前田そのこ作者


三島貴瑚/キナコ

親友美晴

恩人アンさん

元カレ新名主税


村中眞帆

52/愛

52の祖父/品城

52の母/琴美

愛の父方祖母/末長のおばちゃん

愛の父方叔母/




「三島さん風俗で働いてたんですか?」

三島貴瑚は自宅の改修工事にきていた村中眞帆に言われる

思わずキコは村中にビンタを喰らわせる

同僚のケンタと村中はキコに謝り、近所で噂になっているという


キコは引っ越してから、村に唯一あり自転車でも行ける何でも揃うセイコマートしか出かけていなかった

そこで村人が溜まり噂をしているらしい

さらにキコにはお腹に傷があり、町医者に見てもらっていたため

「ヤクザに切られたAV女優」


キコは苛立ちを隠さず、作業をしてる間外に出ることにした

キコの住む古い民家少し歩けば漁港が見える

堤防でMPプレイヤーを聴きながらアンさんを思い浮かべる

アンさんはもういない「なぜ一緒に連れて行ってくれなかったのか?」

キナコと呼ぶアンさんを思い出していたら雨が降ってきた


きこは近くの空き家の冊子で雨宿りをする

近くを中学生くらいの女の子が傘をささずキコを見てそのまま去っていった

そのあとすぐ、村中が傘を持って迎えにきた

そしてお詫びといい家の床の改修工事も引き受けると申し出た


キコは「芸者をやっていた祖母が住んでいたから、家のせいで風俗ってイメージがついたのかも」と伝えた


雨の日が続いていた

キコは携帯を解約して誰にも知らせずに大分に越してきた

1人になりたかった

ずっと家にこもっていたが、セイコマートに買い物に行くことにした


そこで、セイコマートで買っただろう服を来た夫人に「あんた人生を無駄にしてる。若いのに。ダメ人間」など罵倒された

仕事もしないで移住してきたどうしようもない若者に見えてる

店員が止めるのを見ながら店を出たキコは苦しかった

包丁で刺されたお腹が痛くなり、「アンさん助けて」と泣いた


すると先日の少女が座り込んでうずくまるキコに傘を指してくれた

少女は先日も着ていたボロボロのサーモンピンクのtシャツをきてサイズの合わない靴を履いていた

喋ることの出来ない様子だった

そして腕に見覚えのある色がついていた

キコはこのまま別れてはいけないと思い、彼女を強引に引き留めて家に連れて行く


彼女はずっと身体を強張らせていた

キコは雨で冷えた身体を温めようとお風呂に連れて行く

嫌がる彼女の服を脱がすと「やっぱり」体はアザだらけだった

さらに髪の毛がボサボサに伸びた男の子だった。

男の子はキコを振り払い家を出て行った


6時半になるラジオ体操をキコは見に行った

少年はいなかった

老人会会長を名乗る品城が話しかけてくる

見た目の歳の割にはテキパキした老人で、周りから慕われているようだった

定年までは中学校の校長をしていたらしい

そして「仕事を見つけなさい。ウロウロしてるのは子供の教育にもよくない」

と言われてキコは関わらないようにしようと思った


夕方、村中がアイスを差し入れに訪ねてきた

そして、自分の家に、キコの祖母の写真があったからと見せてくれた

キコは懐かしむと共に、村中に少年を知らないか?聞く


村中は「同級生の琴美のこどもかな」といった

彼女とは仲良いわけではないが高校まで一緒で、突然中退して居なくなり、10年くらいしたら子供を連れて戻ってきた

「彼は喋れなくて意思の疎通が出来ない障害なんだって会長が言ってた」

品城の孫だった

キコは品城は親が殴るのを止めずに見ないようにしているのだと感じた


それから村中はアイスを一緒に食べて今度食事でも行こうと誘われるが丁重に断った


キコはよく同じ夢を見ていた

母親が赤ん坊を抱いてミルクをあげている

そこへ父親も来て優しい光景

しかしキコが近づくと父親に殴られて目覚める


目が覚めて嫌になる

キコは祖母の家をもらうために母に会いに行った

久しぶりにあったが、変わらずな態度だった

もう一切会うことはないと言い別れた


アンさんに言われた「第二の人生では魂の番に出会う。それまでは僕が守ってあげる」

キコはアンさんを求めて声をあげて泣いていた


すると玄関が開く音がした

見に行くと少年だった

少年はキコが脱がせた服を取りに来た

キコは涙を拭いて「なんでもない。大丈夫」と言い選択した服を渡す

帰ろうとするがキコは、1人になりたくなくて引き止める「ちょっとでいいから一緒にいて」


それからキコは余りのカレーを少年に出して一緒に食べた

始めは手を出さなかったがお腹空いていたのだろう勢いよく食べ始めた

キコは鳥の声が好きだと村中に聞いていたため、タブレットで鳥を見せてあげる

すると少年は目を見開いて覗き込んできた

キコはタブレットの使い方を教えて見ていいよと渡す


それから少年は毎日キコの家を訪ねるようになった

一緒にご飯を食べてタブレットで動物や鳥の声を見ていた


ある日キコは名前を聞いていないと思い喋れない彼にペンとメモ帳を見せた

タブレットをいじっているからある程度字が読めると思っていたキコは、「貴胡」と読み仮名をふって見せた

「キナコって呼ばれてる」

そして名前を聞くと「むし」と書いた

相性なのか?と疑問に感じたが、彼は興味なさそうにタブレットをみた

家族に虫と呼ばれているのだろうかとキコは嫌な気持ちになる


ある時彼が、クジラの声を聞いていることに気がついた

クジラは広い海で仲間を呼ぶことができる。相手に求められるってすごいよね〜と話していたら、少年は不機嫌になり帰って行った


キコは運動不足解消に自転車を買い散歩していた

キコの母は祖母を嫌っていた「芸者なんて」

客に捨てられたから誰もいない田舎に越したと話していた


村中が通りかかり、美味しい店があると昼飯に誘われた

ついていくと「飯どころよし屋」

村中と話していると店員が注文を取りに来た

村中が「琴美?」と少年の母親が働いていた

見た目は年齢よりも老けていた

村中は琴美が去ったあと、「苦労したんだろうね。昔は学校でもお嬢様のように振る舞っていた」


キコは、小学校4年生の三者面談を思い出す

先生は母親に、制服にいつもアイロンがかかっていないことを指摘した

「お子さんに愛してるよっと伝える意思表示にもなります」

その場では、「お恥ずかしいことをすみません」と言った母だったが、自宅に帰ると殴られた

それだけでは怒りが収まらず、冬休みにはいるとご飯一食を出されて来客用のトイレに閉じ込められた

恥をかかせた罰と言われた

それが終わったのは新学期に入ってからで「もうしません。」とノートにたくさん書かされた

それからは余計なことを言われないように自分で毎日シワを伸ばして行った

先生は「良かったじゃん」と言った


村中が今度おすすめの洋菓子屋にいこうと言った

しかしキコは冬休みのクリスマス家族が食べ残したクリスマスケーキをゴミ箱から見つけて食べた

しかしそれは悪臭をはなっていた

それからキコは生クリームが食べられない


村中に「気になっていて、なかよくしたい」と言われる

誰ともつきあうきはなかったが、アイスを食べるくらいならいいと話す


あれから数日少年は、来なくなっていた

夜赤色の染めた服を来て少年が訪ねてきた

血ではなくケチャップだった

少年にお風呂に入るように進めて着替えを渡す


お風呂から出た少年にご飯を勧めるが首を降ったので村中が持ってきた大量のアイスを見せる

一緒にアイスを食べていると、少年は声を押し殺しながら涙を流していた

キコはMPプレイヤーを持ってきて見せる


MPプレイヤーにはキコが寒しい時に聞く音源が入っていた

「クジラの鳴き声。普通のクジラではなくて周波数が52ヘルツで泣く声。このクジラは仲間に声が届かないのだ。でも誰かに届くように鳴き続ける。」

キコはトイレで生活しているとき何度も殴られた

それでもきっとこんなに辛いのは私だけじゃない。どこかに声を聞いてくれる人がいると思うと楽だった


そんな話をしていたら少年は声をあげて泣いた

「あんたの52ヘルツの声を私が聞く。52って呼ぶね。私も昔泣いていた、それを聞いてくれた人に救われた」


5年前21歳の時アンさんと出会った

キコの義父は下半身が悪くなる病気にかかった

運送業の社長で順調だった会社も、病気を知ると社員や取引先はどんどんなくなっていった

キコの卒業式前日、義父は無理をしてトラックに乗り単独事故を起こした

キコは、就職が決まっており家を出る予定だった

母も珍しく「良かった」と言ってくれた

しかし、義父のつききりの介護要因として母が指名してきた

義父の態度は変わらず、うまく話せなくてイラつくと杖で殴られた

義父は痰が絡むと吸引しないといけなく目が離せない状態だった

母はたまに「あなたのおかげ」と言ってくれた

キコにはその言葉が救いになっていた

ある日たんが取れずに救急で運ばれた

一命は取り留めたが、先生たちがいる中で、母はキコを罵倒して

「わざとでしょ!あんたが病気になれば良かった!」

キコは感情がキレて、病院をでて途方にくれた


その時、「キコじゃん?」と明るい声で話しかけられる

同級生の美晴だった

美晴はキコを見て「いまから飲み行こう」、そして一緒にいた人たちに一緒に行く人〜と声をかける


強引に居酒屋に連れてこられたキコに

「職場の同僚アンさん」と紹介された

アンさんはキコだから「キナコって呼びね」


美晴は高校の同級生で同じように両親が再婚して高校をでたら家から出たいと仲良かった

いまは学習塾の事務員として働いているらしい


美晴に今までどうしていたかを話す

「喋り方が変わった。オドオドしている。大変だったんだね」

アンさんが「介護は想像以上に大変。それを1人で抱え込んでたんだね。頑張ったね」

「でも抜け出さないと」

実の娘じゃないのに育ててくれた恩があると言うと「恩で死ぬの?」


その日は美晴の家に泊めてもらった

久しぶりにゆっくりと寝た

そして様子がおかしい子がいるとアンさんが気づいてくれたと知る

その後アンさんが美晴の家にきて介護施設や支援などのパンプレットを見せてくる

「キナコは家を出てちゃんとした仕事につけるようにしよう」


キコはアンさんと家に帰った

アンさんは母親に「キコさんを助けに来ました。彼女はもう介護をしません」そういい支援の情報を伝える

しかし母は「この子が今まで通りやればいいから関係ない!」

アンさんは「この子が死ねばいい。病気になれば良かったんでしょ?」

あの時は気が動転していた、お義父さんだって感謝してると言い訳をいう母に

「うるさい口閉じろよ。おばさん」


そこへ弟がゲーム機片手にやってきた

そして「施設いいと思う。お義父さんの呼吸器うるさいし、友達を呼べないのも嫌だった」


アンさんにほどかされて、荷物をまとめに部屋へ入り戻ると母は居なくなっていた

勝手にしてと出て行ったらしい

アンさんと美晴が待つ元に戻ろうとすると感情が込み上げてきた

「母が好きだった。愛されたかった」

アンさんは背中を優しく支えてくれた

「第二の人生では魂の番に出会える。それまでは僕が守る」


キコは隣で起きた52の物音で起きた

朝食を一緒に食べると、真剣に向き合う

メモを渡して、喋れない原因はわからない。声を出そうとすると苦しい

暴力をしているのはハッキリとは言わないが母親。おじいちゃんは虫だから僕を見ない

父方の親、末長のおばあちゃんちにいた頃は学校へ行っていた

そして帰りたくない。ひとりにしないでと書かれる

キコは「ひとりにしないよ」と伝えるが、未成年だし誘拐されたと騒がれても52が辛くなる

そう考えて母親に会いに行くことにした


定食屋を訪ねて琴美に時間空いた時に話したいと伝える

琴美は休憩に入ると声をかけてきた

「村中くんとは付き合ってないよ」

勘違いしたようで「息子さんのことです。」と言うとタバコを吸い態度が変わった

「あんたのとこにいるの?迷惑だったら追い出していい。ドブ猫を拾ってしまったと思ってるんでしょ。あいつにせいで私の人生だいなしだから」

キコは泣きそうになるのを堪えて、「私が面倒見ます。三島です。あなたのお父さんは自宅知ってると思うので!」

琴美は「いいわよ!後で返すとか言わないでよね!」


キコが家に帰ると52が待っていた

しかし母の話をしても反応は変わらなかった

始めから期待していない。諦めている感じだった


「52ヘルツの話をして」とメモを見せてきた

キコはMPプレイヤーを見て

「これは美音子ちゃんに貰ったの」


美音子ちゃんは美晴の友人でルームシャアする相手を探していた

紹介してもらい一緒に住むようになったが、美音子ちゃんは条件として、他の人を家に連れて来ない。外泊禁止と言われた

実家をでて辛い日々の中、夜はいつも泣いていた

美音子ちゃんはビールとMPプレイヤーを渡してきた

眠れない時に聞くとよく眠れるようになると

キコはクジラの声で落ち着き、すると気持ちも明るくなり仕事も決まった

「私の声を聞いてくれた。私も聞ければよかった」

キコは52に「あなたの声聞くよ」


末長のおばちゃんのところに行こう

52も頷き「ちほちゃんに会いたい」と書いた

場所は52も正確な住所がわからず北九州の町だとわかる

その時勢いよく玄関を叩く音が聞こえた

52は怯えて隠れてキコが恐る恐る戸を開ける


美晴だった

「心配させないで!」美晴は抱きついてきた

どこかで死んでいると思ったと言う

そのあとはズカズカ家の中を見て「私が納得できるまであんたと暮らす」と言われた

そして52に気づいた

52に「大丈夫。彼女は大切な友達だから」

そして美晴に52のことを話すと「警察に行ったほうがいい」

庭で土いじりしていた52は手が止まった

52に「大丈夫」と伝えて美晴に北九州に行く話をする

すると美晴は「5日間だけ黙ってる。アンさんがあんたを助けた日数」


早速北九州市にきた3人

ホテルを一部屋とって、とりあえず今日は休む

美晴と2人でコンビニに買い出しをしに行った途中で「なんで新名さんを刺そうとしたの?」「前も裏切られたからって行ったじゃん」「本当の理由は?」

キコは話を誤魔化して52の待つホテルで、久しぶりにお酒をたくさん飲んだ


翌日、朝から町を歩く

適当に歩くあとから52がついてくる

飲屋街を抜けて裏路地に入ると52が前に出た

そして末長の表札がある誰も住んでいなそうな家にたどり着いた

声をかけるが返答はない

そこへ「いっちゃんかい?」とおばちゃんが声をかけてくる

そしてキコたちを見ると「どうせあの女が捨てたんやろ!だから警察に突き出せっていったんだ!」と剣幕で言ってくる

話を聞かせてくださいと頼むと近所の自宅に入れてくれた

そして一昨年52の叔母ちほちゃんが事故で亡くなったと知らされる

その前の年におばあちゃんもなくなっている


藤江さんから話を聞く

52の父親は、どうしようもない人間である日高校生を妊娠させ琴美を連れてきた

しかし、父親は浮気をして出て行った

琴美は52を産んでからしばらくは、ちほと一緒にパートをして働いていたが、父が出て行ってからは風俗で働きだした

そして人が変わり養育費とお金だけ置いていっちゃんの世話はお婆ちゃんとちほちゃんがしていた


言葉を喋るのが遅かったいっちゃんが言葉を初めて発した時、「ばあば」だったことを怒り、いっちゃんの舌にタバコの火を押し付けた

琴美はさすがにヤバいと思ったのかそれから帰ってこなくなった

しかしそのあといっちゃんは喋らなくなった


その後おばあちゃんが死に、ちほちゃんは1人でもいっちゃんを育てると頑張ろうとしていたら、琴美がきて児童手当を当てにいっちゃんを連れて行った

ちほちゃんはいっちゃんを探している途中で事故に遭ってなくなってしまった


藤江さんから1枚の写真を見せてもらう

そこには初老の微笑む女性と20代の女性、口を大きく開けて笑う男の子が映っていた

とても楽しいそうな家族写真だった

裏には携帯番号と末永千穂、愛と書かれていた

その写真を配っていっちゃんを一生懸命探していたと言う


52は今ちほさんの死を一生懸命に受け止めてる

そして「愛」と言う字を聞くと「いとし」52の名前だと言う

産まれたときには愛を持ってつけたのにそれを捨ててしまうなんてと苦しくなる


藤江さんは「私が引き取れたらいいのに、もう歳だからごめんね」と52を抱きしめて別れた

帰り道は誰も喋らずホテルに戻る

52はイヤホンの動作をしたのでMPプレイヤーを渡す


美晴とお酒を飲んでいると「キコにとってあんさんはいい人だった?新名さんはいい人だったんでしょ?魂の番人だって」

「アンさん死んだの知ってる?」

キコはアンさんが死んだのは間違えなく私のせいだと確信していた

そして「私が発見した」と言う


キコは生活も落ち着いて美晴とアンさんとは定期的に飲んで近況報告をしあった

キコはルームシェアが解消されるので一人暮らしを始めた

美晴は年下の美容師と司くんと付き合い始め紹介された

飲んだ帰り道キコと美晴が2人になると「アンさんと付き合わないの?」と言われた

しかしキコにとっては「アンさんはアンパンマンで恋愛感情はない。アンさんだってそんな感情はないはず」


キコの職場は、ファミリー経営で会長祖父、社長父の息子専務 新名主税が上司だった

ある日の昼食で、同僚の男性同士が喧嘩になり、近くにいた新名が止めるが、誤ってキコに椅子が当たってしまう

目が覚めると病院で美晴が見守っていた

頭を切って数針抜ったらしい。緊急連絡先が美晴で駆けつけてくれていた


美晴と話したあと、後ろから新名さんが顔お出して謝ってきた

新名さんは悪くないと話してしばらく仕事を休む

夜には退院したアパートにアンさんも心配してきてくれた


仕事復帰すると、椅子を投げた当人たちが謝ってきた

休暇中、新名さんに彼らと仕事しづらければ飛ばすと言われたが、そこまでしなくていいと言った

そして彼らは昼を奢るといい仲違いすることはなかった


それから新名さんは、キコを見かけるたびに声をかけてきた

そしてある日食事に誘われた

職場の同僚からは「凄いじゃん」と言われた

それからも定期的に食事に行き

大口の取引が決まった日に、料亭に連れて行かれた

そこでは綺麗な女将に挨拶された

そしてその晩、彼に任せるまま体を合わせた

主税は凄くキコを求めてくれた

「キコは何も知らないから色々俺が教えられる」


主税に友達を紹介して欲しいと頼まれた

いよいよその時がきたとキコは嬉しかった

しかしアンさんをみると「女かと思ってたよ」そしてお酒が入ってくるとアンさんに絡み始める

「俺が魂の番人になったよ」

アンさんも不機嫌で「そうですか。そうじゃないかもしれませんけど」


解散して家に帰ると主税にアンさんとは会わないで欲しいと言われる

「あいつは入ってきた時から俺を睨んでいた。気持ちが悪い」

キコは男だと言わなかった自分が悪いと感じていた

主税はタクシーを呼んで帰った

主税はどんなに遅くても泊まっては行かない


その後アンさんからキコを避けるようになった

電話にも出ない

美晴と匠くんと3人で飲んでいると

匠くんが「アンさんはキコちゃんが好きだよ」

と言い出した

キコはそんなわけない否定したが

匠くんは「アンさんは一線引いて待ってたんだと思う」

それに対して美晴が「キコは悪くないよ。アンさんが何も行動しなかっただけ」


それからお酒を飲んだ晩にアンさんから電話が来た

「キナコは新名って男に泣かされるかもしれないけど、幸せなのかな」

酔っ払っていたキコは「新名さんはいい人だよ。私を大きい世界に連れて行ってくれる。みんなで仲良くまた会えるといいな」

「そういう日がくればいいね」


それからしばらくして美晴からアンさんが仕事を辞めたと聞かされる

そして住んでいたマンションは、主税と食事した次の日に解約されていた


アンさんの番号を見つめ携帯を見ていると、後ろから主税に携帯を取られて番号を消された

「あいつのことは忘れろ。出会う順番が違かっただけで俺が救い出した」

主税は強く抱きしめてくれる


ある日新名さんが婚約していると噂を聞く

父で社長の知り合い。同棲して5年以上立つらしい。三島さんに食事誘ったのは浮気目的だった

主税から「社長にバレると面倒だから社内では秘密にして欲しい」と言われ同僚には、1度きりと言っていた

会長の浮気相手は料亭の女将で家族の血だねと言う


そして夜、主税が家にきた

「話は事実だがキコと別れたくない」

このままは間違ってるとわかっていたが、キコは私も一緒にいたいと伝える

そしてアパートをでて主税が用意してくれた部屋に住む

キコはまるでペットのようになっていた


美晴と飲んで帰ると部屋に主税が待っていた

「父親に息子が浮気していると手紙が届いた」

送り主はアンさんだった

主税は嫉妬で馬鹿なことをしているといい、キコにしばらく会社を休んで家から出るなと言う


52のくしゃみで美晴と会話が止まった

そしてホテルを出て、キコは観覧車に連れて行く

3人で乗り美晴は写真をたくさん撮った

その後居酒屋に行って盛り上がる

52は慣れない雰囲気に戸惑いながらもご飯を食べる

匠くんから伝言「最低!でも友達は変わらないよ」と美晴が伝えてくれた

お腹がいっぱいになってホテルに戻ると52はすぐに寝た


そして話の続きをする

アンさんは私を愛してくれていた。だから主税のことを調べて忠告した

けど思う結果にならなくて家族、会社、婚約者に手紙を送った

主税の父は別れろと言ったが、主税は手放さなかった

美晴は「アンさんはそこまでする前になんで思いを伝えなかったんだろう」と少し苛立っていた


主税も少し異常になっていた

そしてアンさんの身辺調査を探偵に依頼していた

そしたらアンさんがトランスジェンダーと判明した

実家は長崎で母子家庭。

主税は実家に電話して「お宅の息子さん?娘さん?ストーカー行為をして困っている。どうにかしてほしい」

主税は婚約解消されて会社にもバラされたことで親から下請け工場に飛ばされた

それでもキコと別れないのは愛情より、アンさんへの憎しみだった


キコは完全に家に監禁状態で友達と会いたいといったら殴られた

「立場分かってるのか?」

もう別れなくてはと感じた

アンさんはわかっていたのだろう、なのに私は簡単な方に行ってしまった

アンさんに会いたくて、こっそり調査情報を見るとアパートの住所があった

キコは家を抜け出してアパートを訪ねた


ドアの入り口でアンさんの母親に会った

キコは友人といい「明日娘と長崎に帰るんです」と合鍵でドアを開けた

母親は部屋に入りお風呂場で叫んだ

赤く染まった湯船にアンさんが遣って死んでいた

救急を読んでバタバタしてる中でも母親は

出来れば女性の方にと裸を見せないようにタオルで隠した

それから葬儀が親近者で行われて、キコは心酔していた母親をてずだった

母親は最後にアンさんに化粧をした


それからアンさんの遺書を見せてもらう

一通は母親宛 こんな体でごめんなさい。でもあなたの子で生まれて良かった

もう1通は主税宛

どうか彼女と別れてください

それか彼女だけを見てあげてください。

どちらを選んでも僕は恨みません。彼女には愛情を与えてくれる人が必要です


家に帰ると主税に殴られた

「どこ行ってたんだ!あいつのとこか」

「アンさんは自殺したよ」

そして遺書を渡すと主税は中身も見ずにコンロで燃やす

懸命に止めるが「すっきりした」と笑った

キコはもう殺すしかないと思い、包丁を握って殺してやると叫んだ

揉み合ううちに主税に包丁が渡ってキコが刺された

美晴は「でも新名さんはかすり傷一つないよ」

「私が殺したかったのは私だもん」

元々刃先はキコに向けていた


言い争う声を聞いていた隣人が警察を呼んでいて、刺さったのと同時に部屋に入ってきた


主税は自分が刺したといって警察に捕まった

それから父親が大金を手に遠くの主税に見つからないところに越してほしいと頼んできた


いまだにアンさんがいないことが信じられない

キコはアンさんの声を聞けなかった

美晴はキコの罪は一緒にかぶる。半分私が背負うからと抱き合う


翌日大分に帰るとポストに村中からメッセージが入っていた

「至急連絡ください」

キコは美晴にスマホを借りて電話すると「品城さんが孫が誘拐されたと騒いでいる」と言った

自宅に読んで52のことを話すと、琴美の母親がいるとわかり村中のおばあちゃんに話を聞きに行く


村中のおばあちゃんは口が悪く、品城さんに前に老人会会長だった

52を見るなり、可哀想に、早く品城さんに連絡してあげろ。と品城さんの言葉を信じていた


キコは真実を話した「虐待されています」

そして晶子さん、琴美の母の話を聞く

琴美は歳をとってから出来た子供なので会長はとっても可愛がり何でもワガママを聞いていた

晶子さんは空ではいけないと気がつき、琴美を指導すると会長は昌子さんを殴るようになった

そして晶子さんは出て行った


それから琴美は男と駆け落ちして出て行った

周りにはそんなことは言えず知っているのは老人会メンバーだけだった


おばあちゃんは昌子さんといまだに年賀状のやり取りをしていた

「別府に住んでる。まほ連れっててあげなさい」


そこへ血相を抱えた品城が乗り込んできた

キコをみて「孫を返せ!」

おばあちゃんが諭すと「琴美が家中のお金を持ってこいつを探すと出て行った。男と」

孫が戻れば琴美も戻るはずだ!


キコは「虐待しに戻るんですか?この子に虐待されるために戻れと言うんですか?」

怯える52に「大丈夫」と伝える

言葉を失った品城はそれでもブツブツ文句を言っていた

おばあちゃんは「晶子さんのとこに行くんだ」と品城に伝えると「わかった」と引き下がった

会長はは晶子に惚れていたからとおばあちゃんは言う


その日の夜キコは眠りにつけずクジラの声を聞いていた

そしてアンさんの夢を見た。アンさんを追いかけて「アンさん」と目が覚めた

隣にいるはずの52の姿が見えず不安に駆られる


52を探して海まできたら堤防に立っていた

「死なないで!私と一緒に暮らそう」

その声で52が立ち止まりこちらを見ていた

「52が魂の番を見つけるまで私が守るから!私と帰ろう!イツキ」


するとイツキは「キナコ!」と駆け寄り

「キナコキナコ」とたきしめた

その時、海から水しぶきが起きてクジラの尻尾が見えた


イツキと一緒に住むと言ったが、せっかく晶子さんを紹介してもらったんだから支えになってくれるかもと晶子さんに会いに行った

晶子さんは再婚して旦那さんと子供食堂をけいえいしていた

「私にも責任があるからイツキを引き取って育てます」

しかしキコは事情を話した

晶子さんに考えが甘いと怒られた

小学校のこと病気になった時のこと親権が取れなければ何もイツキに出来ない

でも親族であればできる

晶子さんはしっかりしていた


イツキがクビを降って嫌がると晶子さんの旦那さんが優しく話してくれた

「ひとつの案だけど、一旦は昌子が後見人になる。そのあとイツキくんが15歳。まだ気持ちが2人とも変わってなければ二年後に後見人を指名するって方法もある」

「それがいいと思う!」美晴はすぐ答えた

美晴からも無理だと言われていた


2年に間にキコもイツキを受け入れられる環境を整えよう!

そして村中も仕事を紹介するよと言ってくれる


イツキは「もう会えないの?」と淋しそうにいうと昌子さんが「今は夏休みだ。その間キコさんといればいい」


キコとイツキは夏休み色んなところに出かけた

晶子さんの家も何回か訪ねた

そして最終日、村中の家のBBQに呼ばれた

イツキは「キナコ、美晴」と少しずつ喋るようになっていた


そこにいた近所の人が「クジラは帰ったみたいだね」と話す

そして村中のおばあちゃんが「キヨコの孫だったんだね」

きよこがここに来たのは愛した男とクジラを見ようと約束したからだった

しかしクジラは何十年に一回しか来ない

私だって見たことない

死んでからくるなんでね〜愛した男が寄り道してきたんだろうか。

そんな話を聞く


そこへ「琴美を返せ!」と

ボロボロのパジャマを着て杖をつく品城さんがキコに向かってきた

杖を振り回して止めに入った村中を殴る

そしてキコに向かってきた

キコは義父の杖を思い出して固まっていた

「アンさん」と叫ぶとイツキが品城を突き飛ばした

品城はみんなに抑えられた

キコを見てイツキは「僕強くなる」


そのあとは警察がきてバーベキューどころではなくなり解散した

品城は連行されていった


キコは最後の夜にイツキに伝えた

私には声を聞けなかった人がいる

だから贖罪のつもりでイツキを助けた

初めてあった日、私に気づいてくれてありがとう


「キナコ、声聞いてくれた」

「きなこに会えてよかった」


するとふと声が聞こえた、2人は耳を澄ませる

「52ヘルツ」