室戸岬の奇岩で 孫気分転換 祈りの場最御崎寺へ向かう     

海底が隆起して形成された室戸岬の奇岩の数々は、ユネスコ世界ジオパークに指定されるなど観光価値があるものです。孫にも見せて気分転換させました。孫は奇岩地帯を縫うようにつけられた遊歩道だけでなく、奇岩地帯を縦横無尽に移動しながら元気に散策。次は奇岩の動の世界から、参拝という静の世界へ気持ちを切り替えて最御崎寺に向かいます。

 

  最御崎寺諸佛諸堂 ・空海七不思議に興味と感動

   参道の入口では「お迎え大師」が迎えてくれます。土佐弁で「よう おまいり

   (しっかりお参りしなさいよ)」と呼び掛けているようです。

   弘法大師のおひざ元に来た尊い気持ち気持ちになります。

 

 

  「お迎え地蔵」の側の案内板を二人で確認して行動計画しました。

 

 

  室戸海岸での 孫の長時間孤独歩きを想う

   最御崎寺は標高164メートルの山の上にあります。山門までは石段ではなく、

  右側の坂道を進むのが参拝順路になっています。水平距離340mで164m上るの

  で、かなりの急勾配配です。

 

             勾配は次第に急に急になってゆきます

 

  山道が得意になった孫はそこをどんどん登っていきます。久々の山登りで気合が

  入っています。当時68歳の爺ちゃんですが、ふだんジョギングで鍛えているので

  遅れは取りません。参道には等間隔に灯籠があり、ひとつひとつに仏像や世界の

  偉人の彫像が施されてあります。ダライラマの肖像も見受けられました。

      

 

   ここは山門までの急な登りですが、《室戸までの孤独で長い海岸歩きを、孫は

  どんな思いで克服して来たのだろうか?》、という想いが浮かんで来たのです。 

  ――長かった。苦しかった。これが本音かもしれません。 弘法大師も、その後遍

  路した人々も、只々歩いて歩いて歩き続けるしかなかった。このの中から何

  を見出したに違いない。爺ちゃんもこれまで、大師や先輩遍路達と同じ土の上を

  歩かせてもらった。私が6回辿った道をそして土の上を、孫が歩いて来た。不思議

  な縁(えにし)を感じて、感動がどっと押し寄せて来た。これからの人生、孫には辛

  く苦しい荒波が襲って来るだろう。そんな時決して自分から逃げたりせずに、こ

  の海や空の青さを思い出し、「大丈夫。あの道を歩けたんだから、この波風も乗り

  越えられる」と、自分自身を励ましてほしい、と思いました。

 

   アコウ、ビロウなどの亜熱帯樹林のトンネルを抜けると、どっしりとした重層

  の仁王門が立っています。ここでも修行大師が出迎えてくれます。この仁王門に

  は表と裏に2対4体、赤色と青色の仁王様が立っています。表の青い仁王様は、

  強さを強調されていて、《この広いお寺をしっかり守ってやる》という強力な意

  志を感じさせます。

  

 

  最御崎寺の由緒と沿革   

  「最御崎寺は正式には室戸山(むろとざん)明星院(みょうじょういん)最御崎寺とい

  う真言宗豊山派のお寺だ。寺号の「最御崎寺」には「火つ岬(ほつみさき・火の 

   岬)」という意味があって、海に向かって聖なる火を焚く古代からの信仰を表し

  ているとのことなんだそうだ」

  「この寺は、弘法大師が開いたお寺なので、由緒が有って重要文化財になってい

  る色々な仏像があるし、たくさんのお堂などもあるんだよ。」

  多くのお堂や宿坊

  門を入ると右に袴腰造の鐘楼堂、虚空蔵菩薩石像、多宝塔などがあり、左に土

 俵、大師堂があります。振り返ると室戸岬方面が一望できます。

       

 

 この先左手に手水場、納経所があり正面に本堂が建っています。本堂裏には霊宝

 殿、聖天堂、護摩堂などが並び、最も奥には宿坊である遍路センターがあり、その

 中には遍路休憩所もあります。「爺ちゃんは、ここに2度泊ったことがあって、そ

 の時当時副住職だった現在の住職さんと奥さんと話をしたこともあるんだ。奥さん

 は一般家庭で育ったので、仏教や札所を理解してもらいたいと思って、結婚して間

 もなく二人で88ヶ所を歩いて巡ったそうだよ」

 「遍路休憩所でおにぎりを食べて行こう」

 

 

      本堂 十三重塔    多宝塔        多宝塔     鐘楼堂

    

  最御崎寺の御本尊は虚空蔵菩薩   

   孫は「虚空蔵」という言葉が気に入っているようで、その響きと意味に興味

  津々でした。爺ちゃんはさっそく答えます。大変ですが、自分自身の勉強にもな

  るし、孫との信頼関係構築に大切と考えています。

   「虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)は「智慧の菩薩」と呼ばれていて、宇宙のよう

  に無限の智慧を持っていて、知恵をフルに使って人々に授けてくれる仏様なん

  だ。本堂の御本尊は拝むことはできなけれど、その代わり、鐘楼堂の隣に大きな

  虚空蔵菩薩の石像があるんだよ」と教えて二人で拝みました。「四国霊場で御

  本尊が虚空蔵菩薩のお寺は最御崎寺のほか、21番札所太龍寺と12番札所焼山寺の

  3ケ寺だけなんだよ」

                               

                 ご本尊虚空蔵菩薩 石像 

 

   それから本堂と大師堂で、「開経偈」「般若心経」「回向文」を読経してお祈

  りしました。「東日本大震災で亡くなった人のご冥福を意識しながら祈ろうな。

  お爺ちゃん自身は金華山で3度も命を助けられたし、二人とも身内の人が死なな

  くて幸運だったのだ。だから、気持ちを一新して、亡くなった方々に心を込めて

  お祈りしよう

  「うん、わかってるよ😊」           

   

 

         本堂                大師堂  

    古くから厳格な修行の聖地で、明治5年(1872年)まで女人禁制でした。

 

  おびんずる様

  「本堂にはおびんずる様(賓頭盧(びんずる)尊者)がいるよ。前にも、教えたけど

 自分の体の悪いところと同じところを撫でると病気が治ると言われているんだ」

  孫はお気に入りなのでまた頭をなでていました。

 

  眼病平癒一畑薬師奉安殿
 大師堂の隣には「眼病平癒一畑薬師奉安殿」と書かれた小さなお堂があり、

 「目のお薬師さん」で知られる島根県の一畑(いちばた)薬師を勧請(お願いして移す)

 したものです。

 

        

 

   本堂からへんろセンター方面へ行く途中に「一言お願い地蔵」があります。

  一生に一度、ひとつだけ願いごとを叶えてくれるとというお地蔵さまです。

  小さなお地蔵さん一体1000円でした。

 

  「東」の紋入り瓦

   瓦は東寺にちなんで「東」という紋入りでした。

 

 

  空海の七不思議

  このような歴史に関連して「空海の七不思議」とされる史跡が室戸岬方面に  

  残ってます。「くわずいも」「鐘石」「観音窟(一夜建立の岩屋)」「明星石」

  「行水の池」「目洗いの池」「ねじれ岩」などがあります。

  そのうちの「鐘石」と「くわずいも」の二つが最御崎寺で見ることが出来ます。

 

 冥土まで届く「鐘石」の音

  この鐘石を小石で叩くと鐘のような音が鳴り響き、その音は冥土にいる家族や知

 人に届くといわれています。安山岩の石ですが、叩いてみるとたしかに「キーン」

 という感じの鐘の様な音がしました。

 

   食べられなくなったイモ

 

 

  修行中の弘法大師が空腹に耐えかねて川でイモを洗っていた老婆にイモをひとつ

  所望したところ、老婆は『このイモは食べられない』と嘘を言いました。する

  と、その日から本当に煮ても焼いても食べられなくなり、「クワズイモ」と呼ば

  れるようになりました。噓つきを戒める教訓伝説でしょう。

 

  

  最御崎寺は「修行の道場」と呼ばれる土佐国・高知の最初の札所です。

 徳島県最後の札所・薬王寺から延々と海沿いを長距離を歩いてきて、さっそく修行

 の道場の洗礼を受けたような気持ちにさせられます。奥深い亜熱帯樹に抱かれた東  

 寺・最御崎寺のにたたずんでいると、《お大師さんのお膝元来たなぁ》という、尊

 い気持ちになりました。

  明治5年まで女人禁制だった厳格な修行の道場は、今でも聖地感があり、広い境

 内には見どころがいっぱいで、孫の良い教育の場にもなりました。

  一通り回ってから遍路休憩所で、ロッジおざきで作ってくれたおにぎりなどを食

 べて早めの昼食を済ませました。予定より早めの行動です。孫は心身共に大分遍路

 に慣れて来たようです。目の輝きも違ってきました。子供の目は正直です。

 

 シルクロードのメモリー・心の目