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近現代音楽のように、従来の形式にとらわれずに作られたものは、

その斬新さや予期せぬ展開への驚きなども魅力の一つである。

これは音楽だけでなく、アートやファッション、車やロボットの世界でも同じだろう。

それらの作曲者や発明者、技術者たちは、あたかも自由発想に基づいて、何でも可能にしてきたように見えるが、

これまでの常識や形式から抜け出て、違う方法や考え方を現在可能な範囲で探りながら、一つ一つ形にしていく。

これは、この上ない束縛となる。自由を実現するための束縛だ。

しかしソナタ形式のように、その形に収まっている美しさ、きちんと整った心地良さもある。

私達の日々の生活でも、毎日規則正しく同じことを繰り返しながら時を過ごす中には、

退屈感もあるだろうが、余計な事を考え過ぎずその生活をこなしていけば健やかに生きられる安心感もある。

変化に富んだ不規則な生活の中には、すべてを自分で決定できる自由があり、

予定は未定の不安も存在するだろうが、その分濃い一瞬一瞬を体験していく。

しかしこの自由は、自分を自分自身で正しく律してはじめて実現する自由だ。束縛の上に立っている自由。

もともとわがままに生きたい人間は、どこまでも堕落する本能をもっているからだ。

現代音楽の中身は、聴くと斬新自由だが、譜面は事細かく指示がなされており、演奏は決して自由ではない。

従来の形式から外れるよう、細かな隙間を抜って取り込まれている。だから、それをそのまま奏でれば、もう美しい。

規則に則った音楽も、それを避けながら作られた音楽も、その時代時世での美しさの追求に他ならず、

規則正しい生活も、自由奔放な生活も、健やかで楽しい、幸せの追求に他ならない。

美千代