぜ日本経済は世界最強と言われるのか』、p243~p254から抜粋開始>・・・

 多少の楽観的な数字はあるものの、高失業率の継続など、この国(アメリカ)の行き詰まり感は明らかだ。
 繰り返し、なにが正しい道筋かという議論はあるものの、アメリカ人たちは日本を経済運営に失敗した悪しき前例だと、しばしば教えられる。例えばCNNのデイヴィッド・グリーンなどが「日本はすでに脱落した国で、状況はどんどん悪くなっている」などと表現している。
 しかし、私にいわせると、それはまさに「伝説」の世界だ。ありとあらゆる尺度で見て日本経済は所謂「失われた10年」といわれる期間でさえ大変よくやってきたし、それは1990年の所謂「バブル崩壊」から見てもそうだ。むしろ最重要な尺度だけ見るなら、日本はアメリカよりも極めてよくやってきたといわざるを得ない。
 日本はリーマンショック以降でさえ、極めて裕福な生活水準を提供することに成功してきた。そしてすべての時代において、この時期(時代)は特筆すべき成功した期間として捉えられるだろう。
 なぜ、この事実とイメージがこれだけ違うのか。そしてアメリカは日本の経験からなにを学べるだろうか。
 もちろん日本の住宅価格があのバブル期の気違いじみた水準に戻ることはないだろうし、それは株価についても同様だろう。
 しかし、日本の経済と日本の人々の本当の強みについては多くの証拠をもって証明できる。それは新聞の漫画などでしばしば笑い物にされる日本のイメージとは全く一致しないものばかりだ。
 まず、日本(日本人)の平均寿命はさらに4.2年も伸び、1989~2009年のあいだに78.8歳から83歳までにもなった。これは平均的日本人が、世界で一番裕福だといわれるアメリカ人より4.8年も長く生きていることを意味する。そしてこの成果はますます西洋化する食生活によるダメージにもかかわらず達成されており、つまりそれは健康管理が極めて有効に行き届いていることを意味する。
 日本はインターネットのインフラストラクチャーに関して長足の進歩を遂げた。実際1990年代半ばには一度大きく遅れて冷笑を浴びたものだが、現在は全く状況を変えてしまった。実際高速インターネット配信大手のアカマイ社の最近の調査によれば、最速のインターネットサービスが提供できる世界の50都市のうち、なんと38都市が日本に存在する。ちなみにアメリカには3都市しかない……。
 1989年末に比べると円はドルに対してなんと87%も上昇、対イギリス・ポンドに至っては97%も上昇している。それは世界の金融市場の至宝とでもいうべきスイス・フランに対しても同様である。
 失業率はわずか4.2%で、これはアメリカの半分に過ぎない。
 世界中の高層ビルに関する調査をしているスカイスクレーパードットコムによると、81戸もの500フィート(ぐっちー註:約152メートル)を超える高層ビルがあの「失われた10年」が始まった年から東京では建設され、これは同期間のニューヨークの64、シカゴの48ましてロスアンジェルスの7よりはるかに多いのだ。
 日本の経常黒字(広義の意味であらゆる貿易収支の黒字を含む)は2010年には1960億ドルにも達し、これは1989年(バブル経済崩壊直前)の3倍以上もある。これに比べてアメリカの経常収支は赤字で、それも同期間でみると99億ドルだったものが日本とは逆に4710億ドルの赤字にも達している。1990年代に多くの識者といわれる人々は、「中国の成長による最大の敗者は日本であり、最大の勝者はアメリカであろう」と予測していたが、全く逆だったことが今日判明したわけだ。
 日本は1989年以降、対中輸出を14倍以上にもふくらまし、日中間の貿易収支は大規模かつほぼ均衡している(ぐっちー註:中国は高額商品の輸入には香港を経由しており、中国プラス香港で見ると日本が4兆円以上の貿易黒字となる)。
 日本を長く研究している研究者(Ivan Hall や Clyde Prestowitzなど)によればそんなこと、つまり日本における「失われた10年」などというのは幻想だということは、たった一度でも日本に足を踏み入れればすぐわかるはずだと指摘する。アメリカ最高のインフラストラクチャーの象徴といわれたJFK空港やダレス空港からやってきて見れば、それがいかに的を外れた議論であるかということが、この数年はるかに近代化された日本の空港に降りた瞬間に理解できるはずだ。
 1980年代から長年日本ウォッチャーを続けている著名なホルスタインはここ数年、初めて日本を訪れたのだが、そのギャップに驚いた1人だ。「アメリカ国内で伝えられることと実際日本で見ることには衝撃的な違いがあった。日本人はアメリカ人よりもはるかにいい服を着て、ポルシェ、アウディ、メルセデスなどアメリカで見たこともないような最新モデルに乗っている。そして実際のインフラストラクチャーは近代的で、しかもなおかつ改良され進歩し続けているのだ」
 にもかかわらず、なぜ日本が「敗者」といわれているのか? GDPの数字を見てみると、アメリカは一見すると何年にも亘り日本をはるかに凌いでいることになる。しかし、額面ベースで見たとしても、実はこの差は見かけよりはるかに小さいのだ。例えば1989年以来の数字を1人当たりのGDPに引き直してみれば、アメリカのそれは平均値で1.4%プラスになり、日本はひどいといわれていても1.0%プラスであり、アメリカに劣後しているといってもその差はわずか0.4%に過ぎない。
 基礎的なデータを見ても、日本は実は失速しているどころか加速している事実も見受けられる。アメリカでは統計学者たちが1980年代からインフレ率を正確に捉えるために所謂へドニックシステム(管理人注①)の導入を試みており、これによると多くの専門家がアメリカの成長率は必要以上に見かけが増加しているという。
 過去数十年の成長率は少なく見ても2パーセンテージポイント程度過大評価されているという。これを勘案すると1人当たりGDPではアメリカは日本を下回るという。
 もし日本(日本人)が本当に傷んでいるとするならば、最も顕著に表れるのは高価なハイテク機械の導入の分野だろう。しかし、日本は反対に世界で最も早いこれら機材・機械の導入者・購入者であり続けており、アメリカのほうがはるかに遅れている。例えば携帯電話では、日本が1990年代の後半の数年でアメリカを飛び越して、その後新しく高機能の携帯電話を購入するにあたっては、アメリカよりずっと早いペースで買い続けている。
 つまりこれらの話を総合すると、結局問題は量的な問題というより質的な問題に行きつくことがわかる。よい例がミシュランガイドのスリースターレストランの数だ。本家のフランスに10しかないのに東京には16もある。本家本元のミシュランが同様に評価していても本国のフランスを上回ってしまっているのだ。こういったことはGDPの数字に決して表れることではない。
 同様に日本人の健康管理システムの優秀さも数字には表れにくい。いったいどうやってこれらの一般的環境下における日本の進歩を伝えられるだろうか。
 幸運にも1つ明らかにこれらの難問を解決する数字がある。電力の生産量であり、これは主に消費者の消費力や産業活動の姿を映し出す。1990年代に日本は広く「ひどい状態だった」と認識されているわけだが、1人当たりの電力生産量の成長率はアメリカのほぼ2倍、かつさらにそれは21世紀になってからも加速した事実を忘れてはならない。
 これらの日本に対する先入観という問題を考える場合に常に考えねばならないのは、所謂西洋人の心理的優越感という点だろう。長く日本について考えている多くの西洋人たちが、日本を過小評価する傾向にある。そしてすべての成功はごく自然に割り引いて考えられてしまう。これは東京在住の所謂西洋人の外交官や専門家が当初から陥っている先入観のようなものだ。

 ・・・(中略)・・・

 さまざまな高度技術をまとめ上げる能力、そしてそれらを作り上げる正確な製作技術によって支えられるわけだが、これらは直接消費者には見えない部分であって、しかしこれらなしでは明らかに現代社会そのものが存在できないものでもある。そしてこの種の製造業、高度に資本集約的かつ高度に技術集約的である部分については、実は1950~1960年代はアメリカによって独占されていた部分であり、かつアメリカが世界経済のリーダーであるための必要不可欠な力の源泉だったのだ。
 日本の現在の圧倒的優位な立場を語るうえでは、その主要な競合相手であるドイツ、韓国、台湾そしてもちろん中国が、日本抜きでは存在できないことを見ればより明らかだろう。世界はこの20年間においては、東アジアにおける工業の革命的急成長のおかげで存在したといっても過言ではない。そして日本はそれらのなかで、いまだに貿易収支の黒字を増加させている。(管理人注②)
 つまり日本とはお手本として捉えられるべき存在であって、決して警告などと捉えられるべき存在ではない。もしある国が日本のようにあらゆる意志を統合する方向に導くならば、どんな絶望的な状況も有利な状況に変革することが可能なのだ。
 日本はその持続的なインフラストラクチャーの成長を図ったという点では、世界に大いなるインスピレーションを与えている。

 ・・・<抜粋終了>・・・

(管理人注①)へドニックシステムとは...
 複数の属性を持った財の市場での価値から、それぞれの価値を推定する手法をヘドニック推定と呼ぶらしく、代表的な財は不動産だそうです。

(管理人注②)
 日本の貿易収支ですが、2000年代はリーマンショックが起こるまで順調に黒字幅が増加していました。リーマンショックで黒字は激減するのですが、その後はまた増加傾向にありました。しかし2012年4月~9月の貿易収支は3兆2190億円の赤字となり、半期で過去最大と発表されました。これは東日本大震災の影響で、石油や天然ガスの輸入が急増したことや円高が原因と言われますが、明らかに日本の貿易収支の黒字幅が増える傾向は曲がり角に来ていると思われます。



 とまあ、日本絶賛という感じです。
 そんなに褒められるほど凄いのかなあとは思いますが、私達の認識は、かなりマスコミその他で操作されたものであることはたしかです。その一つの例として、マスコミは、こうした海外での日本の評価を全く伝えようとしません。
(転載終了)


日本だから、この「失われた10年」を
ここまで戦って来れたんだと思いますヽ(゚◇゚ )ノ
これがもし他の国だったら…
悲惨なことになっていた!Σ(・ω・;|||

それは、確実だったと思います(*゚.゚)ゞ


残念ながら…
日本もこれから先は、
心配な要素は増える一方ですが(/ω\)

311などの国難を機に、
国民全員で立ち上がれば、まだ間に合うかも(*゚ー゚*)
(ドイツは別としてヨーロッパ諸国や、アメリカは既に遅いでしょうけどね)