流動化に向かおうとするこの流れは避けることが出来ない。
流動化、不連続な構造変化の背景には世界のパワーバランスの変化がある。
天安門事件、ベルリンの壁崩壊で、冷戦構造が崩壊し、世界のパワーバランス(国と国の力関係)が崩れると、火種、国同士の対立が起こりやすくなる。
アメリカと日本の関係、TPP問題、ウクライネ(キーウ)とロシアの衝突、日本と中国とのこれまでなかった局面で、
日本においても世界においても大いなる転換期を迎えている。なるようになるのではない嵐の中を漂う船のように、まさに私たちが体験したことのない時代、転換期を迎えた。

 世論を裏切り、ロナルド・トランプ大統領誕生。アメリカは、「アメリカファスト」を掲げ、自由貿易をやめたことにより、様々な変化が加速した。
 ヨーロッパは、難民問題とEU離脱(イギリス)と残留(フランス・ドイツ)で、EUの崩壊へと進んでいる。
ロシアのウクライネ(クリミア)侵攻。
中国は、南シナ海の全領域は自国の領海だと主張している。 
 「世界全体のために世界が協力し合う」国際的な枠組みは崩れ、国際協調主義、人道主義から、自国第一主義、覇権主義、排外主義へと動いている。
 この流れは、世界に起こっている出来事は私たちの生活からかけ離れたものではありません。北朝鮮のミサイル発射、ロンドンやパリの自爆テロ、サイバー攻撃など、いつ巻きこまれてもおかしくはない。

 戦後40年、日本が輸出を伸ばし、アメリカとの貿易摩擦が生じていた。以前は「ものづくり」の日本、製造業の躍進に嫉妬の念を抱き、保護主義的な政策の是非が真面目な話題となった。
だが、バブル崩壊後、アメリカやヨーロッパの貿易交渉担当者は高度経済成長の終焉を迎えた日本に対して情けを示す態度に変わっていった。日本の貿易交渉担当者は、とりわけのみこみが早かったので、それ以来同情を乞うような態度を取りつづけたのである。この戦略はワシントンで特に効果的だったようだ。支配、優位が強いアメリカの当局者は、下手(したて)に出る態度を見せる日本の交渉に対し、市場の開放を求めることをほとんどしなかった。「平成不況の経済低迷の日本をそれ以上蹴ってはならない」と。 
「堕ちた巨人」の立ち位置は、他の東アジア諸国にも、アメリカとの貿易交渉を進めるうえで都合が良かった。

 今は一変し、アメリカと中国が貿易摩擦も含め、一発即発の関係にある。
ニクソン大統領の訪中以来続いてきた、アメリカと中国の蜜月が終わったのは、2018年10月4日のペンス副大統領のハドソン研究所での演説だった。中国は「アメリカに挑戦する国」であり、「邪悪な共産党」との戦いを宣言した。経済が発達すれば、中国とも民主的な価値観を共有できると考えたのは幻想だったのだろう。アメリカ国民はこれを直視し、トランプ大統領とともに対峙するということなのだろう。金融の大資本の影響から距離を置ける、ビジネスに長けたトランプ大統領だからこの政策転換はできたのだろう。
 2019年9月1日から、トランプ大統領は中国の新たな報復関税に対して、さらに強い関税攻勢に踏みこんだ。第4次関税引き上げを予告、為替操作国の認定をした。

 

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 中国の報復関税の背景に、8月中旬に共産党指導部と引退した長老が国政の重要課題を話し合う非公式の北載河会議がある。習近平(しゅう きんぺい)主席の対米強硬路線、国家主席の任期制限撤廃への批判が予想されたが、習主席は何とか折り合いをつけ、乗り切ったのだろう。
習近平主席は、鄧小平(とう しょうへい)の「韜光養晦(とうこうようかい)」国力が整わないうちは国際社会で目立たず力を蓄える路線から脱却し、2049年までに全世界の覇権を握る計画を立てた。
関税引き上げ率の影響は、輸出企業の業績悪化である。中国は、関税引き上げが進めば、海外企業の撤退、失業も増えるため、強気一辺倒の態度はとれないが、身を縮めてもアヘン戦争(日清戦争)以来の屈辱を巻き返したい。「唐の時代に戻るぜ‼」「中国は日本の先生」「日本の文化は全部、中国」「英語よりも中国語を勉強」「西洋に(尻尾を振る)日本はバカ」「中国がナンバーワンだぜ‼」の国民の気持ち、政府の意欲は強い。

 中国のGDP(Gros Dimictic Product 国内総生産、国内で生産されたものの合計)が、過去17年で9倍に成長し、日本を抜いて世界で第2位、(日本は第3位になったが、その差は年々開いている)になったのは、アメリカのお陰である。だが、自由主義とは真逆の一党支配の独裁国家体制、監視社会を推し進め、アメリカから世界の覇権を奪おうとしている。
「中国の経済的発展は民主化につながる」が幻想だったと距離を置き始めた、「一帯一路」(中国の巨大経済進出)への危機感を募らせる自由主義諸国。
 事態の見通しが、互いの歴史や文化の違いで全く違っていて、そこに気づかず中国に乗せられていたのか。
アメリカが経済的にも軍事的にも中国を牛耳れると期待し、援助を重ねたのだが、その実態を見誤ったのだろう。中国は忍者(伊賀、甲賀)が参考にした兵法の書物を編み出し、三国志に見られる策略によって権力を握った歴史。日本の武士は互いに名乗り合ってから戦ったが、蒙古襲来では通用しなかった。鉄砲伝来により、剣術を極めた武士の戦い方は大きく変わった。「大陸的」実利重視。目に見える成果の大きさを重視する。意義や大義、道理、手段や手続きの公正さを重視するより、筋目優先よりも拡大志向、結果さえよければプロセスは問わない?

 中国は先端技術立国を目指し、かつては「ものづくり日本」を支えた日本の技術者が中国に高い金で雇われ、技術が流出し、今は予算が少ない科学者が研究を続けるため中国に高給でスカウトされているという話もある。「唐の時代に戻るぜ」なのだろうが。しかもその手段はえげつないと言われている。
「中国製造2025」の計画を進めることに注力し、次世代通信技術の5GやAIの分野では、アメリカをしのいでいる。なぜかというと、AIによる監視社会化が進んだからだ。そして、それを世界中に広げようとしている。