ちょうど今日みたいな日 | 脳内図書館

ちょうど今日みたいな日

橋を渡る電車の窓から見える。

春の雨に濡れていく地面。

誰もいない東京の下町の路地。


思い出す。

歩いていると、少し汗ばんでくるくらいの、この温度。

段々近付いてくる水の匂い。

不安定な足取りと、冴え渡った感性。

退廃的な静寂。

ぽっかり拡がる鉛色の空。

古い家が建ち並ぶ住宅街を抜けたら、そこは荒川土手。


迷子になってしまいたい、と思うくらい好きだった。

何を求めるでもなく、何かを求めて歩いた。

晴れの日より、今にも雨が降りそうな曇りの日に惹かれた。


淀んだ空に、桜の薄桃色はよく栄える。

何もかもが綺麗だった。