富士山 登山ルート3776

概要については前回記事より

 

2年前。

そこは富士山最寄りの海。

30歳の挑戦が今幕を開けようとしていた。

 

いよいよルート3776がスタートする。

初日の行程はこうだ。

何てダイナミックな行程なの?!

 

空撮のインパクトが凄まじい。

これはネタ画像ではない。

富士市がリリースしている立派なものだ。

 

僕はもう大人を信じることができない。

これが良識ある大人が考えることか?!

(褒めてる)

 

そんなわけで初日は最寄りの海から山のお膝元であるキャンプ場を目指す。

 

初日の道のり

本来の1日目12.4キロ

本来の2日目14.8キロ

計27.2キロ。

 

日程を圧縮したことによるインパクトがことのほか大きいものになってしまった。

 

これ以上考えても心が折れそうになるだけなので無心でスタート地点へ向かう。


東京から富士山最寄りの海まで約2時間。

朝の通勤ラッシュのせいか人が多かったことが誤算である。


一度も座ることなく約2時間立ち続けた我々は早くもクライマックスを迎えていた。

(まだ始まってすらいない)

 

完全装備のザックを背負うたびに思う。

『全部道端に捨てたい』

と。

(重量約15キロ)

 

こうしてすでに満身創痍の我々はここまでやってきた。

ここで一泊して明日からやりたい。

(クライマックス感で満腹)

 

しかしやはり挑戦というのは心躍るものだ。

正真正銘海抜0メートルからのスタート。

 

初日は市街地ウォーキングとキャンプ場までのハイキング。

そのため運動靴と軽装で臨む。

このあたりの装備使い分けによる荷物増も後半ボディブローのように効いてくる。

 

しかし富士登山の光景としてこれはなかなか貴重ではないだろうか。

まさに富士山を目指して歩みを進めていく。

 

2日後にはあの頂上に立っているのか。

不思議な気持ちだ。

 

遥か遠くに見えるその頂だが無理な気はしない。

一歩一歩。

今はまだ現実味がなくても、歩みを止めなければ確実に近付いてくる。

 

頂上へ立つ自分を想像しワクワクが止まらない。

 

ちなみに黄色ザックが私だ。

みんな眼鏡なので間違えないようにしてほしい。

(眼鏡は眼鏡を呼ぶ)

 

ひたすらに歩き市街地を踏破する我々。

約13キロかけて市街地を抜けると段々雰囲気が出てくる。

青春の1ページ。

 

30歳になったって仲間が集まれば青春だ。

この時はまだこんな風に凝った写真を撮る元気があった。

(元気のピーク)

 

この先は富士山お膝元へ向かうハイキング。

初日目的地のキャンプ場まで緩やかな山が顔をのぞかせる。

 

本来は2日目にハイキングを楽しんで翌日の登山に向けた準備運動にするのだろう。

しかし我々は日程を圧縮してしまっているのだ。

 

市街地を抜けた後の追い打ちがこの緩やかなアップダウン。

約15キロものラストスパートである。

(ラストスパートの概念)

 

ここでさらに困ったことが起こる。

突然の悪天候だ。

 

この挑戦の数日前、静岡県は悪天候に見舞われていた。

突風や竜巻の発生により住宅地にも被害が出るなど挑戦の可否を心配していたぐらいだ。

その不安定な天候がここへきて荒れ狂うこととなる。

 

豪雨に雷にと大盤振る舞いである。

30歳の挑戦だからといってここまでドラマチックに仕立てる必要はない。

必死にキャンプ場を目指したためもはや写真すらない。

 

我々は貴重な長期休暇を使って一体何をしているのだろうか。

もっと他にやることはなかったのか。

 

この日は到着予定時間を大幅に超えて何とかキャンプ場に到着。

温かい部屋、何より屋根がこんなにも嬉しいとは。

 

キャンプとはいえ疲労回復を重視しコテージを利用した。

初日を乗り切ったご褒美に。

BBQで30歳を祝おうではないか!

 

やはり仲間が集まれば青春だ。

こういった楽しみもないとやっていけない。

20年にもなろうかという友人と頑張った後のBBQ。

楽しくないわけがない!

表情に生気が戻る。

 

ちなみに外は豪雨である。

翌日のことを話す者は誰もいなかった。

(現実逃避)

 

ここはキャンプ場。

飯盒炊飯だって楽しんじゃう。

だって30歳だもん!

(現実逃避中)

 

ステーキ肉も1ポンド頼んで焼いちゃう。

飯盒炊飯でステーキ丼にしちゃう。

だって30歳だもん!

(現実逃避中)

 

ちなみにこのステーキ丼。

とんでもなく美味しかった。

 

和牛のサシが素晴らしくワサビをのせれば空前絶後の味わい。

和牛を愛し和牛に愛された男。

 

酷使した筋肉に染み渡るたんぱく質。

空腹の胃を揺さぶる炭水化物そして脂。

 

皆ガツガツ食べた。

あれほどにガツガツという表現が似合う食事風景はない。

ガツガツ言ってた。

もう音が出てた。

 

そしてキャンプの醍醐味は焚火だろう。

焚火を囲んで語らう時間。

 

『今日は貴重な経験が出来た!』

『こんな経験が出来たのも仲間のおかげだ』

『中学の頃はこんなの想像もしなかったな』

 

友情を確かめ合うように語らう僕ら。

そこにはまるであの日の素顔のままの僕らがいた。

(陽のあたる坂道/Do As Infinity)

 

そしてどこか迷いを断ち切った表情で友人は言った。

 

『明日どうしようかこれ』

 

誰も何も言わなかった。

言わなくたっていい。

僕らは心で通じ合っているのだから。

(満場一致で帰りたい)

 

しかし30歳の挑戦。

 

無論我々だって生半可な気持ちでやっているわけではない。

それがたとえ仕事ではないにしても。

それがたとえ貴重な長期休暇の使い方として疑問を持つものであってもだ!

 

ちなみに友人は悪天候で歩く中こう言った。

 

『楽しむ登山ならもう辞めてるなこれ』

 

我々の長期休暇の使い方は正しかったのだろうか?

(哲学)

 

しかし山をナメてはいけない。

続行の可否は翌日の天候に委ねる。

 

今日は続行するつもりで早く寝よう。

疲れをとって明日も頑張ろう!

 

こうして我々の初日は幕を閉じた。

 

翌日。

我々はとんでもない体験をすることになる。

富士山が牙をむく2日目。

ドラマが始まろうとしていた。