気が進まない病院の予約を脱走して後悔はしていなかったが、どうしてよいのか分からずにいた。私の考えを受け入れてくれた看護士の方は、緩和ケアの話もされていたし、病院のパンフレットに緩和ケアとは病気になったばかりの患者の心のケアからというように書かれていた気がするが、そもそも治療する気のない患者の話を聞く気のない医師と話し合う気になれないので、あの病院には頼めない。このままそっとしておいて欲しいと思う一方で、放っておいたらどうなるのか不安ではあった。仕事のシフトに普通に入っていたのでとにかく仕事に行っていた。

 

ふと、治療しなかったら、転移して末期になる前に、しこりが既に胸に卵が入っているように張り出していて爆発しそうでどうなるのか気になった。(右胸の上部内側なので分かりやすい)きっと治療しないという選択をした人はいる筈だ。

 

ネット検索していたらブログを見付けた。mikaさんという京都の方で、現在もご健在だった。過去の投稿をいろいろと探したら、癌が皮膚を突き破って血と膿を吹き出し、血の海の中、何度か倒れていた、夫と息子がいなかったら…とか、外出の際は生理用ナプキンを患部にあてて、匂いに気を付けていた、とか。壮絶!そして、無治療を選択したことに後悔はないが、こんなに大変なら摘出だけはしておいた方がよかったかと振り返っていたところがあった。一旦そこまで行ってしまうともう手術もできないらしい。一方で医療関係者のサイトで、病院に来なくなった患者さんが何か月か何年か経って、やはり治療したいと来院しても、もうどうすることも出来ない状態になってしまった方をたくさん見てきた、というのも読んだ。そういう事だろう。とにかく切除するべきか。

 

私の想像していたのと違う!癌って割とギリギリまで普通に生活できて終活が出来て、静かに死んでいくものだと思っていたが、少なくとも乳がんは違うらしい!独り暮らしの私が血の海で倒れていても誰も助けてくれないし、そもそもナプキンで血と膿を出しながら世界中を旅行したりやりたいことをやって過ごすなんて無理だ。でも抗がん剤治療なんて絶対したくない。

 

このどうしていいか分からない気持ちを独りで解決することも出来ず、facebookに投稿した。その時の現状と考えとこれから迎えるであろう現実と、それは理想とは違うことに気づいて悩んでいる事。下書きをして、英語でも同じ文面をつくり投稿した。深夜から明け方になっていたので、遠距離通勤をしている同級生がまず『生きてほしい』とコメント。続いて日中であろうアメリカ・ヨーロッパの知人たちが続々と激励コメントが上がってきた。

 

『頑張れ』とか『治療して』と言われれば言われるほど泣けてきた。私は今まで充分頑張ってきたし、この先もう明るい未来なんて待っていないのに、なぜまだ頑張り続けなければならないのか?皆の励ましは、知人を失いたくないという一方的なエゴに感じて、そんなこと言われたくない、という涙だった。その日はひどく追い詰められた気持ちのまま床に就いた。寝ている間にもたくさんのコメントが入っていた。