これまで焼山寺での祈りは、本堂と大師堂での祈りに専念していましたが、今回の爺孫遍路では出来るだけ多くの塔頭で諸仏に祈ることを心掛けました。

 

  十二社神社

  大師堂で祈った後、右隣の十二社神社で祈りました。    

 十二社神社には天神七代、地神五代の合わせて12の神様が祀らています。

 

 天神七代(てんじんしちだい)
  「神世七代」ともいわれ、日本神話で天地開闢の始めに現れた7代の神々です。   

 地神五代(ちじんごだい)

  天神七代から神武天皇までの間に現れた天照大神、天忍穂耳尊、瓊瓊杵尊、火折

  尊、鸕鶿草葺不合尊です。

 

  十二社神社の創建年は不明ですが、熊野大社の御分霊という伝承があります。天

 正年間までは別当寺である焼山寺に十二社神社についての記録がありましたが、文

 禄4年(1560年)の火災で焼失しています。

 現在の社殿は万延元年(1860年)に建立されたものです。

  

  狛犬 境内には可愛らしい狛犬が安置されています。中央に大きな狛犬が配置さ

    れて、山型になっています。

       阿形グループ                    吽形グループ

 

   孫は「かわいいね」と言って眺めていましたが案の定、「どうして神社には狛

  犬がいるの?」と、鋭く切り込んで来ました。爺ちゃんは軽々受け留めて、

 「『神聖な場所に邪気が入るのを防いだり、魔除けとしての役割がある』と言われ

 ているんだよ。お寺の仁王様や不動明王みたいなものかな」と切り返しました。

 三面大黒天
  本堂左横のお堂には三面大黒天を祀ったお堂があります。 
  三面大黒天は、中央の顔面が大黒天、右面が毘沙門天、そして左面が弁財天の像
 です。
 
 
                 三面大黒天

   弘法大師作と伝わる三面大黒天です。目立つところに大きな打ち出の小槌が備

  え付けらています。

   焼山寺の大蛇を退治するとき、弘法大師が祈願したのがこの三面大黒天だと云

  われています。

   本尊は秘仏ですが、前立本尊を拝顔できました。爺も初めての拝顔でした。

  前立は三等身くらいで、ふくよかなかわいらしい感じの像です。

   顔だけでなく手も3対あり、それぞれの手には鎌や剣、打ち出の小槌などいろい

  ろな道具を持っています。

   孫は「色々な道具を持ってるんだから、御利益もいっぱいありそうだね」と言

  いましたので、爺もそれに合わせて「大蛇を退治するのにたくさんの顔と道具が

  必要だったんだよなきっと」と、同調しました。

 

  鐘楼にまつわるエピソード

   本堂前にある鐘は徳島藩主・蜂須賀家によって慶安2年(1649年)に寄進され

  たものです。蜂須賀公は同時に2つの鐘を作り、焼山寺と徳島市内にあるお寺に寄

  進しました。焼山寺の鐘はとても響きがよく、遠く徳島市内まで音が届くほどだ

  ったのに、もうひとつの鐘は今ひとつでした。そこで蜂須賀公が『鐘を取り替え

  たい』といい焼山寺まで取りに来ましたが、焼山寺の鐘は「いなん、いなん(帰

  らない、帰らない)」と鳴いて嫌がったとのことでした。

   また、昭和16年には第二次世界大戦で金属供出の命令が下ったため、鐘を運ぼ

  うと馬車につんだところ馬が苦しみだしたため断念され、難を逃れたとのことで

  した。徳島県の文化財に指定されたため、現在あるのは2代目の鐘ですが、初代に

  負けずこの鐘もいい音がします。

 

   みちのく巡礼札所の東日本大震災での被害などに関係する情報・逸話

  ※みちのく巡礼の30番札所「稱名寺」(宮城県亘理町)にも類似のピソードがあり

  ます。東日本大震災後、がれきの山から布袋様が転がり落ちて来ました。作業員

  の人が元の山に戻そうとしましたが、何度も転がり落ちて來るので、何かわけが

  あると思いその木像を地元の稱名寺に持って来たそうです。その像は供養して寺

  の本堂に安置されています。宮城県南巡礼ツアーの際に住職さんが法話の中で、

  そのエピソードを話してくれました。

 

   みちのく巡礼宮城県南巡礼ツアーで住職より法話を受ける 本堂に安置されている布袋様

 

  ※2みちのく巡礼32番札所徳泉寺(宮城県山元町)は、沿岸部から僅か300メートル

  の地点に位置し、東日本大震災で大津波に襲われ、伽藍・仏具等はすべて流出

  し、檀家のほとんども家屋が流されました。現在も災害危険区域のため居住する

  ことができない状態にあります。このような中、本尊のお釈迦様だけは奇跡的に

  無事発見されました。どんな災難に遭っても、人々の支えになろうとする一心で

  踏み止まったご本尊を「一心本尊」と名付け、無難無災を御祈祷した金属製のお

  守りカードを作製しました。一心本尊は補修されて本家寺の徳本寺に仮安置され

  ていました。住職発案の一文字写経やクラウドファンディングにより、全国の

  人々からご支援を受け、本堂が再建され正式に新しい本堂に安置されました。

 

 

 徳本寺に仮安置された一心本尊    再建された本堂に正式安置された一心本尊

 

  現在、みちのく巡礼では岩手・宮城・福島3県で42ケ寺の札所と2ケ寺の協力寺

 院(中尊寺・毛越寺)がありますが、ほぼ全ての寺院で地震あるいは津波被害があり

 ました。タイミングを計って紹介したいと思います。

 

   焼山寺山門の仁王様

   遍路ころがしを克服して、巡拝前に山門をくぐるときには、仁王様には軽く手

  を合わせて本堂に向かいましたが、巡拝後は入念に対面させていただきました。

  大分色あせていましたが、

  当初は色鮮やかだったと想像出来ました。

 

   

                                    阿形               吽形

  

   参道の仏様たちに祈る

   焼山寺で本堂・大師堂・12社神社・三面大黒天で祈り、杖杉庵に向かいます。

  これからの遍路はいよいよ「孫の意志による遍路」です。

 

  参道には8年前の前回の遍路以後、参道に十三仏や七福神や不動明王が安置されま

  したので、その前では立ち止まって手を合わせました。

  以前は焼山寺の苦難の道を克服した後、さらに長い参道を山門に向かってひたす

  ら歩いていたのですが、今回は心癒されながら歩くことが出来るようになったと

  感じました。

   孫には、道々の無縁仏や無縁墓にも手を合わせるマナーを教えておりましたの

  で、全ての仏さまに祈っていました。

  

                        布袋様

  

     文殊菩薩       釈迦涅槃像         弥勒菩薩

 

  

    薬師如来          不動明王        観音菩薩   

                   

  孫にとって一つの寺院で色々な仏様に祈る、またとない機会でしたので名前や

 仏様の特質を理解することを期待します。

 

  山門で感謝の礼を捧げ、杖杉庵へ向けて自己の意志の遍路へ出発します。