崖っぷちで気づいた。
僕は誰だ、ここはどこだ?
手には少しの荷物と白いバラ、そして足元には子犬。
見たことのない景色なのに、なぜか懐かしい気がした。
僕は何も知らない愚か者だ。
今はそれでいい。
旅は始まったばかりなのだから。
陽の光と風の中で、自由を感じた。
1日目、僕は魔術師にあった。
机の上には、木の棒とカップと剣とコインがあり、右手には魔法の棒を持ち天をさし、左手は地をさしていた。
とても気になったので、おずおずと聞いてみた。
何をしているのですか?
彼はしっかりと答えた。
創造、イメージを形にしているんだ。
2日目、寺院の中で女教皇を見た。
彼女は白いヤヒンの柱(肯定)と黒いボアズの柱(否定)を背にし、トーラ(律法)の書を守るように抱えていた。
通り過ぎる時に目が合ったが、何も聞けなかった。
ただ前を通った時に、目に見えないものや気づかないことが持つ、秘密の力を感じた。
3日目、実り多き小麦畑の向こうに女帝がいた。
ギンバイカの花輪、12個の六芒星に飾られたティアラ、7つの真珠のネックレス、それらは彼女の豊かさを現していた。
彼女の豊かさは、頑張ったり勝ち取ったりしたものではなく、ごく自然に湧いて来るように感じた。
愛によって。
4日目、岩だらけの山の中で皇帝に会った。
彼は右手にエジプト十字、そして左手に地球儀を持ち、羊に飾られた王座に座っていた。
豊かな髭と鋭い眼光から、統治者の自信に満ちた威厳を感じた。
でも少し懐かしい気がした。
それは、幼い頃誰もが憧れる父親の姿かもしれない。
5日目、教会の前を通ると教皇と双子の聖職者がいた。
教皇はパパル十字を持ち、三重冠を身に付け、足元に鍵を置いていた。
何かを教え何かを学んでいるように見えたが、それはルールではなくモラルのように感じた。
だがそれは、モラルという名のルールなのかもしれない。
6日目、天使ラファエルと恋人たちを見た。
男の人の後ろには12個の実をつけた木(生命の樹)があり、女の人の後ろの木(知恵の樹)には蛇がいた。
2人は見つめあっているわけではなく、男の人は女の人を、女の人は天使を見ていた。
少し不思議だけど、なんとなくわかる気がした。
7日目、戦車を見た。
戦車は白と黒のスフィンクスに引かれ、星降る天幕の中には、八芒星の冠と杖を持った王がいた。
白と黒のスフィンクスはプラスとマイナスであり、この相反する2つの力を意志によってコントロールすることで、王は全てに勝利する力を得ているように感じた。
8日目、ライオンの口を閉じている女性に会った。
彼女の頭の上には魔術師と同じレミニスケートのサインがあったので、ただ者ではないことがすぐにわかった。
彼女は優しさ(愛)という精神的な力で、ライオンの物理的な力を、上手くコントロールしていた。
愛の持つ力を感じた。
9日目、雪山の山頂に隠者がいた。
左手に杖、右手に六芒星の入ったカンテラを持ち、登ってくる者を導いているように見えたし、何かを探しているようにも見えた。
導く事と探す事、言いかえると、教える事と学ぶ事、これらはある意味同じなのかもしれない。
ふと、そう思った。
10日目、回っている輪を見た。
上にはスフィンクスがいて、蛇が下がりジャッカルが昇っている。
輪には文字が書かれていて、英語でTAROあるいはTORA、ヘブライ語でヤハウェと読めた。
四隅では、牛とライオンと鷲と天使が熱心に本を読んでいた。
何かが変わる予感がした。