頭が頭痛で痛くてすごく痛い
頭痛で頭が痛い。
(偏差値低下)
ここ最近の天候、気圧が僕を苦しめる。
天候や気圧の影響による人体の神秘。
何とも奥深い片頭痛の世界にどっぷりと浸かってしまった僕の日常。
これもまた自然の脅威と言えよう。
片頭痛と付き合い始めて2年ほどになる。
今回はそんな片頭痛と僕の刺激的な出会い。
そして片頭痛と重ねてきた逢瀬について綴りたいと思っている。
僕は今も思っている。
『あなたになんか出会わなければよかった』
と。
(こんなに湿っぽい展開ではない)
左目が見えない…だと…?!
それは激務が続いていたとある昼下がりだった。
おびただしい量の資料作成をただただこなす日々。
出会いはいつだって唐突でドラマチックだ。
『あれ…左目が見えないな…』
明らかに視界がおかしい。
左目が見えないというよりは視界の左側がギザギザの光に覆われている。
資料を作っているのに左側の光が邪魔で見えない。
その時のイメージ図がこれだ。
突如ギザギザの光に視界を奪われた僕。
左半分が光に占拠されているのである。
その瞬間、率直にこう思った。
『これ死ぬやつじゃん…』
(諦め)
ものすごいスピードで思考が巡っていく。
視界=脳
視界がおかしい=脳がおかしい
脳がおかしい=被害が大きい
被害が大きい=死
(死に直結する振れ幅)
早々にネタバレしておくのだが、これは片頭痛の症状である。
(僕はピエロ笑ってほしい)
それを皆さんは知った上で、当時何も知らない僕のパニックぶりを楽しんでほしい。
繁忙期だったこともあり、当時の僕の仕事量はそれなりのものになっていた。
目も脳も酷使し、疲労も溜まっていたことだろう。
そこで突然左半分の視界を失うのである。
『はは…人の命はこんなにもあっけない…』
そんなシニカルな台詞を吐く余裕などもちろんない僕は一先ずデスクを立ち外へ出た。
職場で騒いで変に心配されたくはない。
一度外の空気を吸って落ち着くこととする。
一刻も早く救急車を呼びたい気持ちになりつつもそれなりの冷静さが残っているのが労働中毒患者のそれである。
残っている仕事で迷惑をかけないようにしたい
そもそもこれは救急車を呼んでいいような案件なのか
あわよくば仕事に戻りたい(病)
人は未知のものに恐怖するというものだ。
一先ずは専門家に聞いてみよう。
少しは安心する答えが返ってくるかもしれない。
僕は『7119』へ電話した。
救急安心センター窓口だ。
ここに電話すれば救急車を呼んでもいいのか、アドバイスをもらえるので覚えておいてほしい。
担当者
『どうされましたか?』
僕
『先ほどから視界の左側が見えなくて頭が痛いです。』
担当者
『今どこですか?!外ですか?!』
僕
『(えっやばい雰囲気なの…?)外です。』
担当者
『座れるところがあれば座ってください!倒れてしまっても危ないので!』
このあたりで僕は思った。
『倒れるの?!死ぬの?!』
それはもう立派なパニックである。
僕
『座りました。これって病院行った方がいいのでしょうか?』
担当者
『左右で目の開き方が違うとか、口が痺れるとかはありませんか?』
僕
『多分…大丈夫だと…思うのですが…』
人間不思議なもので、こう言われてしまうと何か異変があるように見えてしまって自信が持てない。
(僕は弱い生き物です)
その後いくつかのやり取りがあり話がまとまった。
担当者
『救急車を呼ぶ緊急性は無いと思いますが、出来る限り早く病院に行きましょう!』
僕
『あっ…はい。急いで行きます…。』
担当者の方の勢いもそれなりだったので、それなりに焦る僕。
(語彙)
救急車は呼ばないにしても早く病院には行く必要があることが判明した。
その日休みだった妻に電話し状況を伝える。
医療従事者の妻は状況の飲み込みが早く明らかに焦っていた。
『歩くな!倒れたらどうする!タクシー乗って病院行け!』
有識者の焦りは無知の者の焦りを煽る。
僕はこう思った。
『えっ?!僕そんなにやばいんですか?!』
もはや敬語である。
パニックすることに疲れ、逆に冷静になってきた僕は自分を超える焦りを見せてくる有識者に再び焦りパニックを取り戻した。
(必要な危機管理能力)
『急いで病院に行かなくては…』
妻がすごいのはこの時点で向かうことのできる救急外来を予約していたことである。
仕事をしている姿は見たことがないが、きっと仕事が出来る人なのだろう。
妻
『この病院予約したから早く行け!』
人生で必要なのは頼ることが出来る人だとこの時強く思った。
急いで職場へ戻り上司に伝える。
僕
『左目が見えなくて頭が痛いので病院行っていいですか?』
上司
『えっ?!救急車呼ぶぞ?!』
当たり前の反応である。
もう少しマイルドに伝えればよかった。
しかし上司への報連相は端的に分かりやすくが基本なので仕方がない。
結論を先に述べた方が良かったという意味では…
『病院に行ってもいいですか?目が見えません。』
これがベストだったのかもしれない。
(ダイナミック報連相)
僕が上司だったらパニックになるだろう。
しかし僕の上司は人間の器が大きいので冷静に送り出してくれた。
配車アプリでタクシーを召喚し救急外来へ向かう。
窓口で予約している旨を伝える。
するとそれなりの焦り具合で担当の人が来るではないか。
『歩いても大丈夫なんですか?!』
その手には車椅子まで持参されている。
一体僕の病状は予約段階でどのように伝わったのだろうか。
僕は思った。
『そういうレベルなの?!死ぬの?!』
車椅子という圧倒的緊迫感。
もちろん歩けたので歩いた。
(精神がストイックな方)
そして救急外来の先生の元へたどり着いたのである。
閃輝暗点ですね
症状を伝え、いくつか検査をされた。
そして先生はあっさりとこう告げたのだ。
『センキアンテンですね』
技かと思った。
剣撃とかの類かと思った。
先生
『文字で書くとこうです』
閃輝暗点。
まさに文字通りの症状である。
そうです。
閃光みたいな輝きに邪魔されて視界に暗点が発生してました。
どうやらこれは片頭痛の仲間のようなものらしい。
僕の場合はこんなフローだ。
①視界が消滅(閃輝暗点)
②30分ぐらい休むと視界は戻る
③その後強めの片頭痛襲来
要するに閃輝暗点は片頭痛お知らせアラームだったのだ。
視界をジャックすることで片頭痛の襲来を伝える若干効果と釣り合わない特殊能力。
しかし分かってしまえばなかなか便利なものである。
閃輝暗点が発生し、収束するぐらいに鎮痛剤を飲めば片頭痛を快適に乗り越えることが出来る。
突然片頭痛のアラーム機能を手に入れた僕。
アメコミ作品でよくある突然能力に目覚めるタイプの主人公である。
特に問題が無いことが分かった僕は先生に聞いた。
僕
『会社戻って仕事してもいいんですよね?』
先生
『今日だけでも帰るじゃダメですか…?』
先生は引いていた。
妻も同じような反応だった。
(労働中毒者のそれ)
会社に戻った僕。
上司も引いていた。
僕
『ただの片頭痛でした!申し訳ないです!』
このあと滅茶苦茶資料作った。
仕方ないではないか。
様々な事情でこの日にやらなければならない仕事が山積みだったのだから。
頭痛外来という救世主
その後も閃輝暗点は度々発生した。
それに伴い片頭痛とも付き合っていかなくてはならなくなった。
天気の悪い日や気圧が荒れる日などは気が重い。
かかりつけの内科で処方してもらっていたのが大量のロキソニンである。
胃薬とともに薬漬け人間の完成。
(痛覚を失ったモンスター)
しかしある日頭痛外来の存在を知ることになる。
片頭痛に強い先生がいる内科。
家が近かったこともあり僕はかかりつけをそこへ変更した。
そして処方されたのが片頭痛に効き目があるという薬だ。
どうやら通常の痛み止めではなく、片頭痛にピンポイントの薬らしい。
頭痛外来という安心感。
こんなピンポイントの処方もしてもらえるのは嬉しい。
片頭痛に悩む方は頭痛外来というのも調べてみるといいと思う。
調べると大量に出てくる。
こうして今は閃輝暗点というアラーム機能とともに片頭痛と上手く付き合っている。
あの日『死ぬかも』と思った恐怖は忘れられない。
(哀しきピエロ)