今日から写真集にまつわるブログを書いていこうと思います。

まず第一回は「PERSONA」です。

 

2004年度土門拳賞を受賞した写真集ですが、実際に手元で読むことができましたので、感想を綴っていこうと思います。

 

 

まず個人的な話なんですが、この写真集の存在は今から5年ほど前の高校2年生の時に初めて知ることになり、そこからずっと一番好きな写真集であり続けています。

 

第一回はそんなPERSONAが相応しいと思いました。

 

この写真集はポートレートの写真集で、全てモノクロで、ハッセルブラッドの中判フィルムカメラで撮影されています。

 

尚且つ撮影場所は全て浅草寺、そしてものすごく長い年月がかかっている一冊です。

 

僕が「いい写真は長い年月の切り取りをいかに上手く繋げるかが大事なんだ」というような考え方に高校2年生の段階で気付かされることとなった一冊です。

 

この考え方は今でも大切にしていて、自分の写真における大切な価値観のひとつとなっています。

 

 

 

ポートレートってなに?

 

 

昨今の写真界隈において、ポートレートは人の背景をぼかす、可愛い女の子を撮る、ふわふわさせてみる、くるくるさせてみる。。。など、その人の素の状態を撮った写真ではなくて、SNS映えを狙ったような写真って多いですよね。(それらの写真自体を否定しているわけでは無いですが。。。)

 

 

多少英語を勉強したことがある人ならわかると思うんですが、ポートレートという言葉自体には肖像といった意味がございまして、その中には肖像画、肖像写真といった意味が色濃く残っていると思います。ので、それらの写真は本当にポートレートなのか?というような疑問も抱いていました。

 

この写真集に写っている人は、皆『真っ直ぐ立って、こっちを向いてもらう』だけで、特に飾っている感じでは無いんです。

要は普通の立ち姿な訳です。

 

SNS映えの写真にずっと違和感を持っていた僕は、やっと自分のやりたいことをこの写真集で見つけた気がしました。

僕はSNS映えを狙った写真じゃなくて、その人がその時代に、そこにいた。と残せるような写真を撮りたいと思うんです。

 

 

そんな訳で、何かと今の時代に逆張りかましてるような僕が露骨に影響を受けている写真集でもあります。

 

 

 

 

以下、説明と感想。

 

そんな訳なんですが、この写真集は決まって、浅草寺にきた普通のひと、普通の日、普通の壁で撮られているんですが、1枚の写真を見ても、特にド派手な感じではなく(それなりに皆さん個性的ですが)、綺麗に露出も全ての写真で纏まっていて、非常にうるさく無いというか、見やすい写真集になっています。

 

僕は詳しく無いですけど、その日の天気や時間帯によって同じ壁でも微妙に位置が違うらしいです。

 

各写真には一枚一枚キャプションと年号が付けられていて、おおよそ30年程の差があり、それだけの長い期間を同じ場所で同じ露出で纏めて作った写真集は並大抵の労力では到底成し得ないと思います。

 

昨今の僕らは35mm判の写真に見慣れていますが、やはり中盤は立体感が凄くて、よりリアリティのある写真たちで構成されており、それにその人を簡単に説明したキャプションと年号が記されていることで、より現実的に感じて、『この人がそこに居たんだ』ということを強く実感させられます。

 

やはり人間は十人十色で色々な職業、個性、もちろんその人の人生まで人それぞれ。

どうしてもひとつの世界にいると近い人たちが集まってくるもので、本当の意味での人の多様さを実感する機会ってあんまり無いような気がします。

 

わかった気になっているだけかもしれませんが、この写真集において各写真の違うところというのは写っている人と時間だけでしかなく、本当にそこに色んな人が居たんだということをすごく実感できます。

 

なんなら同じ人もたくさん出てきます。

背景や露出は一切変わらず、もちろんカメラもレンズ変わらず、同じ人、違う時間。

 

いい写真を撮れるようになる上で色んな価値観に触れておくことはとても大切だと思うんですが、写真の道を選んだからには、読んでおいて必ず損のない一冊だと思いました。