奇跡

自分の現実を否定したり、向き合うことから逃げたりするのは、とても醜いことだと思っていた。

けれど、最近はそう思わなくなった。

感じないようにしたり、見ないようにする心理の奥底には、深い哀しみや寂しさが隠れている。

それは時に虚無感や恐怖、怒りという感情で幾重にも塗り固められ、再び傷口が開かれることのないよう、無意識下の自分によって厳重にガードされている。

もうあんな哀しい思いはしたくないのだ。
『あんな』ことが何だったかはよく思い出せないけれど、とにかくもう二度と傷付きたくない。
次にまた何かあったら、今度こそショックで死んでしまうかもしれないじゃないか。

程度の差はあれ、向き合えないということは、それくらい辛かった感情を今も生々しく抱えている可能性が高い。

そんな状況下にいる人に、責めるようなことなど言えるものか。

それほど辛い心を抱えてでも、ここまで生きてきたあなたは素晴らしい、と伝えたい。

生きている、それだけで凄いことなんだ。

この宇宙でこうしてあなたに出会えたことは奇跡だ。