出典:鄭 庸勝, 2008, 訪問看護と介護 13(9), 727-730

高機能PDD成人の困難
〈何故高機能PDD成人で困難が生じるか〉
高機能PDDは幼児期にその特徴に気づかない場合が多い
・始語や二語文の出現時期に問題ない、もしくは遅かったとしても言葉が出始めると語彙が急に増えることもある
・会話が展開しなくても明らかなコミュニケーション障害はないようにみえる


以下、幼少期の困難▼
●社会性の障害
・悪気はないが結果的に不適切な言動を取ってしまう
・そのつどの状況や相手の思い、適切な行動について教えていけば子どもは社会性を学習することができる

●コミュニケーションの障害
・抽象的なメッセージが持つ言外の意味や曖昧な表現を理解するのが苦手である
・簡潔、具体的で明示的な表現で誤解が解ければ、本人が不安感などに悩まされることが減る

●想像力の障害
・見通しを立てることが困難である
・変化に不安を感じやすく、周囲にあわせようと頑張っても、自分のペースで続けられないとうまく行かないことがある
 ・上記によって協調性がないと叱られ、一方的に我慢を強いられることが多い

これらがベースにあって青年期・成人期に困難な状況に陥るのだという理解が支援者には必要。
周囲からの配慮、支援をきちんと受けられなかった事例で困難が生じやすくなっている。


〈精神医学的問題と就労困難〉
●成人期の診断の困難さ
・自閉症やアスペルガーの診断基準は幼児期の正確な状況がわからないと判断できないつくりになっている
・そのため、措置的に特定不能の広汎性発達障害という診断も存在し、その数は増えているらしい
・基本的にPDDには医学的治療はない
・専門職でもPDDを誤解しているひとがおり、そのことで安易にPDDと診断されるひとが増えるのは結果的に障害への誤解を生むことになる

●合併症
・うつ病、統合失調様幻覚妄想状態、強迫性障害、不安障害、解離性障害など、定型発達者の有病率よりの高いと予想される

●就労継続の困難
・PDDのまじめさにより、自分にあった仕事と環境が整えば定型発達者以上の能力を発揮することもある
・アインシュタイン、ダーウィンなどは後年PDDを疑われた(ビルゲイツは発達障害者の大会でゲストとして登場したことがある・・・らしい、ですよ。)
・職場では、顧客との会話で意味を察知できなくなったり、自分に話しかけられているのに気づかなかったり、職場のマニュアルを他のひとが要領よく変えてしまうのが許せなかったり、自分の手順でないと行動をスムースに移せないなどが起こりうる
・学校での不適応を契機に家から出ることが難しくなって就労自体難しくなることもある
・家から出られないことで、医療機関にもいけず、未診断のケースも一定数存在するかもしれない

〈まとめ〉
上記の特徴を理解し、間違いを責めるのでなく、具体的な助言が必要


personal memo
reference
神尾陽子 他 2006 自閉症スペクトラム青年のネガティブ表情に対する過敏性, 児童青年期精神医学とその近接領域, 47(1), 16-28