妻の誕生日が来月に迫っている。
せっかくだし少し良いお店でランチでもという話をしたのだが一つ気がかりなことがあった。
『着ていく服がないというお店以前の問題』
以前18キロのダイエットに成功したこの僕。
デブ期に着ていたボディラインを巧みに隠す服の数々。
緩いシルエットと縦のストライプにはとにかく敏感なデブだったのだが今やもうサイズが合わない。
そうして大量の服が捨てられ新しいものに入れ替えられたわけだが。
デブ期に社会通念的から着ることのできなかったスポーツカジュアルや無地への憧れが新調した服のチョイスを偏らせた。
(デブによるスポカジと無地の神格化)
今や見事にアディダスのトラックパンツを始めとしたスポーツカジュアル。
そして無地にアウターを羽織らせておくというスタイル強調型のテンプレートしか存在しない。
デブ期に培ってきた社会的負い目を、痩せた今存分に晴らしてやろうという怨念めいたものすら感じる。
デブ期に抱いたスポカジや無地を着こなす人への歪んだ憧れは凄まじいものがあった。
『ヨガやってそう』
『朝食をスムージーだけで済ませてそう』
『行きつけのスタバで無尽蔵にカスタマイズしてそう』
もはや行き過ぎた憧れが服装を飛び越えた偏見として顕現している。
しかし今や僕はデブではない。
173センチにして64キロ。
健康診断A判定の圧倒的健康優良児と化した僕はもはや何かを目指す側ではない。
目指される側なのだから。
(自尊心の病気)
このような複雑に抑圧されていた欲求と自尊心が服装の偏りを生み出していた。
少し良いお店でランチコース。
そこにトラックパンツで行くわけにはいくまい。
走る必要はないのだから。
無地コーデは悪くはないが襟が欲しい。
ゴルフ場もそうだが、少しフォーマル寄りな場所では襟が欲しい。
ガチガチのドレスコードがあるような店に行くわけではない。
しかし小綺麗な服装で行くぐらいのお店は選びたいと思っている。
少しお洒落をして楽しむ。
子育てをしていると特にこの非日常感は凄まじい。
子どもと過ごす休日など、食べこぼしやよだれ、鼻水などどんな汚れすら受け止める服しか着ない。
(赤ちゃんという液体垂れ流し生物)
しかしそんな中で記念日ぐらいは少しお洒落をするということ自体が楽しい。
なので妻の誕生日もそんな非日常感も合わせて楽しもうと思っているのだが。
ここで冒頭に戻る。
『そんな服持ってねぇ…』
(圧倒的日常)
1セット買わなければ。
どうせゴルフか食事にしか使わないのだから1セットあれば十分だろう。
しかし元より服にそこまで興味のない僕だ。
こだわりも無いのだがダサいとは思われたくない。
誰だってそうだろう。
ダサいと思われるよりはお洒落と思われたいだろう。
ただ、そのために服飾の知識を学ぶほど服に興味が無い。
今の僕がどんな状態かというと
『勉強はしたくないけど有名私立大には入ってモテたい』
そんな感じだ。
(志が最底辺)
一応ファッション誌も数誌読んでみたのだが何の参考にもならなかった。
30代ファッションのモデルはどうしてもこうも外国人ばかりなのだろうか。
造形が全く異なるせいで全然自分に置き換えたときのイメージが湧かない。
僕のライフスタイルは紙面上で外国人が繰り広げているほどお洒落ではないし、ちょい悪でもない。
もっと地味な顔の30代を対象にしたファッション誌を売り出してほしい。
『あなたも風景の一部!無難コーデ!』
みたいな特集を組んでほしい。
(ファッションとは)
ファッション誌から何のインスピレーションを得ることも出来なかった僕。
しかし僕には流行を決して外さない服の選び方がある。
『かっこいい!』
とは言われなくとも
『ダサい!』
とは決して言われることがない鉄板の買い方が。
それがそう!
『マネキン買い』
だ…!
どのアパレルショップもマネキンに命をかけているように思う。
マネキンこそ、その店の第一印象。
何をするにもファーストインプレッションというのは大事だ。
そんな第一印象をわざわざダサいもので仕立てるわけがない。
奇抜すぎる近寄りがたいものにもしないだろう。
万人に目を引いてもらえる、最低限の流行は意識したアイテム。
そんな店一押しの服がマネキンに着せられるのではないだろうか。
要するにだ。
そんなアパレル店のセンスを具現化したマネキンコーデ。
これと同じものもしくは似たものを一式買うことで僕の理想のファッションは完成する。
(ダサくないそれなりに見栄えするもの)
こんなに楽な服装の選び方があっていいのだろうか。
ある程度お気に入りのショップだけ心得ておけばあとはその店に入るだけ。
マネキンを見ればトータルコーディネートがされている。
それはそれなりに高水準であろうアパレル業界の方のセンスで組み上げられているわけである。
もはやお洒落でないわけがない。
(圧倒的店員さんへの信頼感)
そうして先日好きなショップ
『NOLLEY'S』
にて綺麗系の私服を新調してきた。
ここの服は比較的手も届きやすい価格帯であることはもちろん、デザインに遊びがあるのもいい。
ちょっと可愛い要素が入っていたりする服が僕は好みだ。
色々なアイテムを一応漏れなく見る。
個々には好きな服などを見つけるのだが、それをどう組み合わせていいのかという引き出しが僕には圧倒的に少ない。
(コーディネート不可)
その上この日は一目惚れのマネキンを見つけてしまったのだ。
(文字から漂うサイコ感)
これはもうお前を買うしかない。
(サイコ)
そうして手に入れたトータルコーディネートがこれだ!
まずはシャツ。
淡いピンク色に熊のワンポイントが可愛い。
ボタンダウンになっているのも使いやすくて良い。
そしてシャツの上から着るのはこちら。
何か無難なニット。
ピンクとネイビーは相性がいい。
素材も何だかゴワゴワしていて丈夫そうだ。
(詳しくないので表現力が皆無)
そして綺麗な感じのパンツ。
細くてストレッチがきいている。
こちらも何だか素材がスーツとチノの中間のような。
何か綺麗な…感じが…する…
(表現不能)
極小の格子柄のような感じでさりげない可愛さもまた良い。
そして最後はコートを羽織る。
シンプルイズベスト。
恐らくこれはステンカラーコートというものだろう。
(もはや断定不可)
チェスターコートとは何が違うのだろうか。
そしてこれはもしかしてチェスターコートなのだろうか。
もはや何も分からないが何か綺麗。
(アホの子)
長すぎず短すぎずの丈にスマートな着心地。
サラリと着られるグレーのコートはさりげないお洒落を演出する。
(と思う)
お店の人も
『この組み合わせ凄く良いと思いますよ!』
と言っていた。
それはそうであろう。
お店がマネキンに着せているぐらいなのだから。
すごく良いに決まっているしすごくお洒落に決まっている。
(もはや清々しい)
『他のアイテムも着回ししやすいですよ!』
とも言っていたのだが、そのビジョンは僕にはイマイチ見えていなかった。
着回しのマネキンももう2体ほど用意しておいてほしい。
たまには私服を買うべきだと思った。
自分の感性があまりに死んでいることを実感した。
これからは季節ごとに服を買おうと思う。
(春夏秋冬)
今回総額3万5千円。
コートやパンツも買ったことを考えると総額としてはかなりコスパが良いのではないだろうか。
次は春だ。
春はどんなマネキンと出会えるのだろうか。
NOLLEY'Sの春に期待したい。