著者 浅倉秋成



波田野祥吾

嶌衣織 清純派

九賀蒼太 好青年

袴田亮 189cm体育会系

矢代つばさ 美人

森久保公彦 秀才メガネくん



あの事件をもう一度真摯に向き合いたかった。

調査をここにまとめる。

今更、犯人を追及はしない。

真実が知りたかった。僕自身のために。

波田野祥吾



就職試験

「最終選考はグループディスカッションです。

テーマは弊社が実際抱えてる内容で当日発表します。グループ次第では全員が合格もあります。」

人事部長の鴻上さんが言う

スピラリンクスは創業4年だが2009年リリースのSNSで上場していた

「本番は1ヶ月後の4/29」


オフィスを出ると打ち合わせをしようとそのままファミレスへ向かう

その中に1人顔見知りがいた

嶌衣織さん

2時面接で一緒になっていた。

嶌さんは、小柄な色白で清楚な女性に見えた


最終選考に残ったのは6人

ファミレスの席につき自己紹介をしていく

九賀蒼太

大学名と学部だけ伝える

袴田亮

高校時代野球部のキャプテンを今はボランディアサークルの代表

矢代つばさ

ファミレスのバイトをしており国際問題に興味があり海外旅行が好き

嶌衣織

バイト先はプロント

波田野祥吾

街を歩くサークリに入ってる

森久保公彦

大学名と学部だけ伝える


九賀が率先して話を進める

それぞれがスピラの情報を集めて各々持ち寄る

矢代の提案で日時を決める

週2回火曜、土曜のPM5に集まることが決まった

九賀は「スピラは事前にグループディスカッションと教えてくれたフェアだ」と意気込む


最初の集まりで、1番資料を集めてきたのは森久保だった

それぞれが資料を読む時間を設けて議題を話し合う

とてもスムーズ話し合いが行われた

3回目になると意見が対立する場面が出てきた

ピリついたムードの中

袴田くんが「突然ですが、袴田賞を発表します」

そしてそれぞれに賞といいラッピングされたうまい棒を渡す

そして雰囲気がやわらくなり意見がまとまる


トイレにたった波田野の後に森久保がきて

「こんな洗礼されたグループ初めてだ」

波田野も最高のチームを形成しつつあると感じていた


4回目、皆が帰った後のレンタル会議室で波田野は嶌と2人大学の勉強をしていた

嶌が外を見て涙を流す

就活の辛さからだった

気持ちがわかる波田野はそっと励まし

いつも嶌が飲んでいるジャスミンティーを渡す


九賀くんの提案で懇親会をやることになった

お店は矢代さんが見つけてくれた

面接で遅れると言う九賀くん以外先にお酒を飲み始める

下戸なので飲まないと言っていた嶌さんの前には大きなデキャンタがやってくる

「無茶はいけない。僕のせいなんだから」という森久保をみんな笑う

「今日だけは豪酒」と矢代が嶌を見る

嶌さんもVサインを送り皆が食事よりお酒を楽しみ酔っ払う

波田野は笑い上戸で、ずっと笑っていた


嶌にお酒を煽るコールの中、九賀が遅れてきた

九賀は飲めない嶌を心配するが「今日は飲まないといけない日だから」と矢代が伝える

九賀はコーラを頼み、今日はまだ帰って課題をやらないといけないと言った

多少突っかかったが、九賀が申し訳なさそうにしていたので笑っておわった

九賀は森久保に本を借りていたため返すのは20日でいいかと約束していた

波田野はそれを聞き、会うならミーティングの日を20日にしたらどうかと提案したが、波田野以外は予定があった

盛り上がっている中で九賀くんに

「波田野、ちょっといいか」とトイレの方へ施される

それをみた袴田くんが「連れションに付き合う。本物の絆だ」


同じ方向に帰る矢代さんと嶌さんと3人で電車を待つ

嶌さんがトイレに行っている間に矢代さんに

「衣織ちゃんのこと好きでしょ」と言われる

嶌さんが戻ってきて電車がつくと

優先席しか空いていなかった

そこへ矢代さんは座り、2人も座りなよと施す

2人は座らなかったが矢代さんは、自分のエルメスのバックを席に置いた


3人同時に着信音がなった

グループメールだと思い開くと

スピラからのディスカッション内容変更通知だった

「震災の影響から内定者が1人になる。誰が相応しいかを決める」

波田野と嶌は「参ったね」

矢代は不機嫌な状態で「ここだから」と電車を降りた


インタビュー2019年 鴻上 本人事部長

君を採用してよかったと軽く挨拶

8年前の事件

当時を振り返り色々な事件があったがあれは初めてだと言う

ディスカッションの最後で犯人がわかってよかった。

犯人の正体は意外だった



最終選考当日

小規模な会議室に通された

円形のテーブルに椅子が囲むように6脚

会議室の四方に録画用のカメラと、上部に隣室でモニタリングするための監視カメラが置かれている

鴻上さんは説明をする

2時間半のディスカッション

誰が1番スプラ入社に相応しいか決める

途中退出不可。退出すれば不採用

ディスカッション終了時、選出できなければ全員不採用


全員が事前のトイレへ立つ

波田野の前に席をたった矢代さんが入口で身を屈め何かを探すそぶりをした

「何か落とした?」

「なんでもない」

全員がトイレを済ませて席に着くと鴻上さんが

「では2時間半後に」と退出する


最初に口を開いたのは九賀くん

「さあ、どうしようか」

波田野は最初の人が不利にならないように30分ごとに投票することを提案する

九賀くんは「フェアだ」と頷き皆賛成する

九賀くんは30分ごとにアラームをセットした


それぞれが自分以外に投票してその理由を伝えていく

1回目投票

九賀9票、袴田2票、波田野1票、嶌1票、森久保0票、矢代0票


「ところであれ誰かの忘れ物かな?」

嶌さんが指を刺すと入口にA4封筒が立てかけられていた

九賀くんがそれを拾って封が開いていたため中身を覗く

九賀くんは中身を見て取り出すと

「波田野祥吾さん用」「袴田亮さん用」とされぞれの名前が書かれた封筒が入っていた

グループディスカッション用にスピラから用意された物だと思いそれぞれに九賀くんは渡す

袴田くん、九賀くんは封を切ると

九賀くんが「え?」


A4用紙のコピー紙と2枚の画像

画像は高校野球部の集合写真に二つの赤い丸が付いていた

1人は胸に佐藤、もう1人は袴田くん

新聞記事の画像で野球部いじめによる自殺

コピー紙にはメッセージが書かれていた

「袴田亮は人殺し。自殺に追い込んだ」

※なお九賀の写真は森久保の封筒に入っている


袴田くんは怒りに震えながら汗をかいていた

矢代さんは「事実なの?」

袴田くんは「矢代が用意したのか?デマにきまってる」と否定したが「佐藤のクズ」と怒り任せに吐き捨てる

矢代さんはその様子を見て「いじめてクズ呼ばわりして信じられない!」と言うと

袴田くんはテーブルを思い切り叩いた

しばらくして「悪いカッとなった」と言う


九賀くんが「デマなんだよな」と再度確認して得体もしれない封筒を開けてしまったことを謝る

嶌さんは「封筒はスプラが用意した物ではないよね」と言い

皆がこの中に陥れようとしている人物がいるとお互いが疑いの目で見る



インタビュー 袴田亮

袴田くんと公園で会う

新卒からずっと物流4懃交代制の仕事をしている

人混みが嫌いで近くの団地のガキが騒いでると土曜だと思う

当時を振り返って、嘘ついていたと言う

ボランティアサークルは旅行中にちょっと地元の人の手伝いをしてそれに手を加えて話していた

野球部の話は本当。

あんな根性ないとは思わなかった。あのクズ

遺書に自分の名前が書いてあったから全部自分のせいにされた

グループディスカッション後

犯人はmixiで袴田亮の悪い噂を教えてくれたら5万円って言うのが出回っていたらしい

友達の友達が漏らしたんだと思うと言う

犯人は病気で亡くなった事を知らせる

その時ボール遊びをしていた男の子たちに向かって「いい加減にしろ!ガキども。オイ」と言って子供たちを捕まえる



九賀くんは「デマが入っている。封は開けずに処分しよう」

袴田は「犯人を放っておくのか」と言うとまた矢代が「見つけて自殺に追い込む?」

そんな中2回目の投票アラームが鳴る


2回目投票

九賀3、波田野1、矢代1、嶌1、袴田0、森久保0


袴田に入れていた、矢代さんと森久保さんが変えた

袴田は犯人を見つけようと言う中で、森久保くんが封筒の使い道を考え始めた

自分が0票の中で票を得るには封筒を開けるべきでは?と

しかしきっと自分の汚点もどこかに入っている

波田野は選考の枠外から持ち込まれたものを活用すべきじゃないと反対する

しかし森久保くんは内定を譲ってくれるなら空けないと言い誰も止められなかった


波田野は皆んなの様子を見ると一様に戸惑っていた

しかし矢代さんは笑っていた

その時グループディスカッション前のおかしな行動を思い出す


森久保くんが封を開けて出す

3枚の写真が印刷

1枚は九賀くんと女性のツーショット

2枚目は大学講堂の写真 赤く丸がつき6人くらい固まった中の九賀くんと遠くで1人で座る女性

3枚目の写真は九賀くんと女性の名前が入った人工中絶同意書

「九賀蒼太は人手なし。恋人を妊娠、中絶させ一方的に別れた」

森久保の写真は嶌の封筒に入ってる



九賀くんは綺麗にセットされていた髪の毛を乱暴に掻き上げて「クソが」と吐き捨てる



インタビュー九賀、ホテルラウンジ

今は友達が起業したIT事業で働いている

犯人の気持ちはわかる。就活で気持ちがおかしくなっていたと思う

妊娠中絶は事実

彼女には恨まれていたから犯人に情報を渡したのは彼女だと思う

当時はお酒が飲めないのに飲めるフリをしていた

車で来たとか誤魔化して上手く交わしていた

小さな見栄だった

地下に停めたと言う車で送ってもらうことに

地下へ行くとエレベーター前にある障害者用エリアに停めたある車に誘導される

「1番近くていいかなと思ったんだけど」



アラームが鳴った

「デマだよね」嶌さんがそう言い波田野も続く

袴田くんは「矢代なんだろ?」

また口論が始まろうとする

波田野は「全部鴻上さんたちが見ている。お互いのために品性が欠けた発言は慎むべきだ」と怒る

九賀くんは「投票しよう」


3回目

波田野2、嶌2、九賀1、森久保1、袴田0、矢代0

九賀くんの票は嶌さんが入れた


袴田くんが封を破る音がした

「九賀が好きなフェアだろ」

間違ってると訴える波田野だったが、袴田くんはみんなの見せていた顔が全てじゃなかった。


2枚の写真が出てくる

矢代さんの派手な化粧に綺麗なドレスを着た写真

と雑居ビルに入っていく写真

「矢代は商売女。キャバクラで働いている」

袴田亮の写真は九賀の封筒に入ってる


矢代さんはファミレスは嘘でキャバクラで働いてるのは事実とその場で言った

そして「封筒を置けたのは1人だけ」とも確信をつく

会議が始まるまで扉は開いていた

その前に扉の内側に封筒は置かれて扉が閉じたことで現れた

すると1番に会議室に到着した人物

森久保くんにみんなが注目する

そして録画用のカメラをチェックすると森久保くんが鞄から出した封筒を扉に置いていた



インタビュー矢代 タイ料理屋

当時、自分だけ違うイメージがあった

当然メールが来た時、自分は落ちたと思った

友人からSNSで悪い噂を聞いてる人がいる事を知った

敵がいっぱいいるからチックったやつはいっぱいいると思う

犯人は、そんな人に見えなかったけど自分で認めたし会議で犯人に脅されて嘘ついた

当日は生理で1票も入らなくて機嫌悪かった

もう諦めていた

今は起業してやりたい事をやっている

お金貯まったら海外に行ってる

今も男に貰ったと言うエルメスのバックをもちあるいている



森久保くんは矢継ぎ早に言い訳を言おうとしいているが言葉にならない

そして袴田くんが「これ以上失望させんなよ」と言って黙った

そして投票の時間

4回目

波田野2、嶌2、九賀1、矢代1、袴田0、森久保0

矢代には袴田くんが入れた


「封筒はどうする?」と袴田くんの言葉に矢代が「空けてもいいのかも」「フェアだ」と話の流れが開ける方に行く

波田野は、自分はやましいことはないと思いつつ嶌さんのことが気がかりだった

嶌さんは初めから封筒は処分すべきと言ってきた

波田野は「封筒は処分してほしい。自分が怖いのは事実。それとともに、自分がやられたから他もやられるべきと言う議論が問題。フェアになら票をもう一度リセットしたらいい。自分の思う悪事を白状する」と真摯に訴える

そして皆が冷静になり「わかった」

そして嶌さんもティッシュで目を拭う

そしてアラームがなった

波田野5、嶌1、他0


袴田くんは封筒の中身を集めて元に戻そうと集める

すると九賀くんが手を止める

3枚の写真を見て「森久保、写真を手に入れた経緯を説明してくれ」

森久保くんは「自宅の郵便受けに届いていた。

メモには当日のディスカッションで使用します。誰にも気づかれないように持ち込んでください。」

九賀くんは自分の写真と矢代の写真を見て

「同じ位置にノイズと黒い点が入っている」

九賀くんの写真は内容から4/20 午後4時頃の写真だから「森久保には撮れない」

九賀と森久保が会う約束していた5時前に森久保は面接をしていたはずだ

証明するために当日の面接企業にみんなの前で電話をする

上手く理由をつけて自分のきた時間を聞き出しアリバイが立証された


波田野は犯人探しよりも議論を元に戻したかったが、袴田が「当日アリバイがない人が犯人では?」

しかし九賀くんと森久保くん以外は皆4時頃は空白だった

嶌は「犯人は自分の封筒も用意している」

そして九賀くんが

一つは重たいものだけど説明がつき嘘だとわかるもの

もう一つは小さな罪


森久保くんが「俺のを空けても構わない」

そして嶌さんの手元にある封を切る


2枚の写真が印刷されていた

一枚は「高機能ベストオーナー説明会」と書かれた看板の横で森久保くんがたっていた

2枚目は大学内で年配男性が森久保くんに詰め寄っている写真

「森久保は詐欺師。高齢者を対象にしてオーナー詐欺をしている」

嶌の写真は波田野の封筒にある


森久保は衝撃を受けながらも、これも20日の写真だ。2時頃」

それぞれが自分の手帳を再度確認した

波田野は20日は一日中空白だった

波田野は思っていた。犯人を炙り出すには、自分と同じような人間がいてはならない

一人一人とアリバイがわかってくる

残るは袴田くんと嶌さん、袴田くんが面接だったといい波田野は犯人に絶望する

そこで嶌さんが「授業だった」と言った

波田野は嶌さんは犯人ではなかった。安心したが、全員にアリバイがあったと考察をしていると全員の視線が波田野に集まっていた

「波田野は?20日の14時頃の予定」

波田野は何も言い返すことが出来なかった

自分が犯人ではないため客観的に見ていた波田野は焦る

しかし焦りながら喋る波田野の声は皆んなに届かない

そして「矢代、封筒を開けてくれ」と袴田くんがいう



インタビュー森久保 定食屋

当時を振り返り

「騙される方が悪い。楽してお金を手にするなんて甘い。

封筒の中身は事実だと言った

企業に気に入られるために嘘つく、企業だってそうだ

それが就活だった

犯人は波田野くんじゃない

後から考えたら自分に惚れていた人間に封筒を持たせることで告発を回避できたんじゃないか

「ねえ、嶌さん君こそが犯人だろ」



矢代さんが取り出した封筒は

1枚の写真

大学1年の花見の写真

「波田野祥吾は犯罪者。未成年飲酒していた」


犯罪だがなんて軽い罪なんだと波田野は思った

そしてピントのズレたキリンビールの写真を見て犯人の正体がわかった

犯人を指差してやろうと思ったが、どう足掻いても無理だった

犯人は全て計算作だったのだろう

ふと矢代さんが「この写真私も20日だ」と言ったがもうどうでもいい事実だった

そして投票のアラームがなる

波田野は「自分が犯人だと思う人は手をあげて」

すると全員が手を上げた

波田野は奥歯を噛み締めて「その通りだ。嶌さんの悪事は見つからなかったから空の封筒を自分で持つことにした。」

そういいポケットに封筒を押し込め帰る準備をして「僕は嶌さんに入れる」と会議室のドアを開ける

6回目の投票

嶌6、九賀1、他0


隣の部屋から鴻上さんが出てきて声をかけそうになったが頷きだけして出口へ向かった

エレベーターに乗り込むと涙が溢れて雄叫びを上げた



それから

森久保のインタビューを終えた嶌はタクシーでスピラに戻る


スピラに入社してから悪戦苦闘しながらも仕事をこなしてきた

今は案件をたくさん抱えながら新人育成もしている

容量の悪い新人鈴江に仕事を教えているとマネージャーに面接官を頼まれる

しかし嶌は、今の業務で手一杯だったため断った

鈴江のデスクにある写真を見て「あ」と声を漏らすと、鈴江が嬉しそうに歌手の相楽ハルキの好きなところを勝手にしゃべってくる

嶌はイラつき「薬物やってた人でしょ。本人に会ったこともないのに性格いいか分からなくない」と意地悪を言う

そして鈴江から引き継いだ自分宛の電話にかける


「波田野芳恵と申します」

祥吾の妹。すぐに思い出せなかったが就職活動で一緒だったと言われて8年前の記憶が蘇る

兄が亡くなり、遺品整理をしていたら嶌さん宛のものが見つかったと言われた


嶌はその日残業で遅くなった9時頃に埼玉の大型マンション波田野家に到着した

非常識な時間帯だったが何を残したのか気になってしょうがなかった

芳恵は好意的に迎えてくれた

そして、悪性リンパ腫の病気で亡くなったこと

この家は4年前まで住んでいたこと

ゴミと遺品整理をしにマンションへ久しぶりに来たことを話して「これです」

「兄からは何も聞いてないです。」といい芳恵の表情が変わった


クリアファイルに「犯人、嶌衣織さんへ」と書いてあった

クリアファイルには当時のディスカッションメンバーの名前、投票数のメモ書き、スピラのパンフレット、USBメモリー、小さな鍵が入っていた


芳恵は「何の鍵かわかりません」

そしてUSBを用意していたパソコンに刺してファイルを見ると一つのファイルはロックがかかっていて3回間違えるとデータが破損するようになっていた

もう一つの無題のファイルを芳恵が開くと

「あの事件の真実が知りたい‥」と波田野のメッセージが書いてあった


芳恵はパソコンを閉じて、兄は何かの事件に巻き込まれた、そして犯人は嶌さんと確信していた。

そこでスピラに電話してあなたにたどり着いた

「兄に何をしたんですか?」

嶌は当時を思い返す。そして「波田野くんは、犯人じゃなかったんだ」と言葉を漏らす


嶌は当時の話を思い出しながら芳恵に説明する

芳恵も誤魔化しがないと信じてくれた

そしてもう一度パソコンを見るとパスワードが残り2回になっていた

芳恵が間違ってエンターを押してしまったと言う

そして「もし必要なら持ち帰ってください」

嶌は波田野のメッセージの通り「もうどうでもいい過去」だったが真犯人を見つけなければならないと決意した

その理由は、波田野くんが持ち帰った封筒だ

犯人ではないなら封筒の中身はなんなのか


森久保のインタビューの日

自宅へ帰り、波田野以外にも自分を犯人だと思う人がいたことに驚いていた

そして自宅で当時のディスカッションの録画を見返して怪しいところはないか見るようにした

しかし鈴江の教育をしながら業務をこなしていくうちの優先順位が薄れていった


そんな時芳恵から電話が来る

「グループディスカッションの動画を見せてほしい」と頼まれる

生前の兄の姿が見たいと

しかし社外秘の動画なので見せられないと断るが、数分でもいいのでとせがまれ、関係ないところだけを抜粋した3分ほどに編集してみせることにした

嶌は待ち合わせした喫茶店へいく

芳恵は死んでから兄への思いを語る、それを聞いた嶌は「ウチへ来ますか?長い尺の動画見れます」自然とそう言葉を出していた

自宅へ招いて軽く飲み物とお菓子を出してテレビに繋いだPCの動画を流す

動画を流す前に波田野くんが大手IT業界に勤めていたと話してくれた


動画を見始めてから15分くらいで止める

この後は封筒が見つかる

芳恵に伝えるとそれでも嶌の時間が良ければ見たいと言ったので続きを再生する

全てを見終えて芳恵は、「就活ってこんな感じなんですかね」と自分は就活はしなかったからと作り笑いをする


嶌は20日のアリバイがヒントだと、自身が書いたアリバイの票をみせる

すると芳恵が気がつく

「この写真は同日には撮れない」

九賀くんの大学講座の写真を見てこれは神奈川県の大学だから1時間以内に他に行くのは不可能だと言う

そして「共犯者がいるのでは」と感じてインタビューで矢代が言っていた、脅されたという言葉を思い出す

動画を見返していると森久保が封筒から出した紙以外にもう一枚カードを見ているのが写っていた

矢代が言っていた内容だと他の企業にもバラされたくなかったら20日の写真だと言えと書いてあった


芳恵が帰った後、波田野くんのことをインターネットで調べてみた

すると大学サークルの写真を見つける

紹介文には腹黒大魔王と書かれていた

それは波田野くんのイメージとは違かった。写真を見ていると綺麗に写ってるスミノフを飲んでいる写真とボツ写真のキリンビールを飲んでいる写真を見つける

それを見て犯人がわかった


犯人をどう対峙するべきか慎重に練った

九賀くんは待ち合わせ場所を自分のオフィス28階から1階の喫茶店に変更した

嶌は「真犯人は袴田くん。その前に九賀くんに写真を確認してもらいたい」

するとスミノフを持った波田野くんの写真を見てこれはお酒じゃないから違うと言った

実は他の3人にはすでに確認済みで皆んなスミノフをお酒と認識していた

九賀くんが真犯人だった


嶌は全てを説明して九賀くんの反応を待つ

波田野くんは自分の写真を見てお酒を飲まない私が犯人で間違えないとその場で結論付けたのだろう

しかし九賀くんはお酒を飲まないし、お酒の種類がわからない


九賀くんは

今の会社を立ち上げた友人は大学時代からずば抜けてた。憧れで尊敬の対象の友人。

しかし一緒に受けたスピラの二次試験で彼は落ちた。

自分は最終選考まで残ってる。この企業は本当に機能してるのか?

そして高校時代の友人とご飯を食べる機会があって就活の話をしたら「詐欺セミナーのやつじゃないか」

そして「デキャンタ騒ぎ」。みんなで飲み会をした日、飲めない君にデキャンタを置いて飲ませる、幼稚で下品なグロテスクな光景。

そこで決意した。

6人はクズだと無能な人事に見せつけてやろう

今思えば馬鹿なことしたと思う

当時は苛立っていたから‥


「当時のメンバーに会ってどうだった?勝手な予想だけど1人残らず8年前と変わらずクズだった。君も含めてね。

嶌は言葉を詰まらせないように緊張しながら「私の封筒」

九賀くんは「びっくりしたよ。嶌さんがあんなことをする人だとは!」

データがありなら返してと言うが「嶌さんが内定を取れたのはある意味僕のおかげなんだから、これくらいの嫌がらせは許してよ、それがフェアだ」

九賀くんはゴミ箱に向かって歩き始めてそのまま喫茶店をでていった


嶌は電話で芳恵に真相を伝えた

「封筒は取り返せなかったんですか?」

そう聞かれて見透かされている気になる

嶌は、中身が心当たりがなく全くわからなくて怖かった


新人鈴江と仕事をしているとマネージャーに

鈴江に仕事を回して面接官をやるように指示される

もう断れなかった

先日鴻上さんにインタビューしたときの言葉を思い出して手が震える


ある日鈴江の居酒屋で歓迎会が行われた

主役の鈴江は相楽ハルキ推しと彼の人柄が素晴らしいと語る


薬物使用したキッカケはニューヨークへ音楽の勉強をしにいった時、音楽仲間に「葉っぱも吸えないやつとは友達になれない」それでもハルキは拒否した

しかしライブ終わりに泥酔したハルキに仲間がコカインを打ち込んだ

それから依存書になってしまった

そして日本で薬物使用がバレてバッシングを受けた

しかし現在は克服して違法薬物の活動に取り組んでいる


鈴江は嶌に向けて言っていた

続けてハルキは家族思いで障害を抱えている妹のために一緒に住んで支えてあげた

嶌は我慢できなった

「情報をどこかで見たんでしょ?本人に聞いたわけでなければ、ニューヨークの知人に聞いたわけでもない。いい人った何?そんなの表の情報でしょ?不倫してるかもしれないし、子供を下ろしてるかもしれない。

何日も過ごしても全くわかってなかった。そんなことばかりだよ」

そう思って飲み込んだ


スピラの集団面接で採点シートの説明を聞く

点数とは別に

2次に進めたい◎、進めたくない✖️

その時点で進むか進まないか決定する

嶌はなかなか加点がつけられなかったが生徒たちが去った会議室で面接官が「あの子可愛かった」と話してるのを聞く

鴻上のインタビューで

「人の本質を見抜くコツってありますか?」


インタビュー鴻上

「そんなものはない。これにつきます」

面接官と生徒は全部合わせても4時間くらいしか一緒にいない。それでわかるはずがない

面接に受かるコツも最終的にには運です。

当時スピラのSNSを使ってなかった

ただイメージキャラクターを演じていた

実は、上司より同期同士の方が相手の駄目なところに気がつく

それを利用して震災と嘘をつき最終選考に入って学生たちに選ばせた


嶌は封筒の中身が知りたかった

パスワードを考える。犯人が愛したもの

「ジャスミンティー」違かった

クリアファイルのパンフレットを見て、スピラの実態とは違うと今更感じた

その時鈴江からメールが来た

「マネージャー、嶌さんへ」

私はマネージャーじゃないのでマネージャーと私に送ったのだろうと思って開く

そこでふと「犯人、嶌衣織さんへ」

これは犯人と私に送ったのでは?と感じる

そして九賀くんが愛するもの




「フェア」入力するとデータが開いた

2022、11

あれから半年がたった

僕はあの日完全に打ちのめされた

僕に対する写真で犯人がわかった

お酒に詳しくないのは嶌さんだがプロントでバイトしているから銘柄は知っているだろう

そうするとお酒の飲めない九賀くんだ

最終選考の飲み会の日

九賀くんに呼ばれ、お酒の飲めない嶌さんに飲ませるなんてと詰め寄ってきた

軽く説明するが九賀くんは「僕もお酒が飲めないから種類はわからないけど、度数が低くても飲めない人には駄目なんだ」

笑い上戸の僕は思わず笑ってしまった

「お前ら最低だ。やっぱり心底失望した」

「皆んな優しくていい人だ」

「何も知らないからそんなこと言えるんだ」

「九賀くんだって素晴らしい人だ」

「僕は恋人を孕ませて捨てたクズだ」

これが宣戦布告だったのだと思う

僕が犯人になったのもこれが引き金だったと思う

犯人に気づいた僕はその場で指摘するべきだったのかもしれない

しかし九賀くんを信じていたかった

メンバー全員大好きだった

仲間に励まされてなんとか立ち直ったが

次に進み前にきっちり精算したかった

彼が悪事を暴いたつもりなら僕はその裏を調査しよう

その結果本当の悪人なら人の見る目のなさを嘆き続ければいい

結論から言うとこの勝負は僕の勝ちだ

証言の音声データをzipに残しておく

一面だけを見て人を判断することほど愚かなことはない

いつか九賀くんと嶌さんに見せてもいいなと思えるように成長したい

九賀くんへ

君の子供を諦めざる得なかった彼女に会ってきた

彼女は涙ながらに彼は悪くないと訴えてきた

2人のことだからインタビューの録音はここには残さない

君は自分にも厳しすぎる、もう少し楽になってもいいと思う

嶌さんへ

敢えて犯人だと指摘しなかったのは嶌さんに封筒の中身は空だと思ってもらい気持ちよくスピラに入社してもらいたかった

封筒の中身がなんだったにせよ、あなたが1番内定に相応しかったと思う

封筒は勝手に処分出来なかったので僕の貸し倉庫に預けてあります

一緒に鍵を入れておきます

またいつかデキャンタで乾杯しましょう。とても好きでした。

   波田野祥吾




嶌は久しぶりに走り出した

しかしマンションのエントランスで転けた

嶌は大学2年の時、兄の運転する車で事故に遭い骨盤骨折した

歩けるようにはなったが、健常者と同じではなかった


タクシーに乗り込み目的地へ向かう

優先席に座りたいが、以前怒鳴られたことがありそれから我慢するようになった

私のために矢代が率先して優先席に座ったがそれを無駄にしてしまった


九賀くんが言っていたデキャンタ騒ぎを思い出す

あの日は矢代がお店の紹介をしてくれた

高いお店だから少量にしようと話していたが

それを知らない森久保が予約を取り飲み放題にしてしまった

当日キャンセルができずに森久保は「僕のせいで高いお金をみんなが出す」と落ち込んでいた

それを見た袴田は他の皆んなに「お酒がすごく飲みたかったと言う雰囲気で入ってきてくれないか」と頼む

嶌さんは飲めないからデキャンタにウェルチを入れればお酒っぽく見えるのでは?といい

「皆んな頼む。すごい落ち込んでるから飲める人はガンガン飲もう」と袴田くんは皆んなにお願いしていた


最近のインタビューでも

袴田くんは、狭い公園で野球を始めた子供達のボールがお婆さんに当たりそうになった

すると袴田くんは口調は厳しかったがすぐ注意してマナーを教えた

その後全員にアイスを買ってあげていた


矢代さんが持っていたエルメスの鞄は当時と同じものだったがところどころ修理されていた

彼女が立ち上げた会社は海外支援の慈善団体だった


森久保くんはオーナー商法について説明してくれた

そしてひどいことをしてしまったと後悔していた

私が森久保くんも被害者だよと言うと、「騙される方が悪い」


九賀くんは私の足に気を使い障害者エリアに停めて車で送ってくれた

さらに28階ではなく1階で待ち合わせした


波田野くんは全員を信じることによって苦境を乗り越えた

あなたこそ責任感がある人はいない

あのグループディスカッションの日私のために罪を被ってくれた

感謝してもしきれない


タクシーを降りてコンテナに向かう

鍵を開けると想像以上にものが入っていた

そこに「波田野祥吾さん用」封筒を見つける

悩んできた答えがここにある


封を開けると学生時代に住んでいた家に入るところ兄が出迎える写真

「嶌の兄は薬物依存症。兄は歌手の相楽ハルキ。2人は同居している」


こんなものに振り回されていたのか‥

当時だったら打撃だったかもしれない


兄が悪いことをしてバッシングをしていた人々。事情を聞いて手のひらを返した人々。私も同じだった



波田野の手記

袴田くんの高校時代の後輩

その通りなんですけど

いじめをしていたのは自殺をした佐藤だった

袴田くん3年、佐藤くん2年

佐藤くんは1年に過度な練習をさせていた

ノックで骨折した人もいた。でも佐藤くんが怖くて言えなかった

1年は袴田先輩に動画を見せて報告した

先生に言おうとする袴田くんを止めた

そこで袴田先輩はその日通常メニューの後に、きつめの練習を佐藤にやらせた

ただし常識範囲内のもので

「明日から毎日だ。休むなよ」

その次の日佐藤くんは自殺した

しかも遺書には、袴田先輩にいじめを受けたと書いてあった

野球部は活動休止になり袴田先輩も退学になるところだったが、1年が取った動画を先生に見せて袴田先輩は悪くないと訴え退学は間逃れた


矢代さん中高同級生

矢代さんは知的好奇心が旺盛

学校では美人ゆえにいじめを受けていた

大学に入ってからは、習い事を掛け持ちしていた

そのためお金がなくて高収入のキャバクラで週2回働いていた

彼氏は高校からずっと付き合っている

彼氏はお金がないのにエルメスのバックをプレゼントされたと困っていた

海外旅行と言いながら現地のボランティア活動をしていた


森久保の大学同級生

母子家庭でお金がないため地頭で大学まで入った

大学のお金のためにアルバイトを掛け持ちしていたが疲れで授業に集中出来なかった

そんな時オーナー説明会のチラシを見つける

2回参加しておかしいと気がついた森久保は退会する

騙したことを後悔して大学へ報告する

森久保たちは被害者なので学校が守ってくれたが噂だけが一人歩きしてしまった



嶌は芳恵にコインロッカーの存在を知らせて一緒に整理を手伝う

全てをロッカーから出し終えて芳恵が荷物を整理する

嶌はロッカーの底に違和感を感じて触ると外れた

板の下にはA4の封筒が隠されていた

「株式会社スピラリンクス 人事部様」

切手は貼ってあるが消印はなく、封も開いていた

中の紙を抜き見ると

「先日の最終選考のやり直しをお願い

私は犯人ではなく九賀が犯人である

内々定になった嶌の封筒を同封します

内定に相応しくなければ再度選考してほしい」

そのような内容が丁寧に書かれていた


嶌はいつ書いたのか?調べた後か前か。

しかし考察をやめて自然に笑ってしまう

私は改めて天国の彼にお礼を言う

ありがとう好青年のふりをした腹黒大魔神さん


鈴江さんの活躍で仕事がうまく行った

嶌は素直に褒めて、

「今度ご飯行こう。兄も呼んでいい?」


2回目の面接官の日

鋭い洞察力がありますと自己アピールする女の子

嶌は「利益のために嘘をついたり、最も信頼できた人が陥れたりすることもあるかもしれませんが、それも洞察力で噛み分けられますか?」

即答で「できます」

嶌はそれを聞いて✖️と書いた

その後その子は「御社のパンフレットにあるダーツなどがあるミーティングルームはどのくらいの頻度で使いそこから生まれたアイディアはどのくらいあるのですか?」

嶌は「しよう頻度は部署によって様々です。時には予約がバッティングすることもあります。あのミーティングルームが無ければ生まれなかったアイディアは沢山あるでしょう」と答えると

女の子は、舞い上がり「ありがとうございます」

彼女は嘘を見抜けなかった

しかし嶌は✖️を消して丸を書いた

ああ言う子は乗り越えられる「超越できる」