新居に移り数年した頃、
家族それそれの生活に追われていた時、
義母の異変がジワジワと現れていた。
食欲、特に米、ご飯に対してのこだわりがあった。
M子が仕事から帰ってくると、米を炊いてあることがあった。
「ご飯、炊いておいたから…」と、義母は言ったが、
そのご飯は水加減が多いのだろう、柔らかすぎたりした。
のちに義母が緊急入院した時に、義母の部屋に入ると、
いつ買ったのであろう、コンビニのおにぎりが沢山出てきた。
そして、
義母はよくトイレに行くようになっていた。
義母のその後の生活で、下の事についての失敗はほとんどなく、
それは、認知症になる中でも、それだけは義母の中でプライドを保っていたのではないかと思う。
ただ、義母の部屋からトイレにはリビングの前の廊下を通るため、
リビングの戸を閉めながら、義母はトイレに行っていた、
何度もトイレに行く事を気にしていたのではないだろうか…
(リビングの戸はフルオープンになっていた)
ある日、水道のメーターを調べに来た人が、最近、水道の使用が多いので、
どこかで漏水しているのではないかと、
言ってきたのもこの頃であった。
M子は義母の異変に、
これは認知症?
え、そんな、まさか…と思っていた。
M子の旦那さんにおいては、自分の実親のこと、
認めたくないっていう思いが強かったと思う。
そして、転倒、骨折、入院となり、
義母の認知症は、その間に着々と進んで行った。
その転倒も、脳梗塞の発症のせいであったかもしれない…
義母は手術を待つ間、その病院の介護施設に入所する事が出来た。
M子は毎日仕事が終わると義母のところに寄り、飲み物の補充やら、洗濯物の交換などをした。
義母のベッドの脇には簡易トイレが置かれていた。
頻繁にトイレに行きたい義母のためか、とも思ったが、
その施設には入所されている人が多く、介護の手が足りていないせいだとM子は知った…
毎日寄ると、義母のベッドのシーツ、義母のパジャマが汚れていた。
M子はその都度、それらを交換して、汚れたポータルトイレを拭いた。
これらの事が、M子にとって初めての事であり、
こういうものなの…?
入所者の衣類や、シーツが汚れていても、気づかないのか、気づいてもお世話してもらえないのか…
人として、最低の衛生さえ、無視されるものなのか…?
怒りとかではなく、
???
と、いう気持ちであった…
それなら、ここがそんな所ならちょっと考えなくては…と思っていた。
今は、M子自身、介護施設のある施設の調理場で働いているし、
嫁も介護士であるので、
その職員さん達の仕事の大変さも少しは理解できる。
が、やはり、この事には今だに施設に対して不信感は否めない。
そんな事が続いた日、
M子は、そこの看護師長らしい方に、現状を説明し、
もし、これが普通なら、他に対策を考えなくてはいけないのでと、
クレームではない、相談という意味で聞いてみた。
看護師長は、
「申し訳ありません、これからは気をつけます。」
と何度も言われ、
(あれっ?クレームだと思われている?)
すべてが、はじめてのこと、
それをはかる基準さえ持っていなかったM子たちであった。
その後、義母は手術の日が決まり、病院施設の方に移り、
手術をやっと受けられるようになったのである。
その間に、いつの間にか支えきれないほどに太ってしまっていた義母の体重はかなりダイエットされていた。
退院が決まり、
ケアマネージャーさんとの相談で、
義母は週2日のディサービス、
土、日でショートステイを利用するようになった。
つづく