一泊二日のサウナ旅もついに終盤戦。
佐賀県をあとにし、帰りのフライトに備え福岡空港近郊へ向かう我々。
フライトまでの残り時間、福岡を満喫していきたい。
福岡と言えば何を思い浮かべるだろうか。
とんこつラーメン?
もつ鍋?
明太子?
多くの人が思い浮かべるであろう食べ物の数々。
そう、福岡は飯が美味い。
『福岡県と言えば!』
という質問に観光地を返せる人はなかなかいないのではないだろうか。
(志賀島で金印!という通っぽい回答)
福岡は飯。
何を食べても美味いそれが福岡の真骨頂である。
そんな福岡グルメの中で僕が特に食べたかったもの。
それが『水炊き』だ…!
もつ鍋という圧倒的福岡県の広告塔。
電通かよ。
福岡県を牛耳る存在かよ。
そんな強大な存在に隠れたいぶし銀的な存在。
それが福岡名物、水炊きである。
(他県からの視点)
もつ鍋は東京にいても割とどこでも食べることができるが水炊きは違う。
水炊き専門店を見たことがないどころか、そもそも水炊きを食べた記憶がほとんどない。
幼少期に家で数度食べたような気もするが、お湯に鶏が浸かっていた曖昧な記憶。
まさに水炊きである。
しかし本場福岡では上質なスープに鶏が浸かっているらしい。
全然『水』じゃない!
水で鶏を炊いて食べるわけではなく。
水で炊いたスープを使うから水炊きなのだろうか。
ということは大体の鍋物は水炊き…?
もはや概念レベルで水炊きへの困惑が止まらない。
今更ながら自分が水炊きを全く理解できていないことに愕然とする。
水炊きとは一体…?
今回はせっかく福岡に来ているので、専門店で水炊きをいただいてみようではないか。
自分の人生に水炊きという新しい1ページが加わる。
そんな素敵な物語を刻むのがこちらのお店。
博多水だき 新三浦。
初めての水炊き専門店。
心行くまで水炊きを堪能しようとコースを注文。
まずは瓶ビールでウォーミングアップ。
えっ…お通しうま…
昼から飲むビールが最高なんだよなぁー!
などと言う前にお通しが美味すぎて黙ってしまう我々。
本当に美味いものは人を黙らせる力がある。
実力で黙らせるとはこういうことを言うのか…
(かわいくない後輩の例)
鳥皮がさっぱりと仕上げられている。
ただこの鳥皮の旨味が濃い。
お通しが美味い店にハズレなし。
否応にも上がる水炊きへの期待値。
しかしそうやすやすとメインにはいかせてくれない。
焦らしこそ最大のスパイスなのだから。
サラダが焦らしとかそういうレベルを超えてくる。
『サラダです』
とさりげなく提供してきたがこんなに鳥が美味いサラダは他に知らない。
しっとりとかじゃない。
もう肉刺しとかそういう方向性に近い。
瑞々しく柔らかな鶏肉とともに食欲の高まりを感じる。
早く…早く水炊きをください…!
これが…水炊き…?!
白い!
スープが白い!
ただのお湯じゃない!
これが本物の水炊き。
炊きに炊いて炊き尽くしているこの白さ。
『旨味すごいんだろうなー』
さすがに見て分かるこの白さ。
まずはスープから…
これが専門店の流儀らしい。
塩とネギを散らして。
うんまぁぁぁぁぁ!!!
これがベースの鍋?!
これで煮た鶏をポン酢につけて食べる。
このスープだけで全然いけるじゃん…
ポン酢…いる…?
唇がペタペタするほどの鶏の濃度。
これは炊いてますね。
えぇ、この上なく炊いています。
既に水炊きの底力に震えて眠るレベルなのだが、ここから本領発揮。
骨付きなのがまた良い…!
骨が付くと肉は倍増しに美味くなる。
人類誕生初期の記憶が蘇るのだろうか。
(マンモス肉的な)
そしてこの鶏肉の柔らかいこと…!
少しくわえるだけでホロリとほぐれる鶏肉。
ポン酢の爽やかさと相まってこれは無限に食べられる。
胃袋の限界まで鶏肉追加したい。
そしてこのお出汁で煮る野菜が美味すぎてもはや野菜ではない。
もはや肉。
(野菜)
春菊が美味しすぎて春菊をキロ単位で追加したくなる。
そして水炊きは〆が強力すぎると思う。
こんな雑炊美味いに決まってるじゃん…
むしろこの〆が食べたくて水炊きを選んだ感すらある。
日本人であれば誰もが渇望せずにはいられない一椀の引力。
2022年食べた液体で一番美味い。
(確信)
ちょっとこれは美味すぎる。
ずっと食べたい。
もう勘弁してくれとなるまで啜っていたい。
漬物や佃煮などちょっとしたアクセントもたまらない。
雑炊の味を妨げずむしろ旨味を分かりやすく加速させている。
水炊きの満足度が凄まじい。
これは福岡必食のグルメなのではないだろうか。
個人的にはもつ鍋、ラーメンをも超える破格のスペック。
これは妻を連れて行かなくては…
ちなみに妻は福岡県民なのだが。
東京都民、東京ばな奈食べたことない説に似たようなスタンスでお店で水炊きは食べたことがないという。
何のために福岡に生まれたんだ?!
(あんまりな物言い)
こんなに美味いものが近くにありながら…
もつ鍋という主力を据えて対外的にこれをサブ扱いする福岡県の食の戦闘力に愕然とする。
近すぎる距離感は時として人の目を曇らせる。
気付かせなければならない。
福岡県民の妻に福岡の食の素晴らしさを。
機会を見つけて妻を水炊き専門店に連れて行かなくては。
鮮烈な福岡グルメ体験。
僕は今や水炊きに夢中である。