もうすぐ、あの子が旅立った時刻が来ます。
月日は違うけれど生まれた時刻と数分しか違いません。
10年前の今日・・・
近づいて来る別れの時を感じながら、それでも全てが長い、悪い夢で目が覚めたら家族4人、笑って過ごしている・・・だったら、どんなにいいか・・・
でも現実は刻一刻と別れに向かって進んで行きました。
ICUで看護師さんがあの子のベッドの周りをパーテーションで囲み始めました。
ICUには術後の患者さんもいます。
重体の患者さんもいます。
パーテーションで囲むのは私たちへの配慮か、または他の患者さんにとっても近くで人が亡くなるのを目の当たりにするのは見たくないでしょうし、その為の配慮か・・・
医療者には、その時がもうすぐだと予測出来るのでしょう。
主治医から聞いていたので私たち家族も、長くはない事は判っていました。
パーテーションで囲み始めた事で、その時が来たのを確信しました。
私は次男の頭を抱え込むように腕を回し、指先が首に触れていました。
『お母さんがこうしてるから恐くないよ』と声をかけながら。
触れている指先に、あの子の血液の流れる鼓動を感じていました。
恐怖に震えているのは私でした。
もう、どうにも取り返しのつかない現実が今にも訪れる。
そして、私の指先に感じていた鼓動が止まりました。
この日まで何度も考えました。
この瞬間が来たら、病院の屋上から飛び降りること・・・
でも・・・しなかった。
出来なかった。
2回目の骨髄移植でドナーになった長男の苦しみ・・
年老いた両親の事・・
あの子を神さまの元へ送る事・・
もう少し、私にはしなければならないことがある・・・
まだ、2つの務めがあるので今日まで生きています。