まさか、
旅の目的、
「おひろプロデュース、スウェーデントーチ」
の受け渡しの後もその行動を共にするとは思わなかった。
大胆だけど、寂しがりや、ちょっと優しくされたら、その甘える限度、引き際がわからないさゆりであった。
思われるより、思う方が好き!
でもどこまで許されるのかが、わからない。
振り返れば亡くなった夫はそんなオンナを良く受け止めてくれたものだ…
結婚したばかりの時も、まだほとんどが大学生であった友人達が新婚の家庭に訪ねてきた。
女子も2名いたが、そのほとんどが男子ばかり、
しばらくして、夫の本音が出た。
「ちょっとおかしいよ…」
「へっ!!」
さゆりは夫の言っている意味がわからなかったし、
彼らは、友達で、恋人でも何でもない、友達であったから…
そう、言葉で本音を言えない世代の夫のヤキモチだったのに、
その頃のさゆりは、さっぱり理解出来なかった。
が、
それも、
自分のヨメさんはそんなやつなんだと慣れて来た夫がさゆりの友達と仲良くなるのも時間がかからなかった。
その中のひとりは就職後、身体とこころを壊し、
彷徨いの数年を過ごした後、亡くなってしまった。
その彼の相談役でもあり、心配し、行方不明になった時には、必死で探し回っていたのが、絵葉書の彼である。
夫亡き後も、自由に自分の好きな事を謳歌しているように見えるさゆりに、
「あいつが今いたら、また違う人生があったのに…」と言う。
そうね、他人にそう思ってもらうのは、さゆりの本望だわ…しめしめ…
夫が亡くなり、まだ2年、
さゆりの中では夫はまだ生きている。
一緒に生きているのだ。
夫が亡くなって、まだ2年、
他人の目には立ち直りの早いオンナと
思われて、オッケー…
同情するなら、わたしを救って!
中途半端ななぐさめはいらない!
だけど、私は生きている。
雨に打たれようが、嵐にさらされようが、
私は生きている。
私が生きている限り、私の中で夫は生きている。
だれか、文句があるか!
今夜は師匠に頂いた酒を飲み干し、酔っているようだ…
大雨による被害、人々の嘆きの声が聞こえる。
神は無差別だ!