「どんなに真面目に努力したって、結果が出なければダメ」
「時代に乗り遅れる奴は所詮、それだけのものさ」
実際、(心が大事なんて、きれいごとだ。結局は、お金、能力、立場さえあれば)と思い知った経験がある。
人生経験を経る中、「見えないものを大切にする」ことを放棄し、明らかな実績を求めるようになる。
見えるものが全て、見えるものしか信じない唯物主義。
それだけで満たされるのでしょうか。
心の通い合い。人と人の絆。見えない「地」の整え。それらを見失ったら…どうでしょうか。
『バケモノの子』細田守監督の熊徹の名言。
「オレは半端者のバカヤロウだが、それでもあいつの役に立ってやるんだ。あいつの胸の足りねえものをオレが埋めてやるんだ……。それが……、それが半端者のオレにできるたったひとつのことなんだよ!」
「強くなりたい」「一人で生きていきたい」と、健気だった蓮(九太)の胸に穴が開いてゆきます。
各地の宗師に「強さとは?」を問う旅に出た九太は、
「誰彼も持論をぶつばかりで、言うことが皆違う」
「強さっていろんな意味があるんだな。どの賢者の話も面白い」
「『強さの意味は自分で見つけろ』ってこと?」
と九太は、「なりたい強さは自分で探す」ことを理解します。
「五輪書」で有名な宮本武蔵も、16歳で武者修行の旅に出て、各地で強者、剣豪を倒していき、29歳まで60人に負けたことがない。負け知らずだったのに、将軍足利義昭から「日本一」の称号を与えられた養父、新免無二と違って、誰も自分を認めない。父を超えようと、父が勝った吉岡一門弟子百人を倒した逸話。
それでも、戦国時代が終わり、徳川の世になり、剣の力は不要となった。54歳頃、宮本武蔵は、天草四郎時貞が挙兵した島原の乱に出陣したが、上から石を落とされ、大怪我を負う。
島原の乱には、農民だけでなく、大坂の陣の牢人も加わっていたそうだ。幕府方は苦戦し、頭のいい松平信綱を総大将にし、信者の援軍の希望を砕くため、キリスト教国のオランダ船から砲撃させる、にわか信者を分断させ幕府軍に投降させる心理戦、攻め急がなく、飢えで戦意を喪失させることで鎮圧した。だが、たんなる宗教一揆ではなく、幕府への不満分子、残党も集結したので、跡形もなく、城ごと埋め尽くした。
死期を悟った武蔵は、59歳で祠(洞窟)にこもって、2年がかりで五輪書を書き上げ、その1週間後に逝去。
本当の強さとは、剣の腕、倒す、勝ち続けることだけではなく、生死のはざまを生き抜き、時代の変わり目も経験した宮本武蔵しか書けない言葉が、「心技体を極める」をテーマにした五輪書の中にはある。
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「バケモノの子」の決闘で、
猪王山が負けを覚悟し、目を閉じた時「がんばって猪王山!」という少女の声で、息を吹き返し、熊徹を押し返す。
「誰も……誰も……あいつを応援してない……」
九太は熊徹の敗北を危惧する。
たったひとりでも自分のために声を上げてくれる人がいること。
旗色が悪くなっても、あきらめずに、太刀を振るう熊徹に、九太は「負けるな!」と叫びます。熊徹は踏みとどまり、倒れこまなかった。
表面上の試合の勝ち負けだけではなく、己の覚悟。熱き鋼の塊は何回も熱を加え、叩くこと(鍛錬)で、刃を生み出す。
周りの応援の百人力。頼られることで引き出される強さ。誰かのために湧き出るパワー、愛情。
原点に還ることで、もともとあった願いを思い出す。元気になれる。
