一番最初の点滴からちょうど1年となった。この間は当時はとても長く辛かった気がしたが、終わってみればわずか数ヶ月の事だったので、どのようにお伝えして良いのかなかなかブログに書くのが難しい。

 

私の標準治療に使われた抗がん剤はAC-T療法≪A:アドリアマイシン(ドキソルビシン)

C:シクロフォスファミド T:パクリタキセル≫と説明された。前の総合病院ではEC DOC療法≪E:エピルビシン C:シクロフォスファミド DOC:ドセタキセル≫と言われていた。標準治療では前半がアンスラサイクリン系、後半がタキサン系という抗がん剤を使うことを言うようで、病院によってその調合が違うようだ。治験などの条件には、この両方を使った治療をしても効果が出なかった患者であることという条件を見たので、これを飛ばして新薬や治験に参加することはできないようだ。前の病院での説明は、前半が3週間毎に4回、後半も3週間毎に4回の8回と言われたが、私が受けたのは前半が3週間毎に4回、後半は毎週12回との予定だった。


最初の点滴をセカンドオピニオン当日急遽始めて、疲れ切って帰宅してから所定の薬を飲んで寝た。翌日は普通に仕事の予定だったので出勤した。起きて仕事に行くまでは特別変わったことはなかったと思うし、夢だったのではと思ったくらいだ。ただし便秘予防の酸化マグネシウムを飲んで寝たが便秘したので浣腸を使ったので現実なのだと受け入れた。(看護師に使用してよいかは確認済み)仕事に行ってからは物凄く喉が渇くし頭がボーっとしていた。一部の同僚に報告したが、とにかく仕事はゆっくりながらも特に支障なくこなしたと思う。

 

2日目か3日目は休みだったが、3日目は少し怠かったと思う。その為、2回目の時は3日目に休みを取ることにした。3日間の副作用が一番強いとの事で、吐き気止めを忘れず飲んだのと、仕事をしていたので、特別気持ち悪くなることはなかった。抗がん剤経験者は2~3日は仕事を休んだという話を聞いたが、私は特に休む必要などなかった。それと、3日目くらいに抗不安剤と説明された薬が抗鬱剤であることが分かり、怖いので飲むのを止めた。ボーっとするのと激しい渇きはこの薬のせいだった気がする。(そういえば吐き気などで治療を受けるのが憂鬱にならないようにと聞いた気がする)

 

それから2週間後の脱毛が始まるのを戦々恐々としつつ、自分の精神状態がどうなっていくのかが自分自身不安で仕方なかった。美容師の友人にウィッグの相談をしていたら呼び出されたので行ってみて、試着させてくれるのかと思ったら、お見舞いといってウィッグを4つもプレゼントしてくれた。社割だからとは言っていたが、定価を調べたら凄い金額(医療用に比べれば1つ分前後かもしれないが)で、そんなの貰う訳にいかないと言ったが返品できないし自分は病気じゃないからと聞いてくれず、有難く頂いた。そして1週間後くらいに職場の同僚に、背中まであったロングヘアを肩上までバッサリ切って貰い、抜け毛が目立ちにくいようにとヘアカラーで明るくして貰った。

 

治療を考えた時、一瞬実家に帰る事も考えた。しかし、年金暮らしの両親のもとで仕事もやめてしまった私が帰っても、親は何と言おうと金銭的に負担を掛けることは分かり切っていたし、いざ治ったからとまた横浜に戻り、仕事を探しなおすのは余りにもリスクが高いため、独り暮らしで出来る限り仕事をして自活した方が良いと思い、それまで通りとはいかずとも自分のお客さんだけでも続けて働くことにした。連れ戻されたり治療方針を勝手に決められかねないのもあり、親にはまだ何も言っていなかった。

 

それから職場のグループLINEで、乳がんに罹患したこと、抗がん剤治療を始めたこと、可能な範囲で仕事を続けたいけれど迷惑を掛けるかもしれない事を報告した。全員が何かしらの応援メッセージなり返信をしてくれた、半年ずっとスルーだったオーナーを除いては。そして常連客には突然の見た目の変化に驚かれるので、そのまま正直にお話しした。それ以外の方にもネット予約の方々には一斉メッセージで、理由は知らせず暫く指名客だけでお客様のご都合に合わせて出勤しようと思いますと送った。

 

10日ほど後に好球菌が減る前に増やすという注射を打ちに通院した。注射は一瞬で終わるが、電車で約1時間かけての通院なので苦痛だった。東京に通勤している人にはこれが毎日なのだろうが、自転車で15分くらいの通勤距離の私には苦痛以外の何物でもない。この次の日に腰痛などが起こると言われ、元々腰痛持ちの私には然程ではなかったが、腰痛の酷い日には出されていた鎮痛剤を我慢せず飲んだ。癌の痛みは普通の痛み止めでは効かないとかで、『これより強いのは麻薬系になります』と、トラムセットという聞いたことのない鎮痛剤を出して貰っていたが、ちょっと気持ちよくなるくらいよく効いた。調べたら依存性があるとか見た気もするが、麻薬系ではない。癌は成長しているときも時々ズキズキズキズキという傷みがあった。まるで成長期痛のようだ。そして、抗がん剤が効いているときも同じ痛みが出るが安心してください、と言われていた。