※この物語は実況パワフルプロ野球14で実際にプレイした内容を基にしたフィクションです
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オールスターショック(訳:オールスターでショックを受けた)の翌日。
相変わらず俺はグラウンドで練習していた。
オールスターに出ていたメンバーも戻り、共に練習。
皆、再びチームのためにと気持ちを切り替えている。
ヤンスも昨日は嬉しかったであろうに、あえてそのことを話さない。
その気遣いは申し訳なくもあったが、ありがたくもあった。
チームの勝利のため、そしてお互いのためを思う良いチームだと思う。
さて、その練習はといえば、相変わらず東條さんと共にしている。
彼に付いていこうと決め、しばらく練習を共に過ごしてみたが…
なかなか多くを語ってくれない。
ただ、元々東條さん自身もサードがメインポジションなだけあり、筋力練習や打撃練習が中心で好都合であったし、寡黙であっても、少なくともその背中からできるだけ多くのことを学ぶようにした。
ある日、そんな「群れない」東條さんとチームメイトが揉めていた。
人一倍努力する東條さんだが、常にマイペース。
あえて他のメンバーと打ち解けようとはしない。
そのことを気にしたチームメイトが、(正直この人向けの言葉ではないのだが)「合コン行かないか?」と声をかけたことが原因らしい。
東條さんはずいぶんと嫌そうに
「…断る。」
と聞く耳を持たない。まあ、揉めてるというよりはチームメイトが「なんだよ、付き合い悪いなぁ」などと、一方的に腹を立てているという感じになっていた。
このやりとりに嫌気がさしたらしく、東條さんはロッカールームに引き上げていった。
いけない…。
この人のプレイスタイルも技術もすごいが、チームメイトとの交流無しに良いチームプレイはできない。少し危機感を感じた。
よりによって「合コン」や「付き合い悪い」などと、誰もが東條さんにかけてはいけないとわかるような言葉を言ったチームメイトは不器用そのものだが、彼なりに打ち解けようと勇気を出したかったらしい。
…少し東條さんにも歩み寄って欲しいな。
と、いう自分自身の希望とともに、自然とロッカールームに足を向けている俺がいた。
「一人でいる方が好きなんですか?」
ロッカールームについた俺は、あえて静かに、ただ、試すように言ってみた。
少し間があって…
「…最近の練習を見てると、お前は『こっち』側の人間だと思っていたんだが。」
との言葉。
少々ほっとしつつ、ここをチャンスだと思い、一気にたたみかけてみる。
「お聞きします。
東條さんにとって『仲間』って何ですか?」
我ながらよく頑張った。
「お互いを刺激しあい、高めあう存在…だな」
東條さんもまっすぐに答えてくれた。
「それを聞いてほっとしました。」
まさかとは思ったが、『不要な存在』なんて言われたらどうしようかと思っていたので安心した。そして続けた。
「俺は東條さんのことを仲間だと思ってます。
そして、チームメイトも仲間になりたいと思ってるんです。
不器用な連中で、あんな軽口しか叩けませんが、それが本心なんです。」
「…別に連中のために、などという考えを持つ気はしないが?」
「じゃあ、それでも良いと思います。
チームメイトのため、ではなく、東條さん自身のため、そしてチームの勝利のためにと思ってくれませんか?」
「…」
「このチームは、誰かに期待しすぎて重圧をかけることもなく、かといって自分しか信じられないわけではありません。お互いがお互いを皆を信じて、チームの勝利のために頑張ろうとしています。
もちろん個々の能力を向上することも大切ですし、これが全てというわけではありませんが…。でも、お互いを信じるってところ、ちょっとわかってくれたらなって思います。」
本当はここまで言うつもりはなかった。
ただ、何故か自然とこんな言葉がでてしまった。
東條さんの本心はわからない。
ただ、きっと俺を信じてくれているところもあると思う。
…でも、さすがにちょっと言い過ぎたかもしれない。
「失礼します!」
そう言ってそのままロッカールームを去った。
…
次の日、練習していると東條さんから声をかけてきた。
「お前の筋トレには無駄が24カ所ある。
…直せばもっと良くなるぞ。」
彼らしい、しかし、今までとは確実に違う言葉だ。
ニヤついている俺に、続けた。
「勘違いするな。
…チームのためだ。」
このチームはもっと良くなる。
そう感じた。
(続く)
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オールスターショック(訳:オールスターでショックを受けた)の翌日。
相変わらず俺はグラウンドで練習していた。
オールスターに出ていたメンバーも戻り、共に練習。
皆、再びチームのためにと気持ちを切り替えている。
ヤンスも昨日は嬉しかったであろうに、あえてそのことを話さない。
その気遣いは申し訳なくもあったが、ありがたくもあった。
チームの勝利のため、そしてお互いのためを思う良いチームだと思う。
さて、その練習はといえば、相変わらず東條さんと共にしている。
彼に付いていこうと決め、しばらく練習を共に過ごしてみたが…
なかなか多くを語ってくれない。
ただ、元々東條さん自身もサードがメインポジションなだけあり、筋力練習や打撃練習が中心で好都合であったし、寡黙であっても、少なくともその背中からできるだけ多くのことを学ぶようにした。
ある日、そんな「群れない」東條さんとチームメイトが揉めていた。
人一倍努力する東條さんだが、常にマイペース。
あえて他のメンバーと打ち解けようとはしない。
そのことを気にしたチームメイトが、(正直この人向けの言葉ではないのだが)「合コン行かないか?」と声をかけたことが原因らしい。
東條さんはずいぶんと嫌そうに
「…断る。」
と聞く耳を持たない。まあ、揉めてるというよりはチームメイトが「なんだよ、付き合い悪いなぁ」などと、一方的に腹を立てているという感じになっていた。
このやりとりに嫌気がさしたらしく、東條さんはロッカールームに引き上げていった。
いけない…。
この人のプレイスタイルも技術もすごいが、チームメイトとの交流無しに良いチームプレイはできない。少し危機感を感じた。
よりによって「合コン」や「付き合い悪い」などと、誰もが東條さんにかけてはいけないとわかるような言葉を言ったチームメイトは不器用そのものだが、彼なりに打ち解けようと勇気を出したかったらしい。
…少し東條さんにも歩み寄って欲しいな。
と、いう自分自身の希望とともに、自然とロッカールームに足を向けている俺がいた。
「一人でいる方が好きなんですか?」
ロッカールームについた俺は、あえて静かに、ただ、試すように言ってみた。
少し間があって…
「…最近の練習を見てると、お前は『こっち』側の人間だと思っていたんだが。」
との言葉。
少々ほっとしつつ、ここをチャンスだと思い、一気にたたみかけてみる。
「お聞きします。
東條さんにとって『仲間』って何ですか?」
我ながらよく頑張った。
「お互いを刺激しあい、高めあう存在…だな」
東條さんもまっすぐに答えてくれた。
「それを聞いてほっとしました。」
まさかとは思ったが、『不要な存在』なんて言われたらどうしようかと思っていたので安心した。そして続けた。
「俺は東條さんのことを仲間だと思ってます。
そして、チームメイトも仲間になりたいと思ってるんです。
不器用な連中で、あんな軽口しか叩けませんが、それが本心なんです。」
「…別に連中のために、などという考えを持つ気はしないが?」
「じゃあ、それでも良いと思います。
チームメイトのため、ではなく、東條さん自身のため、そしてチームの勝利のためにと思ってくれませんか?」
「…」
「このチームは、誰かに期待しすぎて重圧をかけることもなく、かといって自分しか信じられないわけではありません。お互いがお互いを皆を信じて、チームの勝利のために頑張ろうとしています。
もちろん個々の能力を向上することも大切ですし、これが全てというわけではありませんが…。でも、お互いを信じるってところ、ちょっとわかってくれたらなって思います。」
本当はここまで言うつもりはなかった。
ただ、何故か自然とこんな言葉がでてしまった。
東條さんの本心はわからない。
ただ、きっと俺を信じてくれているところもあると思う。
…でも、さすがにちょっと言い過ぎたかもしれない。
「失礼します!」
そう言ってそのままロッカールームを去った。
…
次の日、練習していると東條さんから声をかけてきた。
「お前の筋トレには無駄が24カ所ある。
…直せばもっと良くなるぞ。」
彼らしい、しかし、今までとは確実に違う言葉だ。
ニヤついている俺に、続けた。
「勘違いするな。
…チームのためだ。」
このチームはもっと良くなる。
そう感じた。
(続く)