出典:発達障害児の衝動性とセルフコントロール(1997)嶋崎まゆみ、行動分析学研究、11(1,2)、29-40


1.発達障害児における衝動性とセルフコントロール

・発達上の障害を持つ子供たちに関する研究にオペラント条件づけ理論は欠かせず、認知行動療法は広まりつつある。


・しかし、認知は行動を介してしか測定できず、むしろ対象を取り巻く環境側の要因を分析し、介入のための操作と実際に生じた行動の変化との関係を明らかにしながら臨床活動を進めることが重要



・応用行動分析の手法

例)シェイピング(反応形成)は正の反応を導く刺激(プロンプト)などの技法を組み合わせることで言語獲得や身辺自立を可能にしてきた。(上里、1998)(Albert & Troutman,1986)


例2)環境の構造を詳細に分析するための多項随伴性の概念(Sidman, 1986)(嶋崎、1996)


例3)衝動性とセルフコントロールの概念化を図った選択行動の研究(Logue, 1988)



・本文での衝動性とセルフコントロールの定義(Logue, 1988)

衝動性:選択反応がなされた直後に与えられる相対的に小さな強化子(直後小強化子)が選択される場合


セルフコントロール:選択反応後の遅延時間を経て与えられる相対的に大きな強化子(直後大強化子)が選択される場合


例)対象者が実験者の戻るのを待ち切れなければ小さな報酬を、待てれば大きな報酬(Reward)を与えることを示す。その間の行動や行動に影響を与える要因が分析されたりする。




2.発達障害児を対象にした研究

・衝動性を測定する手続きとしての有効性を探るためのもの

・セルフコントロールを可能にするための訓練手続きとしての有効性を探るもの




3.衝動性の測定と評価(自閉症児の研究、井上・小林、1992)

・健常児2名は待ち時間と大きな報酬に敏感であった

・自閉症児のうち2名は待ち時間にかかわらず大きな報酬のほうを選択

・残りの2名ははっきりしたえり好みを示さなかった

自閉症児が環境内のどのような随伴性に注目するかをさぐる必要がある




4.セルフコントロールの訓練

・待ち時間を徐々に延ばすことは衝動的な子どものセルフコントロール選択を高めるのに有効という示唆(フェインディング法、成人知的障害者を対象にした研究はRagotzy, Blakely, & Poling, 1988)

・他にも自己拘束(commitment)、effort trainingといった方法も考えられている




5.発達障害児の選択行動研究における方法論的課題

・オペラント条件付けがもともと非言語的教示であったように、非言語的に教示されることが望ましい

・強化子:お菓子のような一次性のものか、お金のような二次性のものか




6.結論

・発達障害児のセルフコントロールについての実験研究はすくない。

・ゆえに、方法論についてもはっきりしない。

・更なる研究の蓄積が必要