ロッジおざき女将さんには、6回目の遍路でも大変お世話になりました。その時の様子は、自著『諸君!お遍路はいいぞ』(目下絶版)と、電子図書『人生が深まる「お遍路」はいかが』(22世紀アート出版・Amazon)の文章を一部抜粋して紹介します。

 こまやかな心遣い

  10日目、大雨の中を歩き疲れて高知県最初の宿「ロッジおざき」へ到着した。 

 ここの女将さん山田孝子さんは、こまやかな心遣いがいきとどいている。我々に

 対する応対や部屋の花やトイレなどにもそれがよくうかがえた。「おとずれ帳」

 には、たくさんのほめ言葉が書かれていた。女将さんは、体調を崩されていると

 のことだったが、それを押して、30分ほど話し相手になってくれた。その日の宿

 泊は自分ひとりだけなので、二部屋ぶち抜きの、海に面した広い部屋に泊めても

 らった。

  

                                    2004年6巡めの遍路の時

 

    ロッジおざきは現在、娘さんが中心に切り盛りしいています。到着すると娘さ

  んが出迎えてくれ、濡れたカッパや衣類の交換場所にすぐに案内してくれて、

  風呂も沸かしてありました。部屋は8年前と同じ、海が良く見える部屋でした。

 

 

 

 夫婦岩で祈る 

   目の前にはサーフィンで有名な尾崎海岸が広がり、遠くに夫婦岩も見えます。

  孫は好奇心いっぱいの目です。爺ちゃんが「浜を歩こうか。向こうに夫婦岩があ

  るぞ。今日のうちに見ておくと明日はそのまま室戸岬にけるぞ」と促すと案の定

  乗ってきました。早速、カメラとウエストバッグを持って出かけました。急げば

  20分ほどで行けます。夕飯までには十分戻れます。

 

  

                 夫婦岩

  戻ってみると、女将さんとの懐かしく嬉しい再会が待っていました。

 

   その日は入院中でしたが、宿泊する旨を事前に連絡しておいたので、娘さんが

  気を利かせて病院へ迎えに行き、わざわざ会いに来てきてくれたのです。30分ほ

  どの会話でしたが感謝・感激でした。

   律儀な女将さんに謝られたことが有ります。「実は櫻井さんから頂戴した『諸

  君!お遍路はいいぞ』が2冊ともなくなってしまったのです。人気があって、ど

  なたかお持ちになったのかもしれません」と、とても済まなそうでした。「それ

  じゃ今度は3冊送りしましょう」と言って送りました。この記事を書きながらふ

  と思ったのですが、サインと共に「より多くの方に読んでいただけるように、こ

  の場で読んでいただきますようにお願いいたします」と付記しておいた方がよか

  ったのではないか?と思いつきました。


   夕食は、地獲れの鮮魚や自家菜園で採れた野菜、そして自家製の干物等を使っ

  た郷土料理でのおもてなしでした。

                 心がこもる夕食

     

         朝食             薄暗い時間に出発   

   

   翌朝は6時前起床。孫は布団の片づけや身支度が徐々にきちんとできるようにな

  って来ましたので、爺ちゃんも少し気が楽になりました。「かわいい子には旅を

  させよ」を実感した爺ちゃんです。

   朝食をいただいて、出発です。いつも、前夜に翌日の行程を打ち合わせしてい

  ます。「へんろみち保存協力会編 四国遍路ひとり歩き同行二人」地図編は、爺

  ちゃんが持ち、孫はその日に必要なコピーを持ちます。

 

   今日の道路は歩道がしっかりついていて安全なので、昨日とは逆に、孫を先に

  立たせました。先ずは、15㌔ほど先の青年大師を目指します。6㌔程の先の椎名

  の喫茶店で声を掛けられ、アイスコーヒーをお接待していただきました。椎名や

  三津の当たりから前方に岬らしきものが何度も現れ、室戸岬はまだ?、まだ?と

  熱い期待を寄せながら裏切られた気持ち虚しく通り過ぎます。この繰り返し。爺

  ちゃんはこれに慣れましたが、先を行く孫はさぞ気がもめていることでしょう。

 

  室戸青年大師像

   高岡漁港より手前あと5㌔位の地点を過ぎたあたりから青年大師像が見えて来ま

  した。間もなく到着なので、合流して一緒に歩きました。歩きながら、青年時代

  の空海・弘法大師について語りました。歴史好きの孫の輝きます。爺ちゃんも話

  甲斐があります。

  「爺ちゃんは室戸に来るといつも、遠くから大師像の姿が見えてくると、勇気と

  力を貰って気力が湧くんだよ。若き日の弘法大師は、ここ室戸岬で厳しい修行に

  励み悟りを開いたとされていることは、色々な本や歴史書や小説で読んでるの

  で大体のことは知っているつもりだよ」「子供の頃には絵本で読んだし、司馬遼

  太郎さんの『空海の風景は』三度読んでるよ。19歳で書いた三教指帰はもちろん

  空海の著書も何冊か読んだよ。三教指帰のは具体的な場所は書いてないけど、御

  厨人窟や舎身ヶ嶽のことも書いてあるよ。」

   

   若き日の空海は、四国の地で猛烈な修行に励み悟りを開いたと言われているん

  だよ。弘法大師は超秀才で、都にある大学へ入ったんだけれど、お役人になる道

  に飽き足らず、生まれ故郷の四国の山や海で厳しい修業をして、その後遣唐使と

  して唐に渡ったことは、これまでに遍路の中で何度も話したよな。どこだか覚え

  ているか? 2つ挙げてごらん」「焼山寺と大龍寺にある舎身ヶ嶽でしょ?」「そ

  の通りだよ。やっぱりお前は歴史のことには関心が強いんだなあ~」「もう一つ

  有名なのはこの後に行く御厨人窟だよ。青年大師像はその手前にあるんだよ]

             
  


  「青年大師像は、爺ちゃんがいつ見ても、青年空海の力強い生き方がしっかりと

  刻み込まれていると感じてわくわくするんだ。このわくわく感が残っていたか

  ら、みちのく巡礼の活動に精を出せたんだと思うよ。各札所にある大師像よりむ

  しろ好きなんだ」

 

   今回はスケジュールの関係で見学を割愛しますが、像の台座の内部には、木片

  に残された空海の手形や、ステンドグラスの胎蔵界曼荼羅が安置されています。

  また、像の背後には、全長5.5mの金色の涅槃像が横たわっています。

 

  

   これらの像は「明星来影寺」境内にあります。

  伝説の地に建立された“青年大師像”を、一つのパワースポットとして

  室戸岬の観光や信仰の目玉に.なっています。

  

  

  シルクロードメモリー・心の目