私たち家族は今、夫が働いている研究所のゲストハウスに住んでいる。

 

このゲストハウス。

 

他の研究所からコラボレーションをしにきたり、インターンで短期で滞在する人、そして、私たちのように最低でも2年くらい滞在する人たちがアパートを見つけるまでの期間滞在することができる。

 

先週、家族で散歩に出かけようと玄関先で準備をしていると、西洋の若くて可愛らしい物静かな女性(以下、”マリー”)が、小さな声で

 

「日本人ですか?」

 

と日本語で話しかけてきた。

 

日本へ留学経験があるようで、日本語が流暢であった。

 

どうやらうちの斜め前の部屋へ引っ越してきたらしい。

 

玄関先で少し話をすると、マリーはフランス人で、五日前に電車でドイツへ来たとのこと。

 

医学部の修士過程の学生で、インターンで6ヶ月間このゲストハウスに滞在するという。

 

マリーに最初に会った時はフランスからきてまだ五日目で、2週間の隔離中だった。

 

インターンをするラボの人が、マリーがドイツへ来てすぐに食材を持ってきてくれたみたいだが、きっとその食材もなくなる頃だろうし、ちょうど買い物に行くついでもあったので、彼女に必要なものを聞いて購入し玄関先に届けた。

 

それから数日後、ピーラーを貸して欲しいとマリーがやってきた。

 

私は買い物で不在中だったが、夫と3人の子供達が対応し貸してあげた。

 

しかしそれから1分後、鍵を家の中に入れたまま家を出てしまい家の中に入れなくなったと言ってまた戻ってきたらしい。

 

ちょうどその日は日曜日滝汗


日曜日、しっかり休むドイツ人はなかなかつかまらない笑い泣き

 

夫がラップトップとスマホを貸してあげて、ゲストハウスの管理人やボスに連絡をして、事情を説明して鍵を開けてもらうようお願いした。

 

1時間半ほど待った後、私が買い物から帰ってくる直前にようやく部屋に入れたマリー。

 

ドイツへ来て早々、2週間の隔離生活だし、部屋からは締め出されるし大変だなぁと少しかわいそうに思った。

 

そして昨日。

 

子供達を夫に預け、家の近くをウォーキングしようと家をでると、マリーもちょうど部屋から出てきたところであった。

 

近くのスーパーに行くといい、私も同じ方向へ行くつもりだったので歩きながら少し話をした。

 

2週間の隔離生活もようやく終わり、ラボにも時々行けるようになって(彼女のラボは、一部屋に入れる定員が4人までで、前もって予約をしなければならないので毎日は行けないとのこと)前会った時より元気そうであったが、ロックダウン中で街中へも行けないし、ラボの人たちとも頻繁に会ったり話したりもできないので孤独だとマリーは言った。

 

インターンが決まった時、このドイツの街は学生も多く、街も綺麗でとても楽しいところだと周りから聞いていて、とても期待してきたとのこと。

 

しかし、心躍らせながら来たドイツはロックダウン真っ最中。

 

当たり前だが、街中を観光したり、カフェでゆっくりお茶したり、新しい友達を作ったりする機会は皆無で、自分が思い描いていたインターン生活と全く違い寂しいと。

 

そんな話をしているうちにスーパーの近くについた。

 

「もし何かできることがあったら言ってね!」

 

と言って、私はウォーキングを続けにその場を去ろうとした時、物静かなマリーが突然

 

「待ってください!!」

 

と大きな声で私を止めた。

 

そして、躊躇しながら

 

「今週末、一緒にご飯食べてもいいですか?」

 

と聞いてきた。

 

意を決して聞いてきた感じが半端なかった。

 

よく考えてみたら、同じヨーロッパとはいえ、それでも外国。

 

知り合いもほとんどいないところで、ろくに外出もできず、ほとんどの時間をゲストハウスで過ごすというのは心細く、寂しいだろうと思った。

 

今、ドイツのロックダウンの決まりでは、家族以外のひと一人には会ってもいいということになっている。

 

私たち家族にとっては、マリーは一人なので問題ない。

 

しかし、私たちは5人家族。

 

マリーにとったら、自分以外の5人と会うことになる。


だめだよなきっと…

 

週末は私がいくつか用事があるので、今ははっきりと返事は出来ないがまた連絡すると言ってその場は終わった。

 

3人も小さな子供がいて騒がしい家であるが、孤独なマリーの気持ちが少しで癒えてくれるなら、夕飯に誘ってあげたい。

 

しかし規則が…

 

さて、どうしたものか。

 

週末まであと4日。

 

昨日から、夫と私は葛藤中である。



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