◆人間と腸内細菌は一体になって初めて ”ひとつの生命体” になる


腸内細菌は、1個の細胞でできた生き物です。

この言葉は、私たちが一人で生きているのではないことを思い出させてくれます。

現代社会に生きていると忘れてしまいがちですが、

私たちは自然の一部であること、

目には見えない小さな生き物たちとの関係性のなかで生かされていること

に感謝しなくてはいけないのかもしれません。

もちろん人間だけでなく、地球上に住むありとあらゆる生物がそうです。

すべての生物は、細菌を通して地球規模でつながっている、と語る科学者もいます。

あまりに壮大な話で、取材当初はついていけない面がありましたが、番組を制作し終えた今では、そうした考え方の意味も徐々にわかってきました。


腸内細菌は、いま、この瞬間も私たちのお腹の中で生きています。
人間の細胞も、それ1個でちゃんと生きている “生き物” です。

一つひとつの細胞という生命の基本に立ち返ってみれば、

人間の細胞と腸内細菌の細胞にそれほど大きな違いはないとも言えます。

それらの細胞が助け合って生きている。

長い共進化の歴史を考えると、人間の細胞と腸内細菌の境目は、ひどくあやふやなものに思えてきます。

 腸内フローラの研究者の多くは、
「人間と腸内細菌は一体になって初めてひとつの生命である」と考え、

“超生命体”という言葉を使います。

理化学研究所のシドニア・ファガラサンさんもインタビューの際に “超生命体” という言葉を使って、哲学的とも言える深い話をしました。

翻訳が非常に難しいですが、できるだけ原文に忠実に書いてみます。


「いま、あなたが “私” を見るとき、あなたは ”私と腸内細菌”を見ているべきです。

私たちは “超生命体”です。

人間の細胞の10倍もの腸内細菌がいて、人間が持つ遺伝子よりもずっと多くの遺伝子を腸内細菌が持っています。

人類は、自分たちが “超生命体”であることに気づいていませんでした。

私たちはもう少し謙虚になって、自分たちの中に住まわせているものを、理解しなければなりません。

私たちは、腸内細菌と共に生きています。

 “私”とは、〝腸内細菌と私”なのです」

※「腸内フローラ10の真実」より抜粋
P201~P204