またまた、本の紹介だよ〜☆
 小説ですが、平易で読み易い。夏川草介さんは『神様のカルテ』の著者で、お医者さんでもあります。
 「時間」の問題提起をする灰色の男『モモ』を思わせる展開。映画『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』時間の番人タイムに挑み、帽子屋マッドハッター、赤の女王イラスベスの恢復を思わせる流れだな。

『本を守ろうとする猫の話』夏川 草介

 読んだ本の数を競う批評家、乱読、「閉じ込める者」の迷宮。

 

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 あらすじを読めば十分だと豪語する白衣、速読、「切りきざむ者」の迷宮。

 

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 目先の利益のみを重視する出版社社長、「売りさばく者」の迷宮。

 

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 本は1冊読むのに何か月もかかったり、その時は理解できなかったことが後になってわかったりすることもある。

最後の迷宮は、「絶望を語る女」。二千年前から読み継がれた本が現代の読書離れの危機に直面している。

 主人公の夏木林太郎は、エネルギー、内圧が下がっていたため、不登校。(めんどうくさい)と引きこもりから引きずり出したのは、トラネコの「本を救い出すために、お前の力を借りたい」の言葉。必要とされると動くんだね。
 一歩踏み出した林太郎は、迷宮の主に何を言われても自分なりの考え、思いをぶつける。 
閃光で迷宮が崩れ、光景がガラガラ変わったのは、善い方に進んだというより、亀裂が入った。景色はそのままでも、目に映っている心象風景が違う、自分の心境が変わったことを暗喩的に描写しているのだろう。これで、「ザ・エンド」ではなく、

 だ・が…「林太郎の言葉によって、迷宮の主、3人が不幸な末路を辿っていると!」映像が映し出される。怒り、責めではなく、灰色の空気、暗雲が覆う。
林太郎は読書家だが自分の殻にこもり、気の利いたことは言えない。だが柚木沙夜を助け出さないといけない!必死に言葉を繰り出す。

 簡単には答えが出せる問いかけではない。

 時事風に語ると、人間の欲は無くならないよ、それを抑えて人は生きていく、その欲も価値観の違いでも変わっていくしね(笑) だが、戦争が無かった時代はない。一瞬平和な世になっても必ず歪みは生まれる。(資本主義を追求、平等ではない、国力、パワーバランスと抑止力)
とにかく、人間は業の深い動物だね。
自然界の生き物は、法則に従い、生態系を保つ。気候、環境の変化についていけず、絶滅した種もあるが。

 いろんな人がいる。だからいろんな意見が生まれ、いろんなベクトルで生きていく人がいるし、いろんな正義が生まれる。
歴史は繰り返すが、螺旋階段のように、進化していると、信じたい。
だからこそ今の自分が出来ることやれることをしっかりすることかな。
人に求めても決して自分の思った通りに物事は進まない。

 本を読むことは、様々な人格、様々な人生、様々なストーリーを追体験する、人間理解。
どうでしょうか。小説は、本を開くだけで、脳内で辿れる。しかも劇場に自由に出入りできる。自分のペースで味わえる醍醐味。
これが、林太郎が最後の迷宮で力説した、時空を越えどこへでもいざなってくれるだけではなく、誰かの気持ちに思いを馳せることも可能にしてくれる想像力だ。
(最後の迷宮へと、続く♪)