青年大師像で元気とこれからの遍路の意欲をいただいてから、御厨人窟に向か

  いました。

 「御厨人窟」

   室戸岬にあるパワースポット「御厨人窟(みくろど)」(御蔵洞)は平安

  時代初期に弘法大師・空海が修行をしたという伝説が残る洞窟です。海水の侵食

  によりできたました。当時青年だった弘法大師はこの地で開眼し、洞窟の中から

  見えた風景が❝空と海❞”だったので「空海」の法名を名乗ったと言われています。

  爺も20歳の遍路で、《洞窟から見えるのは、ただ空と海》を心から感じました。

 

 

 

  御厨人窟は幸い爺ちゃんと孫のふたりだけでした。爺ちゃんは20歳の時の時にこ

 の洞窟で感動の涙を流したことを、孫にぶつけてみたくたくなりました。

 

  爺ちゃん20歳の遍路ー

      ○自然の中でゆったりと時が流れるー「

  ○未知のもの危険・不可能と思われる事への「挑戦」「感動・感謝・喜び」ー「

 

  孫に話した内容を文章にして紹介します。――

   「静」「動」

   温暖できれいな四国の地を、鳥の声に耳を傾けたり、野に咲く花を眺めたり、

  大海原を見やりながら……、ある時は野の道やあぜの道、ある時は奥深い山の

  道、ある時は海辺や岬の道を金剛杖をついてのんびり歩いていると、

  とても心が和んでくる。

 

   歩き遍路では、時も空間もゆっくりと穏やかに変化して行く。

  その土地の人びと…、花や鳥などの生き物…、自然や歴史や人情…、たまに目に 

  する祭りや習俗…、暮らしのたたずまい…、その日の天候…、そうしたものとの  

  ゆったりとした出会い交流がある。

 

   それらすべてに対して、自分の心や目がゆっくりと開かれてゆく…、

  そこに深い感動感謝が生まれる。

  目にするもの、耳にするもの、ふれ合うものすべてが、いつも新鮮に映る。

  それらに(いと)おしささえも感じる。

 

   どこの寺でもどこの町でも、人と人との暖かいふれあい、心と心のふれあいを

  肌で感じることができる。

  「お接待」は、心に強い感謝を呼び起こす。

 

   自然との心和む出会いや、それまでに気づかなかった自分との出会い…日々さ

  まざまな感動的な出会いがある。

   朝出発する時は、「きょうはどんな山道を歩けるのだろう、どんな自然が待っ

  ているのだろう、素敵な出会いがあるかもしれない…」と、想像をふくらませ、

  わくわくしながら歩き始める。

   まったくぜいたくな旅だなあ……と、つくづく感じる毎日だった。――

 

  御厨人窟は、このようなロマンチックな若いころの頃の話をするのに、

 ぴったりな舞台でした。 絶好の場所と時を設定してくれた天に感謝

 

  空海難行苦行の洞窟・「御厨人窟」

  爺ちゃん衝撃と感動の二十歳の祈り

  爺ちゃんは20歳の時、遍路のことはほとんどわからないままに、遍路とはどの

  ようなものか?を知る目的で、お接待もよく知らず、予備練習のつもりで出発

  したんだ。札所の和尚さん、宿の女将さん、先輩遍路さんに教わりながら、地元

  の人たちに道を訊きながら歩いて、3日経って様子が少し分かって来たので、折角

  の機会を活用して、本格的な遍路をやろうと決心したんだ。

 

   大学生になってから全国各地を旅したり、小中高で色々なスポーツに取り組み

  登山で鍛えていたので体力や地理感覚は大丈夫だった。登山用のリュックに寝袋

  や懐中電灯も持ち、1日40キロ以上歩いて室戸まで来たのさ。道はほとんど未舗

  装だったので、むしろ歩きやすかった。今のようにトンネルもバイパスもなかっ

  たので全て山越えだった。もしかすると、当時は88ヶ所で1500㌔~1600㌔はあ

  ったかもしれないな~」

 

   孫と二人で入った御厨人窟の洞窟は、海なりがこだまして、相変わらず真っ 

  暗で風が強い。下にはうっすら水も溜まっています。

   ――爺ちゃん語りました。

  「よくこんなところで修行したものだと思うよ。厳しい条件だからこそ修行なん

   だよな。60年前にはロウソクも小さいのが1本だけで、懐中電灯が必需品だっ

   たんだ」

  「ここは爺ちゃんにとっては憧れの場所なんだよ。19歳の空海が虚空蔵求聞持法

  を会得中に口の中に明星が飛び込んだと言われているんだ」

  「20歳の爺ちゃんも弘法大師の19歳の修行に見習って四国の山野を巡り歩いたん

  だよ」「60年前には、四国歩き遍路のガイドブックや地図はまだほとんどなくて

  地元の人から沢山お世話になったよ。お世話になっている我々が丁重に頭を下げ

  られるんだから、いつも感謝していたんだ。それが爺ちゃんの20歳の遍路だった

  ね。だから、みちのく巡礼の活動が13年間も続いているんだと思う」

 

   「爺ちゃんも、弘法大師とまではいかなくても厳しさを求めての修行の巡り歩

  きだったろうと思う。室戸海岸では結構岩場も歩いたんだ。そんな時、空海はこ

  れの何倍も頑張っていたんだろうなと思いながら御厨人窟に辿り着いたんだ。

  だから、御厨人窟の奥の祈りの場に立った時思わず泣きだしたのさ。なんだか

  清々しかったよ。」

  「子供の頃から隣県羽黒山の修験者に憧れていたんだ。爺ちゃんはシルクロード

  の一人旅もしたけど、インドまで仏教の教えや経典を求めて、命がけでタクラマ

  カン砂漠やヒマラヤ山脈を越えてインドまで命がけの旅した玄奘三蔵に、尊敬を

  越えた気持ちを持っているよ。だから、お前には煙たがられてもお前を鍛えてや

  ろうと思っているのさ。お前の遍路はあと3日しかないけど、せっかくのチャンス

   だから頑張ろうな!」

 

   シルクロードのメモリー・心の目