少し遡り、

結婚してから17年専業主婦をしていたさゆり、働きだしてからは、

働きながら家事もこなし、自分の時間など少しもなかった。

働きたいとさゆりの希望だったから、泣き言も言えない。言いたくなかった。

義父が亡くなってから同居した義母とは、やはり上手くは行かなかった。

行かなくても、では再度別々に暮らすとかそんな事も無理と、考えもしなかった。


だから、さゆりが外に出て働くというのも、義母との間に距離を置くという点では誰にとってもプラスに働くはずだった。


我が子だけは、大丈夫、そんな根拠のない自信が一体どこから出てきたのであろう…

3人の子供達はそこそこ勉強も出来、一番下の長男は、いつもクラスの中心で非行にも走らず…まぁ、それは親としてちゃんと子供達に向き合っていなかったから見えなかっただけであったが。

40すぎから仕事の楽しさを知ったさゆりは、本当に大切なものを見失っていただけではなく、手の中にいた青い鳥の存在すら気が付かず、簡単に手放してしまったのである。


そして、さゆり自身の体調の変化、体調の変化に伴い少しの事にもネガティブな思想に囚われることになるのであった。


いわゆる更年期障害と言うのであろう。

さゆりの母親も姉も早かったと聞いていたので、さゆり自身、月のものが終わることにさほどの感情はなかった。

逆にあ〜面倒くさいことから開放されると、どこかせいせいした気持ちであった。

検診で行った婦人科の医師は早すぎると言って、ホルモン注射を半ば勝手にした。

その後の異常な出血に仕事もままならず、そのホルモン注射もそれきりにしてしまった。

医師がなぜ、早すぎると言ったのかは後にわかるのだけど、

さゆり自身は、余計な事をして!って思わなくもなかった。


(仕事に集中している女性がすべて家庭の事をないがしろにしているわけではありません。

さゆりがあまりにも不器用なだけだったのです。)