先日、新聞の映画評で見かけた映画
「ヒンド・ラジャブの声」

ガザのまだ6歳の少女からパレスチナ赤新月社(イスラム圏の赤十字社のような人道支援組織)につながった電話
「たすけて わたしをうってくるの こわい むかえにきて」
電話を受けたスタッフ達は
なんとか彼女を救おうと手を尽くす

彼女の名はヒンド・ラジャブ。
ガザに家族と住む幼稚園のちょうちょ組さん
親戚と一緒に車で避難している最中に
ガソリンスタンドにいるところでイスラエル軍の襲撃を受けた。
叔父も叔母も従姉妹も殺されたなか、彼女は車のなかに身をひそめ、「たすけて」と電話で訴え続ける。

電話を受けた男性ボランティアもその同僚の女性ボランティアも、彼女を励まし、何とかして救急車を送ろうとする。
しかしそれは命がけの行為。イスラエル軍によって何人もの隊員の命が奪われている。上司は隊員の安全を一番に考える。
安全に救助に向かうには、何段階もの「調整」をしなくてはならない。

幼い女の子を励ましながら、何とか今すぐに救急車を派遣してほしいと上司に強く迫るスタッフ
隊員の命を守るために調整の手続きが何よりも大事と反論する上司

調整に何時間も何時間もかかる
車を出せば8分の地点にいるのにそれが出来ない。
その間にも、少女の乗っている車は何度もイスラエル軍の銃撃を受ける。


恐ろしいのは、この映画の幼い少女ヒンド・ラジャブの声は赤新月社が記録に残した彼女の肉声であること。
叔父さん叔母さん、従姉妹たちの遺体と共に、狭い車内に身をひそめ、ただ一本の携帯電話にすがりついて「たすけて こわい くらくてこわい せんしゃがくるの わたししぬの?」とたどたどしく訴え続けているのは、本当に生きて、そして殺されたヒンドの声。


そんな映画、いいの?
ひどいんじゃない?

見に行くのが怖かった

でも、見なくてはいけないと思った
見て、これが真実なのだから
世界中の人に見てもらいたい
知ってもらいたい
聞いてもらいたい
そういう声、声そのものだと思った。

映画のラストに、ヒンドの両親が提供した彼女のビデオ動画が映る。
ガザの海辺で弟と砂遊びをしている無邪気なヒンド。
確かに生きていた少女。

彼女の乗っていた車は五百数十発もの銃弾を受けて、原型を留めない状態だった。
救助に向かった救急車も爆弾によってか、これも原型を失っていた。




シネスイッチ銀座
2026.10.1日

シネスイッチ銀座は今月26日に閉館するという。このような大切な映画を上映する映画館がまたひとつ減ってしまう。