3回目の抗がん剤投与の日に予定通り通院した。私の掛かっている病院では、診察の先生、投薬担当の先生、執刀医と役割が別れていて、毎回まず診察の先生にエコーで見てもらう。カーテンの中で服を脱いでいると『どーお?小さくなった?』と既にはじまる。『あまり変わりません』と言いつつ先生の前に行く。

 

治療開始前は胸のふくらみから突き出してきていたしこりが突き出さなくはなっていた。爆発しそうという不安はなくなった。でも、『柔らかくなってきて、どんどん小さくなります。ほぼ消えてしまう人もいます』と聞いていたのは感じられていなかった。

 

横になってエコーを撮って診察席に行くと、『成長が止まっているので効いてない訳じゃないんだよ。でもこのペースではちょっと物足りないから、他の薬に替えた方がいいね。』とあっさり言われてポカンとした。あんなに皆『凄く効くよ』と言っていたのに大して効果がでてないとは。

 

投薬の先生の診断でも、あと2回の投与は中止して、後半にするものを前倒しに始めましょう、ということになった。後半は1週間に1回投与を12回するので3ヶ月間毎週通わなければならない。通院計画と引越の後でという都合で母が来る日を決めていたのに、駅まで迎えに行く日に通院になってしまって、田舎からはるばる出てくる母をどうしようかといろんなことを想定して頭を駆け巡ったが、とりあえず連絡した。

 

私の母は、『無理しちゃダメよ』としつこく言いつつ、『心配だからそっちに行くから、空港か駅まで迎えに来てくれるでしょ』と癌の娘に平気で言うようなハチャメチャなところもあり、地元から余り出たこともなく、車社会から公共交通機関の大都会を通ってくるので自分で私の家まで辿りつけないのは分かっていたが、せめて横浜駅まで来てくださいと言っていた。しかし、通院前に迎えに行くにも点滴後に行くにもどうにも中途半端な時間の飛行機を取ってしまっていたので心配だった。が、予想外にも、母の友達が横浜の息子の所に来ていて、空港まで迎えに来てくれることになり安心した。

 

そういうやりとりをしながら、急遽後半の予定だったパクリタキセルの点滴をすることになった。看護師から『パクリタキセルには小さいビール1杯分くらいのアルコールが含まれているので、ゆっくりと点滴して気持ちよくなって殆どの方がお休みになっています』と説明を受けた。初回はどうだったか覚えていないが、2時間半から3時間くらい掛けて点滴するので、いつも寝ていた。それまでは、『肝臓で薬を分解するので、お酒は控えて肝臓を休ませてあげてください』と暗に禁酒を勧められていたので一切飲んでいなかったが、血管からダイレクトにアルコールを入れるのならと、独断で1杯くらい飲んでもいいだろうと酒を解禁した。(元々酒は弱いので1~2杯くらいしか飲まないが、飲み友とワーワー言う中でソフトドリンクもつまらなかった)