夏休み。

 

麦わら帽子はもう消えた。

田んぼの蛙はもう消えた。

それでも待ってる夏休み。

(まさかの吉田拓郎パワープレイ)

 

この大都会東京。

コンクリートジャングルの蜃気楼に浮かぶビル街。

夏の風景がこれでいいのか。

 

見に行こうではないか。

地平線に広がる田園風景を。

 

1年に1度のスペシャルイベント『会社員の夏休み2021』がやってきた。

(有吉リスペクト)

 

中学時代からもう20年になろうかという付き合いの友人3人。

僕を含めた4人で過ごす2泊3日ののんびり旅行。

年に一度の定期イベントとしてここまで心躍るものは他にない。

 

気の置けない仲間とのリフレッシュできる時間。

 

人生に必要なのは時間と、それを共にできる友人である。

 

村上春樹が何かの作品でそんなことを言っていたような気がする。

(初級ハルキスト)

 

この4人。

ド平日に有給を合わせて申請するのだから社会人の鑑だと思う。

人生こうでなくてはいけない。

 

心のゆとりが良い仕事を生むのだ。

僕はゆとりが有り余るのでもっと仕事をすべきだと思う。

(自己分析だけは冷静なタイプ)

 

さて、今回の旅の目的地は東北。

大自然を満喫し、お宿でのんびりする。

密にならないよう配慮しつつ、東北の経済に少しばかり協力する。

頑張れ東北。

 

こうしてレンタカーを走らせた我々が最初に訪れたのはこちら。

初日ランチタイムである。


今回の旅の行程はこうだ。

 

1日目:福島県の秘湯

2日目:宮城県の秘湯

3日目:震災遺構を見学しつつ帰宅

 

初日は福島県。

 

経由地であった郡山には

『郡山ブラック』

なる名物があるらしい。


戦隊モノでスペシャル回に出てくるお助けキャラじゃん。

そんなことを考えながら注文してみる。


これ以上ないぐらいそそるビジュアル…!

 

こちら枡はん。

郡山ブラックラーメンの元祖と言われているお店である。

 

町中華のお手本とも言える半炒飯がいい。

これはもはや形式美と言っていい。

 

そして肝心の郡山ブラック。


黒い…!

(コパトーン)

 

ラーメン界のベストボディジャパンやぁー。

彦摩呂ならこう言うだろうか。

いや、言わない。

 

一応補足しておくがベストボディジャパンに出る筋肉塊は皆黒くてテカテカしている。

(偏見)

 

一口食べて驚愕。

 

全然味が濃くない…だと…?!

 

見た目で分かる第一印象が『味が濃い』だけなのに。

まさかの根底から第一印象をひっくり返す豊かな味わい。

 

子猫を拾う不良かよ。

募金する不良かよ。

児童福祉施設を生涯かけて守る不良かよ。

 

どこか昔懐かしい香りに醤油の旨味。

ほろ苦さと酸味が食べていて全く飽きない。

醤油のキレをかなり感じる。

 

見た目はシンプルでいかにも

『これでいいんだよ』

のラーメンを体現しているが、その中身はとても複雑な味わいを構築している。

 

麺も口当たりが優しくてスープによく馴染んでいる。

チャーシューは溶ける。

これには一番驚いた。

 

ご当地ラーメン郡山ブラック。

家の近くのファミマが1つ潰れてこのお店にならないだろうか。

(2つもいらないファミマ)

 

あれば通うほどに美味い郡山ブラック。

ご当地ラーメンの世界は本当に面白い。

 

そしてランチを終えた我々は郡山駅でこんなものを入手する。


ロミオのクリームボックス。

 

これもまた郡山のソウルフードらしい。

どんなものかと中身を見てみるとなるほど。


要するにクリームパンね。

(高みの見物)

 

この時点でメンバー一同完全にクリームボックスを下に見ている。

食パンて。

朝食かと。

せめてもう少しパンに施すべき工夫があったろう。

食パンにクリーム塗っただけのものがソウルフードとは。

郡山のソウルも底が知れたものよ。

 

正直誰も口には出さなかったがこれぐらいは思っていた。

(心が邪悪)

 

その証拠として、肝心のクリームボックス本体の写真を撮れていない。

このパッケージの写真のみでクリームボックスは終わっているのだ。

 

商品の説明を見て底を知ったように勘違いし、写真を撮ることすらしなかった我々がその愚かさに気付くのにものの数秒もかからなかった。

 

一口食べて己の考えの浅はかさを知るインパクトがクリームボックスにはあった。

 

『美ッッッ味ぇぇぇ?!』

 

ただのクリームパンなど言語道断!

おかしい。

これは美味すぎる。

 

『俺は一口だけでいいかなー』

 

と言っていた友人がおかわりを懇願してくるレベルで美味かった。

 

まずパンのクオリティだ。

全然ただの食パンじゃない。

水分量多めのモチモチ食パン。

食べていてとても楽しい。

 

そして真骨頂とも言えるミルククリーム。

パンにのせているだけとは思えないボリューム感。

シュークリームかと思った。

 

そしてミルクの優しい風味ともったりとした甘み。

口内が多幸感で戦争がない世界だった。

(真の平和)

 

お前は東京で全てを手に入れている気になっていないか?

東京で全てを知った気になっていないか?

 

自らの価値観、経験の浅はかさと傲慢さを知り震えた。

ロミオのクリームボックスは価値観をぶち壊すほど美味い。

家の近くのファミマが潰れてロミオにならないだろうか。

(2店舗とも郡山により制圧)

 

郡山ブラックとロミオが来るならファミマがなくても全然構わない。

所詮ファミマなど都合よく使われていただけの三下でしかなかったのだ。

 

こうして郡山の食を存分に堪能した我々はお宿の近くまで移動することにした。

 

チェックインにはまだ早いので近隣で少し時間を潰す。


安達太良山ロープウェイ。

 

登っていく。

競争だらけの醜い下界はもうコリゴリだ。


ありがたいなぁ。

(解き放たれた人)

 

この世に生を受けたことに。

日々を健康に過ごせていることに。

感謝がこみあげてくる。

 

だってこの景色だ。


この上の空がほんとの空です。

 

東京の空など偽物だ。

六本木ヒルズからの夜景?

スカイツリーのイルミネーション?

ちゃんちゃらおかしいわ!!!

 

そんなものはなぁ!!!

東京に食い物にされた夢破れし若者たちが絶望して見上げた虚空の空だろうがよぉぉぉ!

(断末魔)

 

『夢破れし』

と変換すると最初に

『夢破れ死』

と出てきた。

これが東京の本質である。

あまりにも残酷ではないか。

 

それがこの安達太良山はどうだ。


透き通りただそこに在る。

 

これが空。

僕たちが見上げる本当の空だ。

 

何を言っているのか分からないだろう。

僕も分からない。

 

これは感じるものなのだから。

 

こうして大自然に解き放たれた我々は初日のお宿へ向かうこととした。

 

今回の旅のお宿は全て『日本秘湯を守る会』で予約している。

 

ここにピックアップされているお宿は間違いがない。

次回は存分に初日のお宿の全貌を味わってもらおうと思う。