休みの日に、B型事業所でのパン作りのボランティアをしていた。高校時代から、老人ホームへお手伝い、募金活動、キャンプ運営、衣類を送る、色々なことをやってきた。社会人になってからは、寄付することしかできなくなったが、パンを作ることは、新鮮だった。
 ケーキやお菓子作りの趣味の延長だと思っていたが、12月末のある出来事が起きたのだ。

 年始年末の繁忙期、風邪もあって、義務感だけでパン屋さんに通っていた時、ある日、アップルパンの中身を多く入れ過ぎ、パン生地が外れた。利用者の保護者(ママ)が取り上げ、「もうやらなくていい。見ていなさい」というようなやりとりがあった。単価が高い商品だったからかな、その日は一人でパンを焼く男性(利用者)が休みだったので、てんてこ舞いだったのだろう。
体調も悪かったこともあって、体中の力が抜けた。家に帰って炬燵にもぐり、ほかほかカーペットに腹這いになってお菓子を食べながら寝たい衝動を必死に抑えたのであった。
すぐに他の成形の作業が目の前に来た。まさか、ここで帰るわけにもいかないので、手だけは動かしていた。何人かの保護者(ママ)は何度かわたしに声をかけたり、もっと上手く作れる方法を教えてくれたりしたが、わたしが表情も出さず淡々と作るので、顔をこわばらせた。いつもはガヤガヤしているのだが、場は凍りついた保護者(ママ)であった。

 

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 年が明け、それから3週間ほど休んだ。理由は勿論「風邪」「忙しいから」「疲れている」と電話を入れた。
「大丈夫?」「頑張ろうね」と気遣う周りに「今日はパン屋さんに行くようなコンディションじゃなかった」と言って辞したが、(もう寝る!二度寝) (休みの日まで働くのはイヤだ!)と、体中が叫んでいた。もう頭の隅に追いやっていた。
 あれほど、「2月になったら、忙しさは和らぐので行くかも」と念を押したのに、「まだ来ないのかな~?」と待っている、(自分たちが怒らせてしまったのかなぁ)と心配していることが耳に入った。
(お金をもらうなら、どんな嫌なことでもガマンするが、寒風の中、店頭に立ち続ける、もうせっかくの休みにわざわざイヤな思いまでしたくない!)とその感情が蘇った。
生地が崩れるので暖房も入れない寒い厨房でせっせと成形している時間、てめぇの子どもたちは、ぬくぬくとお日様が当たるお部屋で遊んでんじゃね~か‼店にパンを並べるまで、子どもを看ている若い男性と女の子は楽しそうに遊び、保護者(ママ)達とどうでもいい四方山話を仲良くやっている~、
その人たちは、保育士の資格を持ち、パン配達要員だった~

 (人のために何かしてあげたい)と思って始めたが、仕事で体がクタクタで、しもやけになり、
(何も無理して行くことはない。楽しんでやらないと向こうの人にも迷惑だ) と休み続けるかどうしようか、心は悩乱した~!「どうするの?」に、出た言葉がこれだった。
「パン屋さんなんてわたし、行っても行かなくてもどっちでも同じだ~!うまくできないから上手な人がやればいい!」
「そこでも、ありのままでよく、居心地が良かったら、忙しくても行くと思うよ」の言葉に、
パン作りは、自分の好きなことだけど、ボランティアの姿勢に甘さがあった。パンを買いに来る人の気持ちまでに想いを寄せていなかった。自分がパンを買う時にどうなのかなぁ~って、考えればすぐに分かることなんだけどね。
のんびりやっていた時、保護者(ママ)に注意された、というよりせかされた。すると、わたしは両手で一気に加速度をつけ、パンをこね始めた。すると、「ママ達は早くてとっても上手でしょう、でもね、私達ボラはまねして早くやらなくてもいいのよ」と、ずいぶん周りが気を遣っていたんですね。
 居心地がいい?気の合う人とだけしゃべっていて、明るかったようだ。「今日は(パン作りに)忙しくて、あんまりお話ができないね~」と、保護者(ママ)が遠回しにたしなめると、急におとなしくなって黙々とパンを成形する。
手を休めることもなく、パンを成形する。ケーキやお菓子作りが趣味であっても、上手くできなく売り物にならない時は、外される。時間が容赦なく押している時は、厳しさがある。
普段はマイペースで(自分の好きなようにやりたい)という気持ちや意識の甘さを見つめた。
保護者(ママ)たちも苦しんだんだ。悪気はなかったんだ。
 パン作り通いが復活し、嬉しかったことは勿論だが、

 

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 気持ちが弱い人には、あれこれ言わないそうだ。あれこれやらせなく、簡単な作業でも慣れるまでは、ただ手が震えながら、手伝ってもらいながらも、加わっている人もいる。それが理解できなかったが、「当たり前じゃん!」と一蹴された。
彼女は、(あんこが真ん中に入らないと困る) (バターロールの三角の真ん中が合わないと困る)…、生真面目なのだろう。
 えっ~!あまり深く何も考えずにとにかくやっていたよ~ 誰かがお手本を見せてくれても、自分で上手くできるまでドンドンやっていた。生地は当然無駄になるわけで、(こねて再利用すればいい)という考えだった。やってみたい気持ちが先行していたが、周りはどんな思いで見守っていたのだろうね~
 しばらく、その後も通ったが、形態が少々変わってしまったので、ご無沙汰になってしまったのが、残念だが、いい思い出だ~^^