話しは行ったり来たり、
むかしむかしのM子の記憶…
M子の旦那さんの社宅時代の出来事…
M子は結婚して3年経ち、長女が一歳半の時にその社宅に住む事になった。
古いその社宅はM子達が5年ほど住んだ後、老朽化の為に建て直されるぐらい年代物の建物だった。
M子は今でこそ、今流行の古民家とか、昭和レトロとか、You Tubeを見ていいな〜と思っているが、
しかし、当時住んでいた社宅は、そんな昭和レトロなんて言っていられないぐらいのひどい建物だった。
唯一、いい所は、
社宅だから家賃は安いということだが…
そんな所なら住まなければいいだろうと、思われるだろう…
しかし当時は、異動したらそこに住まなければ行けない決まりがあり、
それを、拒否したらM子の旦那さんの仕事場での立場に悪影響があると思っていた。
M子の旦那さんの異動は、昇進による異動であった。
M子の旦那さんは高卒で今の職業に就いたが、
その職業の昇進は試験制度であり、元々勉強が好きであった旦那さんは、比較的早い昇進をした。
若くして昇進して、新しい職場、おそらく旦那さんより年上の人の上で働く事になる、
そんな時に我を通してイザゴザを起こしたくなかったと言うのもあった。
その古い社宅は今で言うテラスハウス風で、1階に6畳とトイレ、風呂、2階に6畳と2畳、庭が6畳ぐらいあった。
トイレは水洗トイレではなく、老朽化の為に、ひどい雨が降ると水でいっぱいになってしまい、
その度に業者さんに汲み取りに来てもらうのだが、
「奥さん!採ってもとっても周りから滲み出てくる!意味ないよー!」と、言われ、その代金も、もちろん自分達もち…
M子は雨が降るたび憂鬱になるのであった。
会社で直してもらえばって?
何度も言いましたよ、
でも、取り壊し、立て直す予定があったからですかね、直してくれることはついにありませんでした。
あっ、ひとつだけ、取り替えて頂いた物がありました。
お風呂です。
ひっこしをした日は、なんと言うことでしょう!
そこの風呂桶は今では見たこともない(当時もなかなかなかった)
木の風呂桶であった。
コンクリートの上に置かれたその風呂は見るからに古く、
辞令が出てから一週間ほどでひっこしをしなければならなく、この部屋の前の住人も大変であっただろうが、
ひっこしをした日に風呂を沸かすと、奥から、ぬらねら汚れが出てきたのには、
さすがのM子も、さぶいぼが出た…
それでも、何ヶ月か我慢をして、生活をしていたが、ガス風呂のそれが、変な音がすると報告したら、さすがに危険だと思われたのでしょう、
新しいお風呂に変えて頂きました。感謝!
風呂場の横には大人が一人立つだけのスペースの台所、
そこが、脱衣場でもあった。
老朽化のため、台所と、風呂場の入口の戸はとっくになくなっており、のちにアコーディオンカーテンを付けたが、
それがM子のDIYのスタートだったのかもしれない。
台所も狭かったのだが、一歩も動かず、(動けず、笑)作業が出来たので、まるでそこはクルーザーのキッチンか、キャンピングカーのキッチンかと、言うぐらい楽しませて頂いた。
もちろん冷蔵庫など置き場所はなく、トイレの隣の6畳の居間に置いていた。
壁は砂壁だったのかな〜と言う程度に残っていた砂壁
のちにM子はその壁をすべて剥がし、クリーム色のペンキを塗るのであった。
古い汚れたふすまは新しいふすまに自分で張替え、
コンクリートむき出しの風呂場の床にはサイズぴったしのスノコを作るのであった。
それを見に来た近所のママ友たちも、みんなマネしだした。
古く、汚く、衛生面でも、問題のあった社宅時代であったが、
M子たちはたくましく生きていた。
しかし、
自分達の力では変えられないものも、あった…
つづく
このお話しはフィクションであり、登場する人物、建物は架空のものです。🤪