紹介状をもらった総合病院は自宅から歩いても10~15分ほどのところにあり便利だった。診察を待ち、前のクリニックと同じような検査をまた受けさせられた。マンモグラフィーにエコーに組織採取。レントゲンもこの日撮っただろうか。紹介状があるのに何度も同じ検査を受けさせられて、しかも総合病院なのであっちこっちに移動してウンザリしていたうえ、ここでのマンモグラフィーは酷いものだった。しこりが一度腫れて痛いことも継げたと思うが、容赦なく圧迫されてしこりが破裂するかという痛さだった。服を着替えるときに、乳頭から汁がでていてフラフラになった。ここでの検査は医師以外は全て女性が担当してくれるように配慮されていたが、この手荒さは尋常ではなかった。
担当医は口下手な無表情な感じで、とっつきにくい感じだった。最初のクリニックでしこりの大きさがおよそ3㎝と言われていたと思う。それから3~4週間ほど経ったこの頃、すでに確か4㎝と言われた。待たされている間にどんどん成長していた。成長が早すぎて壊死するような状況だろう。この日最後の診察の時に先生の説明の中で『癌がね…いやまだ癌と決まった訳じゃないけど』と言っていて、(おいおい、これ本当に思い悩んでる患者だったら絶対言い間違えちゃいけないヤツだよ)と思いつつ聞いていたが、今となっては何を説明されたのか覚えていない。覚えているのはそこだけだ。
この病院ではチーム制のようで、若い女医と親切な看護士とも面談があった。結果が出る10日くらいの間に、MRI,CTスキャン、血液検査、心電図などを受けるようにと予約を取ってくれた。女医も看護士も女性同士だからか話しやすく、紹介された先生は名医かもしれないが、こっちの先生に担当して欲しいと直感的にも思っていた。看護士は私と同じ岡山県出身ということでより心配してくれていた。本来は医療人は感情移入などしてはいけないのだろうが、人間臭い方が話もしやすいのが人の心理だ。
驚いたのはこの日の請求金額が26,620円も平然と機械から請求されたことだった。混雑解消の為、自動清算機が導入されている。病院など殆ど行かないので今はそれが普通なのか知らなかったが、カードが使えなかったら現金をこんなに持ち歩いてないでしょうに。胸部MRIが8,180円、CTが7,690円とその都度かかった。ネット情報ではMRIが5~10万ともあったので怖かったがそこまでではなかった。ちなみに結果の日には組織診の結果と別に請求されたと思うが正確な金額が分からなくなってしまった。大病院は会計が分かれているので、どの検査にどのくらい掛かるかなど考えずにバンバン検査に回される。
さて、この間、ほぼ癌なのは確定とはいえ、検査に何度か行き、あとどのくらいの余生なのかと思いながら、それまで仕事中心に働きつつましい生活をしてきたので、食べたいものを食べ、外で飲んだ時に人にも奢ったりして、身の回りの整理も始めていただろうか。もう来年には要らないだろうとか着ていない洋服や物を捨てるように仕分けしたりしていた。あと3ヶ月だったら豪遊しよう。あと3年だったらとりあえず貯金を切り崩していい所に住んで遊んで暮らそう。特に泣いたりもしないで気ままに生活していた。