最近好きな作家、雨穴さん。
YouTubeでもミステリー作品を投稿している仮面をつけた正体不明の小説家だ。
雨穴さんの作品は基本的にはホラー作品で、日本の伝承的なオカルト要素を組み込んだものが多い。
オカルトだけでは終わらず、トリックも組み込んだミステリー要素もあり読み進める楽しさがある。
和製ホラー、オカルト作品が好きな僕。
雨穴さんの作品のいいとこ取り感、ちょうど良さについ作品を手に取ってしまう。
そこで今回読んだ2冊を紹介しよう。
1冊目はこちら。
『変な家』
既に40万部を突破し、映画化も決定しているこちらの作品。
『不動産ミステリー』という生活に根差したリアルさが読者を夢中にさせる。
あらすじを簡単に紹介しておこう。
知人が購入を検討している都内の中古一軒家。
開放的で明るい内装のごくありふれた物件に思えたが、その間取り図には謎の空間が存在していた。
間取りの違和感はそこかしこに広がっていき、謎を辿った先には驚きの真相が隠されていて…
『間取り』を中心に繰り広げられるミステリー。
一つの違和感が大きな違和感に広がっていく展開に目が離せなくなる。
物語はまさかの展開に進んでいき、雨穴さんの真骨頂であるオカルト要素も満載、ミステリー要素も満載と読み応えのある1冊に仕上がっている。
基本的には会話形式で物語が進行することもあり、ボリュームを感じさせずあっという間に読み終えてしまった。
作中に見取り図がたくさん出てくるのも物語が立体的になり面白い。
あまり文字を読むのが得意でない方や、普段あまり小説を読まない方にもライトな読書として推せる。
ジャパニーズホラー特有のジメッとした怖さもありつつ、ライトにミステリーを楽しみたい方におすすめの1冊だ。
そして2冊目はこちら。
『変な絵』
『変な家』の次は『変な絵』
この『変』という違和感こそ雨穴さんの真骨頂だと思う。
ちょっとした違和感の積み重ねが大きな違和感に育っていく面白さ。
『変な絵』もその醍醐味を存分に味わうことができる。
とあるブログに投稿された絵。
消えた男児が描いた絵。
山奥で見つかった遺体が残した絵。
一体彼らは絵で何を伝えたかったのか。
9枚の絵に隠された謎が解けた時、全ての事件が一つに繋がる。
ということで、間取りの次は絵を中心に物語が進んでいく。
何ということはない絵に潜む違和感。
一つ気付いてしまうとそれはもう止まることのない違和感に加速していく。
今作はオムニバス形式のような複数の章構成になっている。
それぞれの章に違った絵、違ったミステリーが潜んでいるのだが、それだけで終わらないのが面白い。
物語が進んでいくにつれ、複雑に絡まりあっていく人間関係。
それは章を超えて一つの物語に収束していく。
ここがお見事!
えっ?!ここが?!
ここに繋がるの?!
という物語が組みあがっていく面白さ。
これもまた夢中で読み終えてしまった。
今作は変な家とは違いオカルト要素はない。
純粋なミステリー作品で、人間の精神的な怖さを楽しむことができる。
何よりどんどん繋がりを見せていく人間関係が面白い。
ただ、設定や進行に若干の無理がある部分もあり雨穴さんの苦心もうかがえるわけだが。
やはりそれを超えて絵にまつわる仕掛けが面白い。
変な家の間取りといい、今作の絵といい。
雨穴さんは物語のアイテムに仕掛けを組み込むのが本当に上手いと思う。
前作と同じく会話形式で進行していくので、ライトな読書にもおすすめだ。
ホラー要素も入れ込んだ雨穴さんのミステリー作品。
興味のある方は読んでみてはいかがだろうか。

