メンタルサポート活動 | 佐藤カウンセリングルーム

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カウンセラーの日々感じているつぶやきやら心に関すること、心のニュースについてコメントしています。癒しブログですので気軽に読み流してください。

  想像を超えた災害

今から16年前(1995.1.17)に阪神・淡路大震災が起こりました。この時以降、PTSDという「心的外傷後ストレス障害」が一般に知れ渡るようになりました。ボランティアに対する意識も変わって着ました。その後、2004年に新潟中越地震、2005年福岡県西方沖地震、2007年能登半島地震、2007年新潟県中越沖地震と続いています。これだけみても、地震活性期にあることが良く分かります。


 想像を超えた災害を想定することは難しい、ということを身をもって知らされました。『岩手県宮古市の姉吉地区。明治、昭和に大津波で2度全滅した集落には、海から数十メートル高さにある細道に石碑が立つ。「想へ惨禍の大津浪、此処より下に家を建てるな(中略)幾年経てるとも要心あれ」』刻まれた先人の教えを住民は守り、今回の津波で住宅被害はなかった。ただ、姉吉のように教訓が生きる例は少ない。誰しもが「まさかここまではくるまい」と考える(日本経済新聞52日朝刊)。


 私達の心身に備わっている恒常性は、安定した状態がつづくと、これからもずっと続くだろうと錯覚してしまうのです。裏を返せばそれだけ「変化」に弱いということになります。突然の大きな変化には弱いことを確認し、今後の対応力強化を図る必要があると思います。


 こころのなかの統制機能が低下

人の心には、ある一定の状態を維持しようとの統制機能が備わっています。それが、想像を絶する変化によって崩れてしまうのです。危機とは、個人・集団・組織の対処方略が破綻した事態。「人が通常持っている、事態に打ち克つ作用がうまく働かなくなって、心理的な平衡状態が急激に失われ、苦痛と機能不全明らかに認められる状態」(DSM-Ⅳ)。

 

セルフコントロール:自分で自分を制御できない状態。

 セルフデシジョン :何をして良いか分からない決断できない。

  セルフエスティーム:自分に自信がもてない。自己否定感情。

 もう、頑張れない、何をして良いか分からない、地震さえ起きなければ、なんで自分が、拒否とあきらめ、罪悪感、人の手を煩わせる申し訳なさ等の思いが胸いっぱいになるのです。だからこそ、積極的なサポートが必要なのです。


  災害ストレスとストレス障害、そしてケアの必要性

災害後ストレス(ASD:急性ストレス障害)には、以下のような特徴があります。

(1) 再体験症状:フラッシュバック 災害の不快で苦痛な記憶がフラッシュバックや夢として繰り返される。動悸や冷汗、心は恐怖に襲われ、体中が震え、身動きが取れなくなったりします。

(2) 回避・麻痺症状 体験したことを考え話したり、感情が起こることを避ける。記憶障害も現れる。日常の活動に興味や関心がなくなる。感情の麻痺、喜怒哀楽の感情を感じにくくなる。

(3) 過覚醒症状 睡眠障害、いらいらしたり、怒りっぽくなったり、物事に集中できない、警戒、少しの物音に過敏となる。精神的緊張が高まった状態。これらが1カ月以上長引く場合には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)が疑われることになります。

ストレス下にある時のサポート

あなたがストレスを抱えているなら、以下ポイントです。

①こころに浮かぶ感情はそのまま受け入れましょう。責めたり、否定したり、心の奥にしまいこむことなくそのままを受けいれてください。そして、②感情は吐き出しましょう。話すことが苦手な人は、書いてください、絵に表すのも良いと思います。色を使って塗るだけでも良いのです。③思いを家族や友人に聴いてもらい、家族や友人とともに悲しみ、苦しみを癒しましょう。共有、共感しあうことはとても大切です。大きなストレスは一人で抱え込まないことなのです。④カウンセリングも役に立ちます。専門家の力も借りることも大切です。専門家に話を聴いてもらう、その1歩が次のステップに必ず結びついていきます。これらの過程で最後は、自分で自分を助けてくれると気づきます。


  話すこと  ⇒ 心の中の問題解決能力の修復(気持ちの整理、問題の明確化、問題の整理・把握、問題解決資源の発見等)

  聴いてもらう⇒ 受容され、共感されて安心感が生まれます。そして、心の中にエネルギーがチャージ(充電)されます。


あなたがサポートする側にいるならポイントは、安心と職場全体でサポートです。

 「傾聴」に心がけてください。冒頭に紹介した、「不安でしかたない、涙が止まりません」という方を想定してください。もし、あなたが同じ立場にあるならどうして欲しいと思われますか。このような時にあれこれ質問し説得しても意味はありません。傾聴とは、相手の気持ちを受容共感することですから、相手の話を静かにうなずき、あいづちを入れながら、「涙が止まらないんだね」と相手の言ったことを繰り返しながら相手の気持ちを受け入れることが大切です。その傾聴のプロセスで癒され、エネルギーをチャージしていくのです。



人は自分の中の気持ちを受容理解されたと感じた時、素直に自分に向き合っていくのです。聴いてもらって、相手は溜まったものが消化され、浄化されていくのです。しかし、1回傾聴したから良いというものではなりません。心問題は第1次支援のように短期間では収まらないのです。継続的にサポートしていくことが大切です。


もし、あなたの家族なら、一緒に並んで沈黙を共有しても良いでしょう。子どもなら手を握る、抱きしめるといったことも良いですね。こうしたスキンシップはとても大切です。もし、あなたの職場に、いつもと違う表情、態度、行動を取っている職員がいたとしたら、まずは「どうしたの」と声をかけてください。そして、相手が話しても良い状況にあるなら「傾聴」に努めてください。相手がそっとしておいて欲しい、という状況なら静かに見守りながら状況をみて声をかけ、「傾聴」してください。


人間関係は言語(言っている内容)と非言語(言葉以外)のコミュニケーションで行われていますので、言い方、語調、態度は「やさしく、あたたく」がポイントです。

職場全体でのサポートは、以下、心がけてください。

  ・孤独にさせない、個人の問題はチーム全体の問題、無関心にならないことが大切。

  ・気になることがあったら、声をかけあう。

  ・話し合う習慣をつける。

  ・ストレスは個人差がある、少しのストレスでも過敏に反応する人もいる。

  ・内部の専門家、外部の専門家との連携もすすめる。


 ひとり静かに悩む人は増えています。「無関心職場」にはしないことです。今は自分でなくても、次にメンタル不全を起こすのはあなたかもしれないのです。

 国を挙げてリスク管理が必要です。職場も同じです。その中にメンタルヘルスが重要な位置を示しています。