◆ひとりで生きるより、助け合う方がずっといい
しかも、細菌の遺伝子を利用することには、もうひとつ有利な点があります。
それは、新たな遺伝子の獲得の速さです。
細菌は、世代交代が早く、また、遺伝子が簡単に書き換わってしまう性質があるため、
新しい遺伝子を獲得するスピードが非常に速い生き物です。
そのため、人間が自分の遺伝子として獲得しようとすると何百万年もかかってしまうようなことを、ごく短い時間で行うことができます。
また、細菌は外部から遺伝子を ”とりこむ” こともできます。
たとえば、日本人の腸内には、海藻を消化する細菌がいることをご紹介しました。
この細菌が持っている「海藻を 消化する遺伝子」は、もともと海の中で海藻を食べて生きている細菌が持っていたものだと考えられています。
こうした菌は海藻にくっついていますから、日本人の祖先が海藻を食べたとき、腸内に入ってきました。
細菌の場合、ある種の細菌から別の種類の細菌へ遺伝子が移動する、という現象がかなり頻繁に起こります。
「海藻を消化する遺伝子」は、その仕組みによって腸内細菌の中に入ってきた可能性が高いといわれています。
こうしていったん「海藻を消化する腸内細菌」が生まれてしまえば、あとはこの菌を 代々受け継ぐだけで、日本人は海藻を消化できることになります。
人間自身の遺伝子として獲得するよりも、ずっと簡単に、生きるために役立つ機能を手に入れることができたのです。
※「腸内フローラー10の真実」より抜粋
P195~P196