櫻葉さんのお話です。

腐です!腐なんです!
要するにBLですよ!!!

意味のわからない方、ダメな方は
ここで戻ってくださいね(* ̄∇ ̄*)



【112】
「相葉くん、お疲れ。」
「翔ちゃん、お疲れ様。」

ソファに座る俺の足元に、相葉くんがちんまりと長い脚を折り畳むように座るのが、晩酌の時の定番となっている。

ビールで乾杯しながら、仕事の行き帰りにあったことや、相葉くんのお店であったこと、店に来たお客さんなど、お互いの今日あった出来事の話をするのが楽しい。

相葉くんは、親方や接客担当の女性が大好きみたいで、キラキラした笑顔でお二人の話をしてくれる。

話を聞いていると、お二人の店でのイメージとのギャップが有りすぎで、面白すぎて俺の笑いが止まらない。

話を聞くたびに、あの店は相葉くんにとって、居心地の良い場所なんだと思う。

このままあの店に、この町を自分の居場所として、いてくれればと願わずにはいられない。

相葉くんがソファに顎を預けて、こちらを見上げている様は、まるで飼い主に撫でてもらうのを待っている犬のようで。



まるで血統書付きの大型犬……えーっと、なんだっけ?



レトリバー?いや、ポインターだっけ?



いつもは細くてしなやかな身体で颯爽と走ってる犬がソファで寛いでいるような。

手を伸ばして髪に触れると、さらさらと柔らかな髪が、指先からはらはらと零れ落ちていく。

しなやかで手触りの良い髪に触れ、形の良い小さな頭を撫でると、気持ち良さそうに目を閉じた。

「翔ちゃんの手、気持ちいいね。」
「そぉ?」
「なんか、翔ちゃんのワンコになったみたい。」
「ははっ!」

自分と同じ想像をしているのが楽しくて、そのまま頭を撫でていると、可愛いワンコは顎の預ける場所を変えることにしたらしい。

膝に顎を載せて、時折甘えるように頬を寄せてくる。

「翔ちゃんって、良い匂いするよね。」
「え?そぉ?」

部屋着のTシャツの裾を引っ張って、匂いを嗅いでみても柔軟剤の匂いしかしない。

「柔軟剤?それとも、シャンプーかな?それなら、相葉くんも同じ匂いじゃない?」
「そぉかな?俺も翔ちゃんとおんなじ匂い?」

Tシャツの肩に鼻を寄せて、くんくんと匂っている姿は、益々犬っぽくて可愛い。

「ホントに翔ちゃんのワンコになれたら……そしたら、ずっとこのままでいられるのかなぁ。」

誰に言うともなく呟いた言葉に、思わず頭を撫でていた手が止まった。

「あ、そんなつもりじゃないよ。翔ちゃんと一緒にいられるのも、あとちょっとだなぁって思ったら、寂しくなっちゃった。」

可愛いワンコから人間に戻ってしまった相葉くんは、グラスを手に取り、残っていたビールを飲み干した。



智くんとの約束した十日まで、あと三日



あと三日で、この日々が終わってしまう



相葉くんの背中を見つめながら、同じようにグラスに残っていたビールを飲み干した。

「俺も寂しいよ」と口に出したら、相葉くんはここにいてくれるのだろうかと、無言になってしまった相葉くんの背中を見ながら思う。

それでも、それを口に出すことは出来なくて。

手を伸ばして、くしゃりと髪を掻き回すように頭を撫でると、小さく振り向いた相葉くんは、一瞬困ったような表情を浮かべてから、「ワン!」と元気に吠えて笑顔になった。