最御崎寺から25番津照寺までは左手に海を眺めながらの6.5㌔の道のり。下り

 と平地の比較的歩きやすい道です。今回の遍路も残り数日になりましたので、残さ

 れた数日を犠牲者のために心濃い慰霊に捧げたいという思いでした。

 

 

  孫の希望に応じて遍路日程を延長

  最御崎寺から1.4㌔で国道55号線と合流します。まもなく国道と合流する点に近

  くなった時、孫から意外な質問が発せられました。「おじいちゃん、遍路あと何

  日なの?」「どうしたんだい。4日だよ」と言うと、

 「室戸へ来る道で二人離れて歩いて考えろっておじいちゃんが言ったので、色々考

  えて来たんだよ。そしたら遍路が面白くなってきたんだよ。だからもう少し遍路

  したいんだけどいい?」という内容の話をしました。

  それに対して爺ちゃんは、「①高知からのバスの予約変更可能。②こちらで宿題

  を完全に終わせる。③家族の了解を取る。三つの条件はクリアー出来れば大賛成

  だよ」と言って、早速電話でバスの予約変更をして3日間の延長を決定しました。

 

  室戸の街並みの旧道での女性遍路との出会い

  最御崎寺から1.4㌔で国道55号線と合流します。爺ちゃんは、国道ではなく、迷

  わず陸側を並行する街並みの旧道を選びました。このようなケースでは必ず旧道

  を選ます。理由は出会いがあり地元の人々の暮らしが見えるからです。

 

   

 

   25番津照寺への遍路道での女性遍路との出合

   旧道に入って間もなく、60代らしき女性遍路に追いつきました。

  「こんにちは!」と声を掛けると、女性の方から「どちらからですか? お孫さ  

  んと一緒ですか?」と訊いてきました。こうしたやりが遍路同士の交流のきっか

  けの定番なのです。

   「はい。仙台から来ました。孫です。東日本大震災で2万人以上の人が亡くなっ

  たので、その方々の慰霊と被災地の復興を祈る遍路です」と話し、徳島新聞のコ

  ピーも差し上げました。

  東日本大震で亡くなった人たちの鎮魂と被災地復興を祈る遍路をしていることや

  みちのく巡礼の活動などについて話ながら、3人で津照寺へ向かいました。

  室津の集落の道の両側には強風に備えた造りの人家軒を連ね、優しく包み込んく

  れます。

             室津の集落

   

   女性遍路は広島県のMさんという人で、ご主人が長期出張で留守が多いので、

  ご主人の勧めもあり四国遍路を区切で始めたのがきっかけでした。今回は神峰寺

  までの予定とのこと。東北にも住んだこともあり、みちのく巡礼の活動に興味を

  持っているようでした。

  お寺の近くから朱塗りの山門までは薬屋、まんじゅう屋、お土産などが並びちょ

  っとした門前町の雰囲気です。

  出会ってから1時間ほどの歩きで25番津照寺の朱色の山門前に到着しました。

   25番津照寺

   津照寺について

   津照寺は室戸の人からは親しみを込めて「津寺(つでら)」と呼ばれています。この

  寺も弘法大師によって開基されました。大師は漁民の安全と豊漁を祈って延命地

  蔵を刻んで安置し、堂宇を建立したと伝えられています。このことを二人に話す

  と孫は「弘法大師はあちこちで水を湧かせたり、貯め池を造ったりして住民の役

  に立っているので人気があるんだね」と言いました。するとMさんは「僕は詳し

  いのね」と感心しました。「お爺ちゃんにいろいろ教わったからね」と生意気そ

  うな口調で得意そうに言いました。爺ちゃんは「私は20歳の時から6度も遍路を

  しているし、歴史的なことは本を相当読んでますから…。それに今回は孫に話そ

  うと思って復習してきたんです。結構大変なんですよ…😲」と答えました。

 

   山門・本坊(大師堂と納経所)と鐘楼門

   到着して山門から前方を見上げると、急傾斜の石段が一直線に伸びています。

  山門をくぐり、本堂に向かう途中には、朱塗りの鐘楼門が立っています。孫は

  「竜宮城の門みたいだね。安楽寺と十楽寺もそうだったね」と言います。それに

  応じて爺ちゃんは「弘法大師は遣唐使として唐に行っていたのでその影響がある

  んだろうな」と答えました。 石段は125段あります。

 

   長い石段を少し上がった右側に本坊があり、大師堂と納経所があり住職の住ま

  いになっています。石段の途中には鐘楼門が建っていて、その両側には青銅製の

  仁王像が立っていました。

本坊(大師堂と納経所があります)

 

  

鐘楼(青銅性の仁王像が立っています)

   

   津照寺は港北岸の小高い山の上にあるので、境内からは港がすぐ目の前に見下

  ろせました。

  

 

   本堂

   石段を上りきると、また石段が続き、本堂はその頂上にありました。

   山号にもある宝珠が本堂の屋根に輝いています。

 

 

宝珠が本堂の屋根に輝いています

 

   

  本堂での祈り終えて、石段を下り大師堂で慰霊と復興の祈りをいたしました。

  三人でお祈りするのは7回の遍路で初めてのことです。

 

  その日はMさんも26番金剛頂寺宿坊へ同宿でしたので3人で向かいました。

  津照寺から約4キロの道程です。最後の1.7キロ程は標高差400mの山登りです。

  以前の体験を思い起こすと大変だな~と思いました。

  Mさんは孫がいないとのことで、孫を可愛がってくれました。

  Mさんの帰宅までの3日間、27番神峰寺まで3人遍路ということになりました。

 

 

 シルクロードのメモリー・心の目