女性の涙は男性の性欲を低下させる


女性の涙には“眼から分泌される単なる液体”にとどまらない意味があり、男性のテストステロン濃度および性的興奮を減少させる化学的シグナル(信号)を発することにより、機能的役割を演じていることが新しい研究で示された。


研究を実施したイスラエル、ワイツマンWeizmann科学研究所(レホボット)のNoam Sobel氏は、未だ分析されていない男性および小児の涙についても、他者に対して生物学的シグナルを発しているかどうかを検討したいと述べている。過去の研究では、感情的な涙にはタマネギを切ったときや眼にごみが入ったときに出る涙とは異なる物質が含まれていることが明らかにされており、この事実が、涙に化学的シグナルの役割があることを示す手掛かりとなったという。


Sobel氏らは、まず一連の実験から、男性が女性の涙と生理食塩水のにおいを無意識に嗅ぎ分けられると結論付けた。次に、24人の男性被験者に感情の不明瞭な女性の顔写真を見せ、それぞれの悲しさと性的魅力を採点してもらった。その結果、17人は生理食塩水よりも涙のにおいを嗅いだ後の方が、女性の顔の性的魅力が低いと判定した。

また、男性50人に涙または生理食塩水のにおいを嗅いだ後に悲しい映像を見せたところ、涙を嗅いだ群では自己採点による性的興奮に緩やかな低下がみられ、唾液中のテストステロン濃度に顕著な低下がみられた。さらに、性的興奮を促す写真および動画を見せた男性16人のMRIによる脳画像から、事前に涙のにおいを嗅ぐと興奮時に活性を示す脳領域の活性低下がみられることもわかった。


米国嗅覚味覚療法研究財団Smell & Taste Treatment and Research Foundation(シカゴ)の設立者であるAlan R. Hirsch博士は、「感情的反応は進化的利点によって発達したものなので、今回の研究はすべて理にかなっていると述べている。また、テストストロンは攻撃性のレベルにも影響を及ぼす点も指摘。男性の攻撃性を軽減させれば、女性の生存性が向上すると説明し、いずれは臨床的応用により、性犯罪者や性的攻撃の問題のある人に利用できる可能性もあると述べている。


今回の研究は、米科学誌「Science(サイエンス)」オンライン版に1月6日掲載された。Sobel氏は「今後は涙液中でこの活性を示す物質を特定し、性的な面以外で化学的シグナルがどう作用するのかを調べたい」と述べ、数年以内には何らかの答えが得られるはずだとの期待を示している。(HealthDay News 1月6日)

http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=648601