スキー場とかで、格好良く滑っているひとに惚れてしまうように、


キャンプとか非日常の場所では、その人の魅力が際立つのかもしれない…


日常生活の中で出会ったとして、果たしてそこまであけすけに心を開けるだろうか…


非日常の場所だからの濃密な時間が、人と人の距離を縮めるのであろう。



もちろんそこは、同じ趣味だという共通の話題があるからなんだろうけど、



キャンプも不思議な物で、

例えば雨に降られてぐちゃぐちゃになり、そのあと片付けに苦労したり、


寒い季節のキャンプでは、それこそ寒さを甘くみてガタガタ震える夜を過ごしたり、


夏の暑い直射日光にさらされ日焼けしたり、蚊や虫の餌食になり嫌な思いをしても、


帰宅した途端、また出かけてみたくなるのだ。


苦しい思いをしながら登山をして、頂上に立ったとたん、今までの辛さを忘れるみたいに…なんて言ったら怒られるだろうか…


さゆりの友達でテントを背負って山登りする彼女は、キャンプの楽しみも山登りの楽しみに似ているよねと、わかってくれた。


来週の土日は、さゆりの勤務も休みであった。


ここのところ、休みの度に出かけている。

でも、誘われて断わる理由が見当たらない。

さゆりは帰宅そうそうまた、出かけたくなっている。


でも土日だし、急に予約して取れるものだろうか…


さゆりは予約出来るならご一緒しますと、駒子にラインをした。



駒子からはすぐに返事があり、朝霧フードパークキャンプ場は1サイトが広く、ソロ用のテントならいくつか張れるという。





ふもとっぱらキャンプ場で偶然隣り合った人、

一週間後に一緒にキャンプをする。


今までのさゆりにとってありえない事だった。



ありえないと言えば、つい最近もブログで紹介されたRVパークで初めての車中泊も体験したさゆりであった。







温泉施設があるRVパークやまなみの湯、

さゆりの夢、「日本全国車中泊の旅」の第一歩、

車中泊の様子をよくブログにあげている「おひろ」さんの紹介であった。

この「おひろ」さん、さゆりの質問にいつも丁寧にコメントを返していただける。

顔も知らないブログの中でのつながりに、さゆりはなぜかワクワクしてしまっている。




ふもとっぱらキャンプ場から一週間後の土日は、あいにくの空模様であった。


なぜその日が休みだったかと言うと、その日は亡くなった夫の月命日であったため、希望休を取っていたからである。

ちょうどキャンプ場と夫の墓は隣り合った街であったから、さゆりは朝の早い時間に毎月の墓参りを済ませ、駒子との約束の場所へ向かった。




駒子はすでに来ていた。


さゆりを見つけると、にこにこ人懐っこい笑顔でかけ寄って来ると、さゆりの前に立った。


ふもとっぱらキャンプ場では、帰り際に少し話しただけだったので、


こうして対になって話してみると、


意外に若い…?


歳を聞くと何と一回りも年下であった。


一回りも年下の方と話が合うのかなってさゆりは一瞬思ったけれど、そんな心配は要らなかった。


再会の一瞬でさゆりはもう駒子の真っ直ぐで純粋な性格に圧倒され、自分も駒子の前では素のままで居られる予感を感じた。


最初から素のままを出せる人、いや正確には相手を素のままにする魅力が駒子にはあった。


この人の前では老若男女、みんなそうなるのかも知れない。

先週の彼もそのひとりであろう…

まぁ、彼の思いは一方通行みたいだけれど…



しかし、そんなふたりをヨソに、天気は、あいにくの空模様…

今日はタープだけを張り寝るのは車の中にしようとなった。






キャンプ飯を教えてほしいなんて、人を持ち上げる彼女と夕飯の仕度、

今日は自宅でも最近良く作る、
バターチキンカレーを作るつもりだ。

ナンも手作り!
そんな面倒くさい物をと、言われるかも知れないが、

「キャンプでは、テントを張ってしまえば意外に時間があるのだ。」

…と、さゆりがキャンプ用品を良く買う店の若い店員の受け入りである

だから面倒な料理もやる気次第でとても楽しいのである。




手作りのナンとバターチキンカレー、

野菜を巻いただけの生春巻き、

手作りのラッシー、
(牛乳、ヨーグルト、レモン、ハチミツ)

ビジュアル重視のさゆりはちゃんと庭から摘んできたハーブを添えることを忘れない。


一緒に料理を作りながらお互いの話しをする。
話しはじめるとお喋りで止まらなくなる自分を知っているさゆりは、なるたけ相手の話を聞いて自分の事は控えめに…なんて思っていたが、

まんまと、駒子の聞き上手にソロキャンプを始めた理由や、家庭のこと、2年前に亡くなった夫のことやら…
ベラベラしゃべり倒し、まるはだかにされてしまった。


あいにくの雨の朝霧フードパークキャンプ場の夜は、

タープに守られ焚き火を見つめ夜が更けていった。