[道連れになったお遍路さんたち]

  ⑴同宿のご夫婦遍路からのメール

 

  

   返信

   Oさん、心遣いのメール大変ありがとうございました。感激しながら拝読いた

  しました。

 

                        安楽寺の夜のお勤め

  あなたとお会いした二日間と翌日の最難関焼山寺超えが、孫にとっては心身共に

  とても辛い時であり、自分にとっても、孫にそれを克服させるための覚悟と苦心

  を求められる踏ん張りの3日間でした。爺孫共に貴重な体験が出来たと、天に感謝

  したい気持ちです。

   『3日間は絶対に帰さない』という基本姿勢は頑固に崩しませんでした。

  2日目の朝に、「最難関焼山寺を越えたらその時点でその後のことを孫の意思で決

  める」「部屋の鍵は孫が責任を持って管理する」「孫が二人分の洗濯をする」とい

  うことに決めました。孫にも、「これを克服すれば、大人になったら必ず役に立

  つ」ことを説得して、逃げ道を与えず、まさに飴と鞭でした。3日目の焼山寺を

  越えると、ほぼ全ての人が自信を持ち、その後の遍路を継続することを私は見聞

  きしていましたのである程度の確信は持っておりました。

  「3日目の最難関焼山寺越えを経験させ、克服させて自信を持たせ、自主的にそ

  の後の遍路を自分の意志継続させるところまで持ってゆく方針」で臨みました。

  とにかく3日間は厳しさと優しさを持って接することを心掛けました。焼山寺越

  えは、自信を持たせるため、孫を先に歩かせ、私は少し後方を歩きました。

  これから焼山寺越えが始まります          前を歩く孫に成長を感じました。

 

  通常の大人よりも早いほぼ5時間ちょっとで最難関を突破し、予想通りその後の

  遍路継続を孫自身で決め、順調に32番まで歩いて爺孫鎮魂遍路を終えました。

 

   室戸海岸の歩きの時に爺孫は次のような話をしながら歩きました。

  ――この遍路は最初、お父さんとお母さんに勧められた時にはお前はOKしなか

  ったから、お父さんから、遍路経験が多いお爺ちゃんから説得してくれるように

  頼まれたので乗り出したのさ。お爺ちゃんが色々遍路の説明したり、お前より小

  さい子たちもたくさん遍路していること、大震災で大勢の子供が死んで親が悲し

  んでいることなんかを話して説得したら、自分でも《良いことだからやってみ

  よ う》と思ったからOKしたんだろう? だけれど、ちょっとお爺ちゃんに乗せ

  られた感じもあるかな? 後から自分でよく考えてみると、大変そうだし不安も

  あるし、迷ってたんじゃないのか?

  

  

  孫「うん。確かに…。だけど言い出せなかったんだよ」。「やっぱりそうか。だ

  から間際になっても決断が出来なくて、出発直前になって、突然『僕、行かな~

  い!』と泣き出して、お母さんには「今になって何を言ってるの」と叱られるし、

  爺ちゃんにも「自分の言ったことに責任を持て!お前が了承したからわざわざ迎

     えに来てやったんだぞ!🤬」と叱られて、お母さんに押されるようにバスに乗せ

  られたんだよな」。

   爺ちゃんがバスからお母さんを見たら、目に涙が浮かんでたんだ。それを見た

  時、爺ちゃんは心で誓ったんだ。《必ず成長させて来るよ!》とな。 だから、

  厳しく当たろうと思っていたんだ。お前が1日目に泣いていたけど、なだめたり

  しないで《必ず12日間遍路させる》と、心を鬼にして強く思っていたんだ。

 

   孫が徐々に遍路意識高揚

   無理に連れて来られた格好だから、1日目に泣いていることは大目に見ていた

  んだよ。しかし2日目の朝も泣いていたから、覚悟させようと思ったんだ。

  それで「3日経ったらその後のことを相談す ると言っていたんだから、最低3日間

  は絶対帰らせないぞ! とにかく3日間は頑張れ!」と宣言したんだ。

  それでお前は《爺ちゃんには「泣き脅し」は 通じない》と分かったんだよな、

  きっと! おまけに7番十楽寺の納経所に行くと、札所のお姉さんから、

  「あら! 新聞に載っている子じゃない⁈」と声を掛けられたんだよなぁ。

 

   自分が載っている新聞を見せられて、コピーを貰ってからはあまり泣かなくな

  ったな。新聞を見て自分自身にプライド持てたし、津波で亡くなった子供たちに

  祈ってあげるために来たんだ、という責任を自覚したからだと思うな。そして、

  何度も何度も祈っている内に、人のために役立つことの充実感や責任感が生ま

  れて来たと、爺ちゃんは確信しているよ。そう見込んでいたから、「3日経った

  ら相談する」と言っていたんだ。

 

   本物になった転機は、3日目だな。焼山寺の遍路ころがしの克服だったな。相当

  な自信になったとうよ。だから、焼山寺以後に遍路を続けかどうかはお前

  の自由意思に任せたんだよ。自分の意思に任されたということは、自分に責任を

  持つことなんだ。

 

   人生の中には転機になる決断が3回ある、と言われているんだ。Rの場合、そ

  の内の一つは、間違いなく、焼山寺以後の遍路継続の決断だと思う。お前自身は

  どう思う? 孫「……

   まだ、小学生なんだから、今は分からなくても仕方ないよ。遍路が終わって、

  その後の人生の中で答えは自分自身にしろよ。爺ちゃんは訊かないよ。

  明日から3日間は、海辺の道をひたすら歩くんだ。

  自分がどのような人間になりたいのか、しっかり考えるん

 

 

シルクロードメモリー・心の目