古民家の持ち主、正確には持ち主の代理のお孫さんと会えるはずだった。
小高い山の上に四方を茶畑に囲まれた平屋の古民家…
先日詳しい住所も知らずにただ○○の近く…という情報だけで、勘だけでたどり着いた場所…
最近までおばあちゃまがお一人で住んでいらした平屋の古民家、確かにその水回りの痛み等は外から覗いた感じでも容易に察する事ができた。
ただ今まで見てきた物件の中で、このお家の佇まいが一番さゆりのツボにハマってしまったと感じた。
一緒に物件を探してくれた友人はそんなさゆりに冷静な助言をくれた。
「家は良いと思うよ。終の住処なら良いと思う。ただね、ここでお店を開くとしたらどうかな…お客様がここに来るのに心配になるね、」
新東名の「金谷、島田IC」から北に1キロ、この先をもっと上がっていけば、大井川鉄道の「千頭」につながる。
千頭からまたしばらく行くと、静岡県の秘境、寸又峡に到達する。
実は以前さゆりが古民家を探し始めた時に物件を紹介してくれた不動産屋さんに「古民家で何をするの?」と、問われた。
さゆりの話しにその不動産屋さんは、「じゃあさ、うちの物件が寸又峡にあるから、そこでやりなよ!」と勧められた場所でもある。
いやいやいやいや、いくらさゆりが田舎好きであっても、細い道を何時間も行かなくてはならない、しかも大雨が降ればすぐに通行止めになってしまう地域である。
台風などで土砂崩れが起きたら、そこは陸の孤島になってしまうのである。
そこは丁重にお断りをしたのであるが、今回の物件は最近インター近くにオープンした道の駅「門出」から直ぐの場所であった。
ただ、主要道路からその集落に入り込んだとたん道が狭く、急になっていた。
その古民家を探す時もそんな道のわずかな空き地に車を停めて徒歩で登ったのであった。
道はある。たしかに古民家につながる道はある。
ただし、片側は切り立った崖でしかも狭い…
友人は
「馴れた住人なら大丈夫かもしれないけれど、ここに来るお客様が心配だね。」
と、言う。
そうだね…
さゆりは自分が良いと思ったことは周りの事も目に入らないぐらい突っ走ってしまう、突っ走ってしまった自分を知っている。
だが、
若い時ならまだやり直しも出来るだろう…しかし3年前に亡くなった夫の歳に近づくに連れ、どこか臆病になっている自分もいる。
その古民家を諦めるため…
そう、実際にこの目で内覧して自分の考えの甘さを実感するために、
他県から解体業者と打合せに来る持ち主さんの都合に合わせて、その日に行くはずだった。
しかし
その少し前に嫁の職場でのクラスター騒ぎ、
嫁は検査で陰性!
出勤は可能!
それなのに、
さゆりの職場でさゆりが自宅待機と、その後の抗原検査の実施がその古民家の内覧の日と重なってしまった。
売り主しさんは最初は買い手もいないだろうと物件の解体をするつもりだったようだ。
しかし同時に不動産業者の査定依頼もしたようであった。
不動産業者の査定は…
それが妥当かどうかはさゆりにはわからないが、
わかっているのは、
もはや、その価格ではさゆりが内覧するまでも無く無理な価格だとわかった。
その不動産業者は、実はさゆりが面識のあった例の方であった。
そこへ売り主さんとの間に入ってくれた人から連絡が入った。
また売り主さんが○○日に片付けに来るので、良かったら来ませんか?
そう、「買うため」ではなく、
「あきらめる」為に行こうと思った。
ここからが、本題なのだ。
先週末、孫の学校での感染がわかった。
週末、孫は高熱を出し、学校はもちろん学年閉鎖、
嫁とさゆりは自宅待機になったのである。
さゆりは職場の指示で薬局にてPCR検査を実施、
週明けに 陰性の連絡が入る。
孫は熱も下がり食欲も出て元気な様子。
(2階にて静養中なので、見ていませんが、)
昨夜、嫁の発熱、
本日、抗原検査で陽性、
熱は高くはならず、下がった様
子、(ワクチン3回の効果か?)
陽性が確認されると、地域の保健所から連絡が来る。
さゆりの自宅待機が延びると思ったが、さゆり自身に症状が出なければ、当初の通りの日数で良いそうだ。
ただし、急な自宅待機、人手不足の職場に迷惑をかけてしまった。
その後の休みを返上するつもりである。
次回の内覧も無くなってしまったが、仕方ないと思っている、
まるで、
なにかの力によって行く手を阻まれているように感じるのは、さゆりだけであろうか…
5月16日現在、さゆりには症状はない。
このまま無ければ、あと数日で(抗原検査の結果ですが)職場復帰です。