視覚障がいは、
「まったく見えない人」「見えにくい人」「見えるけれど視野が狭い人」
生まれた時から見えない人もいれば、病気によって、途中で見えなくなった人もいる。1人ひとり、それぞれ歩んできた人生があり、盲導犬との出会いがあって、今があります。
CMで、「犬たちが、盲導犬会議の中で語る言葉」に、ユーザーの人生が投影されています。
東京メトロ、銀座線青山一丁目駅でユーザーがホームから転落した事故。盲導犬は、ハーネスを離したので、無事だった。改札口通過の際、左手でカードをタッチするため、犬のハーネスを右手に持ち替え、そのまま、自分が線路側を歩いていたことが、原因だと、防犯カメラから、判明した。
ホームドアの設置、駅員さんの見守りを義務づける安全対策のハード面だけでなく、ソフト面でも、理解が必要ではないでしょうか。
駅ホームでの経験、その1
「左側を歩いていたつもりが、いつの間にか、右側の反対ホームに」
駅の構造は、ざっくり、頭の中にあったので、援助依頼はせずに、電車を降りて、階段に向かおうと、犬をホーム側の左に寄せて、歩いていました。突然、「危ない、落ちるよ!」と、人に体をつかまれました。その5秒後くらいに、電車が入ってきたんです。
知らない間に、ホームを、斜めに横断してしまったんです。
気がついたら、犬がホーム側、私が電車側にいました。もし、体をつかんでくれなかったら…
点字ブロックには、気がつかなかったなぁ。知らないうちに、点字ブロックを超えて、線路側にいました。考えごとをしていて、点字ブロックに気がつかない可能性もあります。ホームが混んでいたので、周りを気にしていたのと、待ち合わせがあって、急いでいたかもしれない。心理的に急ぎ感があったんですね。
よくあるのですが、頭の中の地図と実際のがずれている時があって、それが怖い。
慣れている場所の方が思い切って、歩いてしまって、かえって危ないですね。
盲導犬は基本キープレフト。でもホームに人がいるので、右によけた後、左端に戻ろうとしても、さらに人をよける、と繰り返して、スラローム式に(蛇行を繰り返しながら)、歩いているうちに、方向を見失ってしまうんです。
こういう場合、犬は、線路手前で止まる状況かというと、線路(断崖絶壁)に対して、直角に進んでいれば、犬が、自分の前に入りこんで、止まったと思います。直角に向かうのでなければ、犬がどの位置で危険と判断して、止まるのかは、わからないです。
駅ホームでの経験、その2
「電車に乗りこもうとしたら 電車がない⁉」
白杖で歩いている時、エスカレーターで、駅のホームへ向かっていたんですが、途中で、電車到着のアナウンスがあって、電車がくるなと思っていたら、ホームに上がりきる前に、電車が入ってくる音が聞こえたんです。(乗れないかな)と思いながら、ホームに上がると、ステンレスの電車の車体が目にはいった。(まだ電車がいる!)と思い、乗りこもうと、地面に白杖をすべらせながら、車体を確認したけど…!ない!「あっ」と気がついて、あわてて、杖をひっこめた直後、目の前に電車がはいってきて…。目にはいったのは、向かいのホーム側の電車だったんです。視力が少しあったことが、かえって危なかったケースなので、強烈な体験でした。
盲導犬がいても、駅では、白杖を出して、安全を確認します。何かおかしいと感じたら、とにかく止まることが重要。
駅の階段の途中で、電車がくるアナウンスが聞こえたんで、急いで、乗りこもうとしたんですね。ホームに上がって「ドア・ゴー」と、犬に指示を出したのに、なぜか動かない。おかしいなと思ったら、そこは、ホームの最後尾で、電車がなかった!もし、犬が乗らないなら、先に乗ろうとしていたら、危なかった。
駅ホームでの経験、その3
「人混みをぬけたら・・・路線へ転落」
複数の線路があるくし型ホームで、
電車を降りて、改札口に向かって、1番左寄りのホームを白杖で歩いていました。左端のホームを歩いていて、改札に向かうため、右に方向転換した。
電車の気配がなくなったあたりから、空間が広がって、改札があるはずなんです。でも、その時は、前が開けて、急に人がいなくなったなと思ったら、ドンと線路の車止めみたいなところ(停まっている電車の前方にある空間部分)へ落ちてしまいました。
先頭車両と車止めの間は、最も危険な場所で、最近は、ずいぶん柵がつくようになったんですが、
多分、点字ブロックの上を右や左に行ったり来たりしているうちに、線路に近づいたんだと思います。
くし型ホームの場合、ホームより、改札部分が狭くなっていますから、どこかで方向転換しなければならない。どの時点で、方向を変える意思決定をするかということが重要になってきますね。
人混みの圧迫感や密度が変わった時点で、さっと、右に行ったと思います。通勤で慣れていたのと、白杖での歩行に自信を持っていた過信もあったと思います。
人混みだと、杖を前に出しづらい。渋谷駅で人にひっかけられて、白杖が2本も折れてますから…
人身事故があって、ホームがすごいことになって。何とか人をよけて歩いていて、ホームの右側にいるのか、左側なのか、わからなくなった時、パッと人がいなくなって、人混みをぬけたんです。(あっ、落ちる!)と思って、あわてて止まりました。人身事故でホームがすごく混んでいたので、人がいなくなるイコール線路に落ちると、すぐに思い浮かんだので、止まれたんですが、いつもの状況だったら、止まらなかったと思います。
「電車を降りて、むやみに移動しないで、この旗を出せば、すぐに声がかかる」と金子聡さん。駅を安全に利用するための情報が、いつでも簡単に入手できる仕組み作りを目指して「安全☆駅スペックプロジェクト」を立ち上げ、現在、各種団体と連携して活動中。
次回は、交差点・横断編に、続きます。
公益財団法人 日本盲導犬協会
「盲導犬くらぶ 会報第85号」2017.1.15 より
(掲載の件、連絡済です)
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