球審をやっていて、一番難しいプレーかもしれないのが、タイムプレーである。

 

厳密には、公認野球規則にタイムプレーという文言は出てこないが、審判のフォーメーションが書かれている審判メカニクスには、載っているプレーである。

 

タイムプレーとは、フォースプレーによらないランナーの第3アウトと別のランナーの得点とのどちらが早かったかを、主に球審が判定しなければならないプレーのことである。

 

具体例を挙げると、2アウト・ランナー1,2塁で、バッターが外野へヒットを打った場面で、2塁ランナーのホームインと1塁ランナーまたはバッターランナーが、3塁または2塁でアウトになるのがどちらが早かったかを判断するプレーで、球審は2塁ランナーのホームインと同時に他のプレーの確認もしなければならないため、どこでプレーが起こるか予測して、両方が見られるポジションに移動しなければならないので、非常に難しい判断が必要となる。

 

さらにこのプレーの難しいところは、多くのファンは、1塁ランナーまたはバッターランナーがアウトになるタイミングは、審判がアウトをコールした時点と思っていると思うが、内規では、「アウトが成立する時機は、アウトの事実が生じたとき」となっているため、その判断が非常に難しいのである。

 

オープン戦ではそうでもないが、公式戦やトーナメント大会で、1点を争うような接戦では、球審の判断がなかなか受け入れてもらえず、トラブルになることが多く、対応に苦労するプレーである。

 

タイムプレーは、ほとんどの審判が、試合中に起こって欲しくないと思っているプレーだと思う。