東京愛情 荒木経惟を実際に手に取って読むことができましたので、感想を綴っていこうと思います。

 

 

まず初めに、森山大道や川内倫子などのスナップ写真家に僕はかなりの影響を受けていますが、実をいうとアラーキーってあんまり馴染みがなく、『なんかせくしーなポートレートを撮っているひと。』というのが今までの印象でした。(いわゆる普通の街中スナップの写真集があることも知ってはいましたが、なんか色々分岐点がある写真家というような印象もあり、血迷ってた時の写真集がそれにあたるというようなふうに勝手に思っていた節はありました。)

 

 

やっぱりド派手でスケベな感じの写真こそアラーキーというような風潮は僕の好みとは少し離れていまして、実際手に取ってみてみるとそれもひっくりかえるような、とても良い写真集であったので取り上げようと思いました。

 

アラーキーの人物像などは詳しく無いので一切語らないこととします。

 

 

この東京愛情という写真集は、生きていればほぼほぼみんなが経験するような場所でたくさん撮影されており、なにが現実と離れた感じがする写真集というよりは身近で素敵な瞬間がたくさん収められているといったような印象を受けました。

 

まさに、思い出にアルバムをめくっているような感覚になります。

 

例えば結婚式、卒業式、ヨガ教室に行ってみた時の写真、老人ホームに行った時の写真、などなど

 

長い人生を津々浦々と歩いていると流れてくることたちを、モノクロの写真集ですが色鮮やかなに切り取っていると思います。

 

 

なぜそう思うかという話ですが、

被写体の方々がみんな心の底から楽しそうだったり、真剣な表情だったり、あまり着飾ったりカッコつけたりしてる感じもなくて、自然で美しく、人の心まで綺麗に写している感じは、写真技術としてはそうなんですが、上手い写真というより、いい写真というのをわかりやすく体現してくれていると思います。(被写体の方と撮影者の間に何か関係性があるのかはわかりませんが、皆さん自然でとても良い表情をしてくれています。)

 

 

この感じって我々プロが撮った写真にはあまりない、親が撮っていたおうちのアルバムの感覚にすごく似ているんですよね。

 

何か見ているだけで少しニヤッとしちゃうような、そういえばこんなことあったなーみたいな。

 

でもそう感じる写真って、めちゃくちゃ構図が綺麗とか写りが綺麗だとかブレてないとか、本来技術的に良し悪しとされるようなそんな些細なことはどうだってよくて、何か感じるというか、気持ちが動くというか、そういうものが本来あるべき写真の姿だと僕は昔から思うんです。

 

皮肉な話で写真が上手くなればなるほどこういった写真って撮れなくなってしまうと思うんですね。

そういう写真を撮れる人が下手くそって言いたいんじゃなくて、そういう人たちも一回どこかで同じことを思って、今の技術を持ったまま逆戻りできるような物凄い人なんです。

周りにもそういう素晴らしいカメラマンの方もいらっしゃいますが、そういう人は誰よりも上手い、というか突き抜けている人なんです。

 

 

話は逸れましたが、要は今まであんまり好みではなかった写真家でも、僕の好みな写真集を作っていたということにびっくりしたということが言いたかったんですね。

 

流れる普通の日常の中からいい瞬間を切り抜くような、僕がずっと取り組んできたようなスタイルの写真集で、月並みな感想ですが、すごく“いい写真“だなと思いました。