想像してみてください。
高校を卒業したものの、仕事も無く、ただぶらぶらする毎日。
ある日、行政の人がやってきて、「土のうの訓練に参加してみないか」と。
「土のう?」 何かよくわからないけど、昼食代を貰えるらしいし、参加してみよう。
連日泥まみれ。うえ~。大変だ!
作業も疲れてきた昼下がり。
そこへひょこひょこと、小さなおじいさんが登場。
「よっ!」
おじいさんは靴や手がドロドロになるのも構わず、一人一人と握手をします。
「元気? どこから来たの? 作業大変だね。お疲れさま。」
そして、会話が始まります。それも流暢なスワヒリ語で。
「市場で売ってるキャベツはいくら?」
「100kshくらいかな」
「この数百メートルの道路直しはその数万倍のお金が動くんだよ」
「へーえ」
「へーえじゃないよ。君たちも道路会社を作ったら、こんな仕事を受注することができるんだよ。今回の土のうの訓練で技術を学んで、みんなで会社を作るんだ。これまでケニア各地で多くの若者がそうやって会社を作って、今ではトヨタに乗ってるよ」
「えー!」
「君たちは訓練を受けるチャンスを掴んだんだよ。この仕事、大変だな、なんて思っている場合じゃないよ。この1か月間を無駄にせず、技術の全てを学ぶ気持ちでね!」
「そうか!」
「人生は一度きり。毎日仕事もなくぶらぶらして過ごすか、ビジネスで成功してバリバリやるか、君たち次第だよ!頑張って!」
「そうだ!頑張ろう!」
おじいさんは全員を集めるわけでもなく、排水溝を回っては、一人一人に丁寧に話をします。
仕事も無い自分たち。ケニア人の大人たちからもあまり相手にされません。
ですが、この外国人は対等に向き合って、スワヒリ語で真剣に話してくれる...
若者たちの目の輝きの変化。
「土のう訓練を受けたケニアの若者グループが会社を設立し、契約を受注し、自立する」
この一文の裏にある喜田の情熱。
身内ながら、感服でございました。
私もそんなことを言っている場合ではないですね。



